第90話 ドグラ・マグラ3

ピカッ!


雷獣のリャンゾウがドクラとマグラに雷撃を放った。


「ふげっ!」

「うおっ!」


クズリの獣人ドクラは片膝をつき、ラーテルの獣人マグラは驚いた様子だ。


「うううううう」

「どうしたドクラ」


「痺れて動けん………、これが宰相の言ってた妙な術か……」

「がははは、では俺の独り占めだな。俺は動けるぜ」


(え? リャンゾウの雷撃を喰らっても倒れないのかよ)

ソウタは驚き動きを止めていた。


マグラはナナミに襲い掛かる。


「危ない!」

ブリュンヌがマグラに体当たりをして、ナナミを庇った。


「くっ、ブリュンヌ! 邪魔をするな」

マグラは突き飛ばされて転がるが、すぐに立ち上がりブリュンヌに向き構えた。


「あんた達の好きにさせないわ」

ブリュンヌも身構える。


「ブリュンヌ、有難う」

ナナミはブリュンヌに礼を言うとマグラを睨む。


「ギュウウウウウ」

リャンゾウがマグラに飛び掛かる。


リャンゾウが爪をマグラに立てるが、マグラには刺さらない。


「そんな爪は効かないな」

マグラはリャンゾウに右手の爪を振り払う。


「ギュ!」

リャンゾウはマグラの爪を躱した。


リャンゾウが素早い動きでマグラを攻撃するが、リャンゾウの攻撃はマグラには効かない。


しかしマグラの攻撃もリャンゾウは素早く躱し、両者は暫く何度も同じ事を繰り返していた。


(マグラの一撃がリャンゾウに当たれば危ないからリャンゾウが不利だよなぁ。部屋の中だと、クロリスの植物魔法もイマイチだし……)


ソウタはチョーカーにしている胸の八尺瓊勾玉やさかにのまがたまに手を当てた。


(リャンゾウ、ここは逃げるぞ!)

「キュ?」


八尺瓊勾玉やさかにのまがたまから闇が放出されてマグラを包んだ。


「ぐはっ、な、何だこれは」


「今のうちだ! みんなついて来い」


ガシャアアアアアアン!


ソウタは窓に体当たりしてそのまま外へ飛び降りた。


リャンゾウ、クロリスはすぐさまソウタの後に続き、ナナミとモモカも慌てて後を追う。


「俺も行くぞ」

ブリュンヌもソウタの後を追おうとしたとき………。


「くそっ! これでも喰らえ!」

マグラは臭腺からにおいの強い液体を噴射した。


「きゃあ」

マグラのにおいの強い液体がブリュンヌの足にかかった。




ソウタ達が逃げてから暫くして………。


「ふう、やっと痺れが取れてきたぜ。マグラ、大丈夫か?」

「ああ、周りが見えないだけだ。闇も晴れてきたし臭いで追えるぜ」


「追うぞ」

「おう!」


ドクラとマグラはソウタ達の後を追う。


一方ソウタ達は………。


「奴等は後を追って来るだろう。ジュノン男爵の街には戻らない方が良いな」


「そうね、報酬も前払いの分だけでも充分だわ。反対の方向に逃げましょう」

ソウタの言葉にナナミが同意する。


「賛成、あいつらキモいし………」

モモカも賛同するが、ついて来るブリュンヌをちょっと嫌そうに振り返る。


「御免なさい。報酬を何でも払うって言ったのにこんな事になるなんて………」

ブリュンヌは申し訳無さそうに俯く。


「ところで、ブリュンヌは何故ついてきた?」


「父上と母上の命を救って貰ったのに何も報酬を渡せていないのだ。せめて俺が聖者様に尽くしたいのだ」

ソウタの言葉に答えるブリュンヌ。


「………」

ジト目でブリュンヌを見るソウタ。


「御免、俺なんか役に立たないと思うだろうが、何でもするからついていかせてくれ」


「イヤイヤ、そうじゃなくてだな………、臭いんだよ!」


「あ、そ、そうですよね………」

ブリュンヌの顔が真っ赤になった。


「まあ、何処かの村か町で身体を洗って、臭いを落とさないと同行は許さないよ」


「はい。ごもっともです」

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