第18話 長旅と厄介事

一ヶ月間の、遠征もお爺ちゃんのおかげで無事に終わり。平和な、冬が訪れた……。


見習い騎士、それを集めて全国的な大会を開くらしい。国内でも、優秀な見習い騎士6人を選出させる条件あり。それに、出るように言われたのだ。メンバーは、エウロス殿下とファイそしてロインとアイリスそしてカイン…僕。つまり、国から出る訳だ。


もう、困るんだよね。


取り敢えず、ディルク兄に賢者の仕事の代理を頼めたけど。ディルク兄じゃ、完璧には出来ない。


帰ったら、地獄だろうなぁー……。


取り敢えず、旅の準備は完了してある。そして、現在は汽車を待つ。4人は、先に船で向かってるらしい。まあ、気軽だしいいけど。さて、殿下の護衛の為に出遅れた訳だけど。エウロスは、ニコニコ。


「今回は、ノイルにも護衛がつくんだね。」


仮にも、公爵家の長男だしね。護衛は、17特殊騎士団にお願いした。応援として、そして牽制も兼ねている。これは、国王にも許可済みだ。


「まあ、仮にも公爵家の長男ですから。」


今日は、騎士服は禁止との事なので貴族服だ。だから、少しだけ機嫌が悪い。それが、分かるのかエウロス殿下は困った表情。余り、殿下に迷惑をかけるのは駄目なので諦めて汽車に乗る。


「ノイル、今回はごめん。反対したんだけど。」


「別に、構いませんよ。」


汽車のVIP席、そして宿泊が出来るベットも完備。ノイルは、座って不機嫌に頬杖をつく。クノンは、紅茶を机に置いてノイルの後ろ隣に立つ。ちなみにだが、エウロスは別室で一車両全て貸し切りだ。


さて、暇だし読書かな。


「ノイル、昼ご飯に行かない?」


「ん?ああ……、申し訳ありません。行きます。」


ノイルは、パタンと本を閉じて歩き出す。


そして、数日が経過した。ノイルは、馬車を預ける手続きをする。エウロスは、先にファイ達と合流すると言っていってしまった。ノイルは、ため息。


フィールドに、入った瞬間に妖精と精霊の歓喜の声がする。が、無視してエウロス達に近づく。


すると、殿下はこの国の陛下と話している。ノイルは、真剣な表情をすると走り出す。そして、エウロス殿下を庇うように前へ出て、素早く剣を二振りする。その場に、ナイフが落ちる。


すると、エウロスは驚いてから笑顔で言う。


「お見事♪」


「もう、笑い事では有りませんよ。」


ノイルは、ナイフを拾うと投擲する。悲鳴がする。


「引け!次に、攻撃して来れば容赦はしない。」


すると、逃げ出す男達。


「おや、今回は貴族らしいね。」


「それは、陛下の命令ですから。出来れば、自堕落にゴロゴロしていたいですが。殿下が、ターゲットにされているので。まあ、真面目に仕事します。」


ノイルが、面倒そうな雰囲気で言えば笑うエウロスとファイ。ノイルは、ファイを見てから呆れた雰囲気で近づく。逃げ腰のファイに、エウロスは笑う。


「ファイ、君って僕が居ない場合の護衛だよね?護衛対象に、攻撃が当たりそうだったけど。」


「すまん。」


真面目に、謝ったので追撃せずノイルは言う。


「まったく、気を抜かず頑張って。今回、僕は招待状を貰ってない。つまり、基本は君が殿下を守るしかないんだからさ。さて、そろそろ移動しよう。」


ファイも、頷いてエウロスと動き出す。


「こんにちは、僕は大地の賢者。エウロス殿下、聞きたい事がある。森の賢者様は、来てないの?」


すると、エウロスは笑顔で表情を隠す。


「森の賢者に、何か用事が?」


すると、後ろの男が怒鳴る。


「一国の王子だとしても、発言の仕方を考えたらどうだ?相手は、賢者様なんだぞ無礼な!」


ん?賢者は、例え権力者であれ賢者として活動している間は、権力をかざしてはならない。ましてや、賢者が崇められるのはいけない事だ。


「ん?ごめんよ、ウチの賢者は権力なんて使わなかったから。しかも、崇められてないしね。」


すると、大地の賢者の顔色が悪い。ノイルは、深いためを吐き出してから、殿下を見て明るく言う。


「殿下、お腹が空きました。甘いものが、食べたいです。賢者様も、忙しいだろうし行きましょう。」


「でも、大丈夫なの?」


エウロスは、驚いてから振り向く。


「今、僕のお腹の一大事なんです。それに、賢者様も暇ではないでしょう。特に、今の時期はね。」


ノイルは、少しだけ低い声で言って睨む。


「うん、忙しいし帰る。」


「貴様、斬り殺してやる。」


護衛が剣を抜こうとし、大地の賢者が押さえる。


「もし、森の賢者に会ったら伝えて。守り手が、殺された。古の時代、閉ざされたアビスの門が開く。ごめんなさい、僕達は守れなかった。」


アビスの門は、魔王を封印する術式の事だ。守り手が殺されて、術式が壊されたのか。魔物の凶暴化、病気の蔓延は当然だけど被害が悲惨かもね。


取り敢えず、術式の組み直しからかな。


「待って、どういう事?」


エウロスは、険しい雰囲気である。


「まだ、被害は出てない。僕達で、術式を組んで抑え込んでる。けど、長くは保たない。」


なるほど……。


まあ、自業自得だよね。僕は、世界の均衡を。彼らは、守り手の手伝いをし守るのが仕事な訳だし。1番きつい仕事を、全て僕に無理矢理に押し付けといて、この惨劇とか腹立たしいんだけどな。


暫くは、放置しておこう。でも、術式だけは作ろうかな。まあ、時間もいっぱいあるしね。


「崇められる程、強いんじゃないの?」


「違う!現在、最強賢者は森の賢者様!代々の森の賢者、その全ての記憶を欠ける事なく継承した、天才にして歴代最強と呼ばれる我々の長!」


すると、驚く表情をするエウロス。


「待って、長?」


「僕達、賢者は仲が悪い。それを、束ねる人。リーダー?うん、それ。誰も、彼には逆らわない。怖いからじゃなく、純粋に僕達は彼が好きなんだ。でもね、僕達は彼を困らせる。本当は、頼りたくない。けど、そうも言ってられなくって……。」


大地の賢者は、泣きながら言う。エウロスは、迷う様な雰囲気だ。ノイルは、歩き出す。


「ちょっ、ノイル?」


「泣いてる暇が、あるのかい大地の賢者?」


すると、一瞬だけ大地の賢者が驚く。と言っても、誰にもわからない程度だが。護衛は、怒りに叫び剣を抜くが、大地の賢者が素早く止める。


「何故、止めるのですか!」


「森の賢者様に、見られた!これ以上、僕を崇められると断罪されちゃうの!まだ、死にたくない!」


すると、護衛は驚いて剣を直す。勿論、ノイルを睨み唾を飛ばす事も忘れない。勿論、ノイルは回避。


「一応、公爵家の者なんだけど。この国の護衛、態度も対応も全て悪いなぁ。この国の管轄は、大地の賢者だけど何故か崇拝対象だし。どうしようか?」


「ノイル、話が有るんだけど。」


エウロスは、素晴らしい笑顔で言う。ノイルは、仕方ないという雰囲気で移動する。とある、個室。


「大地の賢者、断罪されるかもね。」


「ねえ、助けられないの?」


エウロスは、心配そうに言う。


「無理だよ、主。賢者には、賢者の掟がある。」


ノイルは、紅茶を飲むと賢者口調で言う。


「でも、まだ幼いのに……」


「うん、だから護衛が居るんだよ。」


すると、苦笑した雰囲気のエウロス。ノイルは、深いため息を吐き出してから、少しだけ考える。


「でもまあ、名誉挽回のチャンスを一度くらいは、作ってあげられるかな。後は、全て本人しだい。」


そう言うと、お菓子を食べる。エウロスは、心配な雰囲気だ。すると、ファイ達が近づく気配がする。


ノイルは、いつもの雰囲気に戻って笑顔で言う。


「ん、美味しい。」


「ノイル、何食べてんの?」


ファイは、キョトンとして机のお菓子を見る。


「へぇー、甘いの好きなんだ?」


「そうだけど、駄目かな?」


すると、ファイは笑う。


「いや、何か凄く安心した。お前、ちっとも子供らしく無いんだもん。やっと、子供らしい所を見つけられて嬉しい。な、2人もそう思うだろ?」


2人は、頷いてから座る。


「ファイ達には、言われたくないかも。」


ノイルは、少しだけ苦笑して言うのだった。

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