第14話 話し合い2

うん、何でこうなった?


いや、夜ご飯を食べるのは良いけど。いつものメンバー、それプラス四公当主達プラス豚くん。


凄く、視線を感じる。いや、言いたい事は分かる。


取り敢えず、誰か見知った人を探すも、誰も居ないという。ふぅー、落ち着け僕よ。落ち着け!


そんな事を、表情に出す事なく食事するノイル。


「ノイル、次の休みはいつ?」


「ん?何か、用事でも?」


エウロスの言葉に、キョトンとするノイル。


「実は、陛下から外出許可を貰えたんだ条件付きだけど。で、その条件がノイルを護衛につけるなんだよね。だから、休みはいつかな?良ければ、空けといて欲しいなぁーなんて。それで、どう?」


こちらを、窺うように聞くエウロス。


「次の休みは、2日後です。予定も、有りませんし良いですよ。では、空けときますね。」


ノイルは、暢気に優しく笑うと頷く。


「ありがとう。」


「あ、俺も行きたい!ジン団長、休みください!」


「分かった。書類は、出しとけよ。」


さて、ファイも来るのか。


「どうせなら…」


「僕達も…」


アイリスと、ロインも休みを貰う。


「じゃあ、5人で城下町を探索だね。」


エウロスは、ワクワクした雰囲気で言う。それを、団長達と4人は優しい気持ちで見守った。


場所は変わって、寝室と言うか騎士団の仮眠室。ベットが、たくさん置いてある。というか、ベット広いね。子供、3人は寝れると思……まさか!


「さて、寝るメンバーどうする?」


ですよね。うん、これは大丈夫なの?殿下。あ、大丈夫なんだね。うん、どうしよう。取り敢えず、豚くんとだけは、絶対に回避しないとね。


「ノイル、一緒に寝よう。」


「ん、良いですよ。」


取り敢えず、殿下は想定内だけど。もう1人は?


「アイリスは、父親と寝てくれ。もちろ、ロインもカインもだ。俺の親父は、まだ仕事だしさ。」


3人は、頷く。良かった、回避できた。さて、このメンバーなら気を抜いても良いかな。


「ノイル、気を抜いてゆっくり休めよ。」


「ファイ、ありがとう。お言葉に、甘えさせて貰うよ。何気に、暗殺者にはストレスを感じてたし。」


すると、クフリーは心配そうにノイルを見る。ノイルは、気付かない振りをして暢気に笑う。


「じゃあ、ノイルが真ん中な。何か、ソファーでも椅子でもこの並びだし。じゃあ、おやすみ!」


「おやすみ」


ノイルも、深呼吸してから横になり眠る。


次の朝、起きると2人は寝ている。流石に、団長達は居ない。さて、困ったなぁ。


取り敢えず、起こさない様にベットから抜け出す。そして、クノンから着替えを受け取る。ノイルは、取り敢えずジンに許可を取って場所を借りる。


よく寝れた、久しぶりに寝れたからまだ眠いや。


ノイルは、小さく欠伸をして体を動かす。途中、視線を感じるがジンの部下だったのでスルーする。


さて、ザンザス団長から書類を受け取る。


「お前、本当に大変だな。」


「うえん、派遣届けは一週ですか。もしかして、ザンザス団長が交渉して短くしてくれました?」


「まあな、うちの見習いなのにいつまでも取られる訳にはいかないしな。ノイル、無茶するなよ?」


「はい、ありがとうございます。」


ノイルは、嬉しそうに笑って空いている席に座る。ザンザスは、片手を上げて戻った。ノイルも、笑顔で手を振る。そして、書類に視線を落とした。


ふむ、いろいろと面倒だね。


「まずは、計算と誤字訂正……かな?」


小さく呟き、素早く書類を仕分けていく。そして、黙々と羽ペンを走らせる。無駄なく、手早く簡潔に最短で書類仕事を進めていく。少しだけ、視線が煩わしいが、表情に出さない様に頑張る。


仕事がひと段落して、顔を上げると騎士団長達は驚き3人は目を輝かせている。えっと、何かな?


カインも、真剣に此方を見ている。


「お前、仕事が早いんだな。」


ムスッとして、上から目線で言う。


「そりゃ、暇じゃないからね。それより、何か用かい豚くん。こっちは、忙しいんだけど。」


「豚じゃねぇ!名前で、呼べよ!」


すると、ノイルは悪戯な笑みを浮かべる。


「それなら、そのまるまる体型をどうにかしなよ。まあ、ダイエットって大変だし、根性や継続性の無い豚くんには無理だろうけどねー。」


すると、カチンと来たのか剣を持って歩き出す。


「くそー!絶対、痩せて名前で呼ばせてやる!」


それを見て、ノイルは頬杖をつき小さくため息。


「やれやれ、疲れた。」


そして、書類仕事を再開する。


「ちわー!ノイル、追加の書類な。」


ノイルは、羽ペン置いてムスッとする。


「見せてください。」


ノイルは、書類を仕分けて先輩に渡す。


「これは、15騎士団のこれは13騎士団の書類です。やっぱり、嫌がらせですかね。」


「うへー、あいつら!」


ノイルは、真剣な表情で考えると羽ペンを取る。


「よし。先輩、これ持って行ってください。」


「おいおい、ノイル。いったい、何をしたんだ?」


先輩は、ニヤリと笑ってノイルを見る。


「攻撃するなら、仕返しでも問題ないよねって話ですよ。その書類、時間が経てば文字が消えます。その書類を、彼らが提出したら。白紙で、提出した事になります。それで、何か言うならば言ってやれば良いんです。貴方達は、自分の書類を他の騎士団にやらせたのかって。彼らも、強くは出れません。」


ノイルは、小さく笑う。


「お前って、時々だけど悪魔的だよな。」


「違います、やられっぱなしが嫌なだけです。それに、言うじゃないですか。銃を撃って良いのは、撃たれる覚悟のある奴だけだって。たんなる、正当防衛ですよ。僕は、悪く有りません。」


冗談っぽい雰囲気で、軽く笑い飛ばすノイル。


「OK、任せろ!」


先輩は、サムズアップで言う。


「一応、ザンザス団長には報告しといてくれませんか?その方が、対応しやすいでしょうし。」


ノイルは、先手を打つため言う。


「はいよ。あ、ノイル。」


「ん?」


ノイルは、キョトンとして先輩を見る。


「再来週、精霊の森遠征がある。」


ノイルは、驚きそして苦笑する。


「遠征は、見習いが抜けてからしか行けません。」


すると、先輩は優しく笑う。


「それがな、メンバーにお前の名前があった。」


「え?」


「あ、驚いた。やったー!陛下から、伝言な。たまには、家に帰ってゆっくり休めば良いってさ。遠征期間は、約一ヶ月だし楽しい時間を過ごそうな。」


ノイルは、少しだけ考えてから言う。


「いや、例外を作るんですか?」


「違う、実力がある奴をいつまでも遊ばせる余裕は無いからな。団長いわく、成人する前に場を固めれば逃げられないだろってさ?どうする、ノイル。」


ノイルは、一瞬だけ固まる。そして、苦々しい表情をしてから困ったように考える。


「まさか、バレてますね。」


「成人すれば、親も身分も関係ないからな。お前の事だし、成人まで大人しくしておいて、成人したら騎士団を辞めるつもりだろ?逃がさないってさ。」


すると、周囲の騎士達も驚いている。


これは、困ったな。しかも、クフリーや3人にも聞かれちゃったし。これから、動きづらくなるな。


「まあ、そうですね覚えておきます。」


ノイルは、困ったように深いため息を吐き出す。


さてさて、どうなる事やら。


「ノイル、お前は気持ちを言葉にしない。言いたいなら、呑み込まず吐き出せ。俺にとって、お前は可愛い弟みたいな存在だからな。忘れるなよ?」


そう言うと、何処かへ行ってしまった。


「うーむ、困ったな。でも、まあ……良いかな。」


ノイルは、座ってから書類仕事の続きをする。すると、ファイが真剣な表情で心配そうに聞く。


「なあ、ノイルは騎士になりたく無いの?」


「うーん、いろいろとあるんだ……僕にも。公爵家に捨てられ、貴族や騎士とは無縁だった。無縁だったから、僕は別の役目があった。でも、その役目を今は果たせてない。僕は、その役目を引き継ぎせずに来てしまった。ごめんね、悩んでいるんだ。」


ノイルは、複雑そうな辛そうな笑みで言う。


「悩む?」


「うん、悩んでる。将来の事、これからの事そして未来の事をね。悩んでも、仕方ないのは分かっているんだ。でも、決められなくって辛いんだ。」


ノイルは、俯いて書類を机に置く。


「……ノイル。」


「よし、仕事しよう。ファイも、仕事があるんでしょ?早く、終わらせないと大変だよ?」


ノイルは、顔を上げると笑顔で言う。その、無理矢理な笑顔にファイは心配そうな表情になる。


騎士団長達も、真剣に考えるようノイルを見るのだった。ノイルは、気付かない振りをした。

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