第104話 交渉
エルフの隠れ里の責任者?であるドリアードの少女から、
「貴女のご主人様を殺そうとしたお詫びに、この森を貴女のご主人様に差し上げます。しかし私達はこの森を出て行くと行く場所がないので、ここに置いて下さい。また、これを持って我々に手を出さないで貰えますか」
と提案されてクロリスは大満足の様子だが、「ちょっと待てよ」とソウタは考えた。
そしてこの提案に隠されているであろう裏を読む。
「クロリスちょっと待て、早まるな。何点か確認させてくれ」
「貴方は?」
「ああ、俺はクロリスの主人で殺されそうになった本人。名前はソウタだ。俺にこの森をくれるって言うんだろ。そんな大雑把な契約はダメだ。穴がありすぎる」
相手が少女だと俄然勢いが増すソウタだ。
「むむ………」
ドリアードの少女は苦虫を噛み潰した様な顔になりサイコを見た。
(高位のドリアードの主人は「全てを斬り裂く者」じゃないのか………)
「ん? 俺か? 俺はソウタの護衛。サイコだ。ソウタの敵は斬り殺してやるからな」
へへん。と鼻息も荒く少女を見下ろす。
「まず、この契約を破ったらどうなる?」
「ん〜、精霊契約になるから大精霊から罰が与えられるわね。だから破られないよ。安心して」
ソウタの問いにクロリスが答える。
「なるほど、相手は破る気はないから良いんだよ。俺達が破ってしまったら拙いのか」
「まあ、拙い事になるわね」
「はん! 相手は大精霊だろ。心配するな俺が斬ってやる」
「そだね。サイコだったら斬れるね」
「えっ!」
サイコを肯定するソウタの言葉に絶句するドリアードの少女。
「良し良し、それは良いとして。そもそも、この森が精霊のモノだって他の種族は認めているのか? 俺達は貰ったつもりでも他の種族も認めないと意味がないぞ。特に人間が認めてないと不法占拠だと言われかねない」
「はぁ、はぁ、それは大丈夫でございます。我々は隠れ里として隠れて生活はしていますが、時折、細々と人間達と取引をしておりますので、近隣の国では我々の事を承知しております」
村長がふらふらと立ち上がり説明する。
「もっとも人間がこの森を攻めようとしても、人間如きに我々は負けはしません」
「本当? 言う程、強そうには見えないけどなぁ」
クロリスに蹴飛ばされてヘロヘロの爺さんにも強気でいけるソウタ。
「精霊が一緒にいれば、人間が何万人来ようとすきにさせません」
「そう言えば精霊がいないね。どうしたの」
「あははは、私とサイコを怖がって隠れてるみたいね」
とクロリスが言うと、
「精霊なんか居なくても、人間が何万人来ても俺が斬り殺すよ。大丈夫大丈夫」
うんうんと頷くサイコ。
(本当にこの男、ハンパないな。流石彷徨う裏ボスだ。サイコがいれば、不法占拠しても誰も裁けないな)
「ふむ、まあ、ここまでは良いよ。本題だ」
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