第47話 孤児院の子達

(テンダイジモン教のライゴー大司教が作った教会の、村の支部に併設している孤児院の孤児達を雇ってみたが、子供だからねぇ。)


「こんなの簡単だぁ!」


ブチブチ!


薬草を乱暴に千切る男の子。


「早く終わらせて遊ぼうぜ」


「キンヤオくん、ちゃんと鎌で綺麗に切らないと、薬草が枯れる事があるって説明があったでしょう。ダメだよ」


孤児の男の子キンヤオに注意する真面目女子カリス。


「そんな話あったかなぁ? カリスはいちいちうるせえぞ。草毟りなんて面倒臭いんだよ」


「キンヤオは、また聞いて無かったのね。お仕事はちゃんとやらないとダメよ。それに草じゃ無くて薬草だよ」


「うるせえー! こんなの雑草と同じじゃねえか」


と孤児達が会話しているのを、見てたソウタ。


「ちょっと! 君達何やってんだ」


「あ、ソウタ様」

と跪くカリス。


「あ"ぁ! 何だあんちゃん文句あんのかぁ」

毒づくキンヤオ。


キンヤオは12~13才ぐらいの年齢だが、身体が大きく大人と変わらず、身長はソウタと変わらなかった。


「はぁ、子供は元気が良いのは良いが、仕事はちゃんとやって貰わないと困るなぁ。キンヤオくんと言ったか? もう来なくても良いよ。帰ってくれ。そんな乱暴に毟ったら、根っこまで抜けてるし、その手にある薬草も強く握ってるから、売り物にならなくなってるじゃないか」


「はぁ、何だお前」

キンヤオは俺を睨み始めた。


「キンヤオくん、ソウタ男爵様だよ。貴族様なんだよ。き・ぞ・く!」


カリスがキンヤオに小声で注意する。


「げっ、ヤバい。逃げろぉ」


逃げ出すキンヤオ。


(孤児の中でも雇う前に面接しないとダメだなぁ)


その後、キンヤオは村の神父に説教されて、怒られたのは言うまでもないが、ソウタからは2度と薬草畑では雇わないと言われた。


神父は孤児全体の雇用が無くなると困るので、平謝りだったが、ソウタはそんな気はなく真面目だったら問題が無いので、特に気にしていないが、商品の薬草が荒らされるのは困る。


結局孤児でまともに手伝いが出来る子が半分もいなかったし、子供だけに大人程働く事が出来ないので、人手は相変わらず不足だ。


元々村の孤児院には、近隣の村で両親が亡くなった子達を保護しており、それ程人数は多く無いのだ。


「ところで、孤児が成人になって、孤児院を出たらどこに行くんですか?」


ソウタが神父に尋ねる。


「はい。冒険者になったり、商会の丁稚になったりする子もいますが、中々仕事は見つからないのが実情でして……」


「そうかぁ。じゃあその子達の中で真面目に働く子はウチで雇いましょう。但し、キンヤオくんの様な子はお断りなので、ちゃんと見極めてくださいよ。キンヤオくんは力も強そうなので、冒険者にでもなったら良いと思いますよ」


「本当ですか? 有難う御座います。早速教会の本部に連絡して、他の孤児院からも成人になる子で、真面目な子を連れて来ます」


と言う事で、孤児院を卒業した真面目な子をかなりの人数を雇う事にした。


早速寮を建築して受け入れる準備をするのだった。

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