第3話 指輪の正体
―カイン視点―
「くそっ!あの無能さえいなければ!」
最近はそんなことばかり考えている。
あのやろう勇者のくせに剣もまともに触れねぇ
肉壁になってもすぐに倒れるから役に立たない。
結果、荷物運びと雑用のみすることとなる。
あの無能さえいなければ、
俺が必死にかばうこともなくなるし、
セイラとマリアもクロウを気にせず
戦いに集中できるようになるだろ!
ああ、腹立ってきた!
ストレス発散で魔物でもたおそーっと
しばらく歩きながら魔物を狩っていると
背後から不気味な気配を感じた。
すぐに周囲を見渡したが魔物はいなかった。
しかし、不気味な気配は収まることがない。
不気味な気配のするほうに進んでみることにする。
すると、少し開けた場所に出た。
その先には先程とは比べ物にならないくらいの
不気味な気配の感じる洞窟があった。
「っ...!ここはダンジョンか!」
ダンジョンとは洞窟や遺跡などに瘴気が多く集まり
魔物が絶えず生まれ続けているところをダンジョンという。
ダンジョンにはダンジョンコアというものがあり
それを壊すことによってダンジョンは消滅する。
しかし、ダンジョンコアを壊すことはとても難しい。
ダンジョンコアは大抵はダンジョンのボスの体の中にある。
稀に、ダンジョンの一番奥に隠されていたり、
隠されておらずその代わりにとても硬いなんてこともある。
ダンジョンコアが体の中にあるダンジョンボスは
ダンジョンによって作られ続けている魔物たちの
三倍または四倍ほど強い。
代わりにボスのドロップアイテムの中に
激レアアイテムが入ってることが多い。
そのため、多くの冒険者がダンジョンボスを倒すことを
目標としている。
そしていま、何度もダンジョンボスを単独討伐したことのある
カインの目の前に新たなダンジョンがある。
そしたら答えは一つしかないだろう。
「俺がこのダンジョンクリアしてやる!」
そしてカインはダンジョンの中へ進んでいった。
洞窟の中は暗く、奥からは
体が緑色でお馴染みのゴブリンの声がした。
「「ギャギャッ!」」「「ギャギャギャ!」」
「うるせぇから消えろ」
カインはゴブリンたちの頭を剣で切り飛ばす。
それ以降もゴブリンのみが現れた。
ダンジョンの中を進んでいると、
今までのゴブリンより大きく体の色が赤色の
何かがいた。
「なんだこいつは...もしかしてオーガか?」
「グオォォォ!!」
頭から角をはやしたオーガが雄叫びを
あげながら突進してくる。
それをカインは紙一重でよけ、
オーガの首に剣を軽く振り下ろすが、はじかれる。
攻撃をはじかれ体勢を崩したところに
オーガのこぶしを正面から受ける。
「ぐはっ!」
ただしカインはあきらめず、
何度もオーガ攻撃をよけては
首元に攻撃を繰り返す。
オーガの首に少しずつ切り傷が増えていく
「グオォォォ!!」
「しねぇ!」
カインの渾身の一撃!
オーガが息絶える。
「意外と硬くて力もあったから疲れたなぁ、
ん?なんだ?あの指輪」
オーガを倒した際にドロップした中に不気味な
黒い指輪があった。
(なにかわかんねぇけどとりあえず持ち帰って
ギルドに鑑定してもらうか)
ギルドとは主に冒険者が依頼を受けたり
住民の人たちが依頼をする場である。
ギルドではドロップアイテムを売ることができ、
また、鑑定してもらうことを冒険者の方のみサービスで
無料でしてもらえる。
◇ ◇ ◇
「これは≪縁切りの指輪≫です。
この指輪をつけている間のみ、
親友、家族などともに長い間を過ごした人から
嫌われるようになる指輪です」
「そうか、ありがとう」
ギルド職員から聞いた鑑定結果を聞いて
少し落ち込んだ。
こんな指輪いらねぇ、と思ったときに
ふとあることを思いついた。
「この指輪をあいつに渡せば...くっくっくっ」
そしてこの次の日の夜
セイラとマリアは
カインがクロウに渡した指輪のせいで
思ってもないことを言わされたのだった。
◇ ◇ ◇
クロウが自分のステータスを見て寝て起きたころには
次の日の朝になっていた。
「クロウさーん!朝ですよー!」
「この声はリズか?」
「はい、そうですよー」
彼女はエリザベスと言ってこの宿屋の看板娘だ。
元は滅びた王国の王族だったらしい。
髪は金色で目は黄色そしてとても美人だ。
年は俺と同じで17歳だ。
「朝ごはん用意できますので早めに
降りてきてくださーい!」
「わかった、すぐ行くよ」
自分のステータスの確認もしたかったけど
飯食べてからにするか。
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