後片付け その一

 胎教、と言う言葉がある。

 今は胎児の頃からの教育の一環として、音楽や絵本の読み聞かせなど幅広く知られるが、当時はまずは生まれる事から命がけだったから、元気で産まれればそれでよかったはずだ。

「シュウレイとセキレイはな、双子だったんだ」

 なのに、その年の差が二年ある。

「貧しい家の女だったからな、周囲に腹の大きさを心配されていたらしい。一人ずつなら子供も養いやすいし、生活の余裕も生まれるだろうが、二人一遍じゃあ大変だろうとかなんとかな」

 後に、シュウレイは冗談めかして言ったと言う。

「先にセキレイを蹴り出そうとしたら、力任せに押されたとさ。それから弟の方は、どんなに力んでも生まれ出てこなかったから、本当のことだったかも知れないな」

 凌のしみじみとした説明を聞いていた東が、深い溜息を吐いて口を開いた。

「叔父上。そんなこと、今は訊いていません。オレは、どうして、その姉弟の事を、黙っていたのかと訊いているんです」

 早々とその存在を知っていたなら、あんな誤魔化し方はしなかった。

 そう言いつのる弟子に、銀髪の男は首を竦めた。

「仕方ないだろう。二人とも、父親の血縁に会いたくないとはっきり希望したんだ。今は少し考えが変わっているが、カスミとは顔を合わせるのも嫌だったらしい」

 無理やり紹介する手もあったが、子供相手にそれをするのは弱い者いじめに感じて、凌は諦めたのだった。

「一応安心したぞ。コウヒの兄弟をお前が嫌っている、という訳ではなかったんだな」

 明るく言われて東はまた溜息を吐き、黙って話を聞いていた同行者の隣に立つ女と、少し後ろに立つ小柄な若者を見た。

 柔らかな薄い色の髪の色白の若い女と、まだ十代に見える若者だ。

「……その子に、一度も会わせてくれたこと、ないわよね?」

「……お前その喋り方、コハクを正式に娶ったらやめると言ってなかったか?」

 さっきまでまともに話していた弟子の変化に、凌が目を見開くのにも構わず、色黒の男は若者を見据える。

 見返す方は平然としている。

「あんたらの所が、気楽に女連れていける場だったか? けだもんばかりの集団だったじゃねえか。連れていけるはずがねえ」

 カスミが頭領として存在していたあの時、その集団は頭領の命を聞く以外の掟は機能していなかった。

 鬱憤を、手近な村や一族で晴らす盗賊紛いの集団。

 そんな場に、若い娘を一緒に連れて行くなど、蓮は考えもしなかった。

「あなたは、女目立てで通ってたのに?」

「誤解招く言い方すんな。酒友達のランが、偶々あんたらの集団の頭領の娘だったってだけだろうが」

「そうそう、妙に意気投合してたから、珍しいとは思ってたのよ。血の巡り会いもあったのね」

 何度も頷く男を睨み、若者は低い声を出す。

「意気投合してたからって、あんな嵌め方して許されると思ってたのか」

「いいじゃないの、失敗したんだから」

 話の先を望む顔になった凌に、東は曖昧に笑いながら話を打ち切った。

 どういう嵌め方をしてどういう風に失敗したかなど、言えるはずがない。

 名前の出たカスミの娘ランの死が、それに関係しているのだから。

「あたしが言いたかったのは、その子を連れてきてくれていれば、メルちゃんにもその子を紹介してたって話よ」

 ヒスイの孫娘。

 そして、カスミの孫娘でもあった。

「コウヒちゃんてば、うちにいる時にランちゃんの妹のユーちゃんと恋仲になってね、駆け落ち同然にいなくなったのよ」

 戦だけでなく貧しさが原因で、弱い者からの搾取を、正当化していた時代だ。

 逃げた先で、二人は諍いに巻き込まれたらしい。

 その時に、女は命を落とし、男はその無念を晴らして更に行方をくらました。

「……瀕死の母を、看取ってくれたのが、私を大切に育ててくれた、ご夫婦です」

 口を開いた女の口からは、近しい肉親との対面を喜んでいるようには聞こえない言葉が漏れた。

「無念を晴らすより、死にゆく前にせめて子供を世に出そうとしていた母の手を握って、声をかけ続けた方が、どんなに良かったか」

 吐き捨てるように言い、隣で悲しそうにする女に笑いかけた。

「すみません。こんなひ孫で」

「いや、やっぱり、大変な目に合ってたんだな」

「まあ、大変と言えばそうですが、そんな事ばかりでもありません。私、色々なことに挑戦してるんです」

 その一つが、女優だったのだ。

 ユズと育て親に名付けられた女は、マリーと言う名で一昔前にスクリーン界で知らぬ者はいないほどの大女優となった。

「もう一人の大女優、ライラと肩を並べた、な」

 凌は若干低い声で呟いてから、顔を上げた。

「で、お前さんは、養女として育て上げたアンナと言う娘の行方を追って、例の場へ乗り込んだんだったな?」

「……最終段階の現場の地下室で、身元不明の人骨や衣服が次々見つかっていると聞いています。いずれ、あの子も見つかるでしょう。それが?」

「それで、気が済むのか?」

 女は蓮を一瞥して返す。

「あの子が所属していた事務所に乗り込んだんですが、一足遅くて関係者の確保は出来ませんでした」

 国の首都に戻って、もろもろの手続きをしている間の手待ち時間に、蓮の協力でそこまでした。

 空振りで待機しているホテルに戻ったところを、二人して呼び止められたのだった。

 呼び止めたのは東で、昨夜の内に連絡を取ってこちらに来てもらったと言う凌と、何かと気にかけてくれて、残っていたメルがそこにいた。

 ちなみに、ヒスイは妙に落ち込んでしまい、部屋に籠っている。

 メルも東も、まだ本当のことを半分も話していないから、単純に蓮に気付かず攻撃してしまった事が、衝撃だったのだろう。

「と言う事は、その事務所、黒ってことか。今まで鳴かず飛ばずの所属女優を、あの現場の実態を知った上で送り込んでいた可能性があるのか?」

「可能性も何も……初めに、選出されていたあの主役たちを見た時、これは当たりだと思いましたよ」

 アンナと、同じ事務所の俳優だ。

 アンナもそれで信用して、警戒もしなかったのだろう。

「もぬけの殻だったところを見ると、どこからか情報が洩れてたかもな」

 そう思うくらい、行動が早すぎた。

 一筋縄でいかないと、蓮も気を改めて本格的に動こうとしているところだった。

「動くのはいいが……情報網は、あるのか?」

 痛い所をつく凌に、蓮は笑って答えた。

「なけりゃ作る。それだけです」

「作る必要はない、と言ったら?」

 凌も笑って返し、切り出した。

「こいつ、出来はそこそこの弟子だったが、たまに馬鹿な画策して痛い目見るような抜けた奴だ。出来の悪い子ほどかわいいと言うだろ? ヒスイもそうなんだが。この二人のしでかした事の詫びに、最大限の協力をさせてくれ」

「オレも、出来る限り協力するから、変な気起こして、早まるんじゃねえぞ、な?」

 本気で心配しているメルの、真剣な頼みの方に、ユズは折れた。

 日本に来たのは、蓮がこの国で報酬を受け取れと、その後言って来たからだ。

「その時に、あなた達に一応言っとけと」

 待ち合わせ場所に訪れたユズは、事の成り行きを話してから、「来夢」のマスターとその妻が顔を引き攣らせているのを見ながら、申し訳なさそうに言伝を伝えた。

「あのおっさん、自分の子供抱えたまま逃げた女が生存していることを、知っている。知ってるだけでどうする気もねえようだが、一応気にかけててくれ、だそうです」

 ウルが、低く唸って頭を抱えた。

「ってことは、オレの事も、分かっている可能性が……」

「分かっているでしょうねえ。あの人の事ですから、あなた方ご夫婦が、どうして現存しているのかも、分かっているかもしれません」

 ユズと同じようにカウンター席でコーヒーの香りを楽しみながら、律がやんわりと答えた。

 同じくカップの中身はそのままで、カウンター席で考え込むのは、報酬を持ってくる役となった、鏡月だ。

「そうか、お前らを盾にしておけば、オレにはまだ余裕があると言う事だな。早くこの地から撤収するぞ、絶対に」

「そうは問屋が卸すかっ。こうなったら、こっちがお前をダシにして命乞いしてやる」

「ふざけるなっ」

 威勢はいいが、要はそれだけ、凌を苦手視している二人なのだ。

「……やっぱり、お店を持つための資金繰りの方法としては、目立ち過ぎたかしら」

 ライラも真顔である。

 そんなことはないとは言えない程、当時のライラは大女優となっていた。

 と言うよりも、そんな理由で映画界に旋風を巻き起こしたのかと、呆れる話だ。

「日本人は、確か三人でしたよね?」

 呆れ果てた律に同調しながら、ユズは鏡月に話しかけた。

 その問いに、我に返った若者は首を振った。

「連絡が取れたのは、サラだけだ。ゲンも諦めて戻っていると思ったが、どこに雲隠れしたのか、姿が見えん」

 コウはまだ現地の近くで捜査の協力をしている。

「レイジも、まだ気にかかることがあるとかで、あの辺りにいるはずだ」

「じゃあ、私とサラだけ?」

「ああ。サラは早く子供の顔を見たかったらしく、あの後すぐに帰国したようだな」

 待ち合わせ時間までは、まだ間がある。

 時計でそれを確認した時、余り客が来ないこの店の扉が、呼び鈴を鳴らしながら開いた。

 客は、二人だった。

 女と強面の大男は、ユズも顔見知りの二人だ。

 思わず立ち上がって迎えた。

「朱里ちゃん、相変わらず可愛いわ」

「ユズさん、お久しぶりです」

 おっとりと返し、朱里は他の客たちにも頭を下げ、父親に笑顔を向けた。

「調子はどうですか?」

「見ての通りだ。折角淹れたコーヒーを、飲まずに帰りそうな客が来た」

「それは仕方ないだろう」

 愚痴る男に、鏡月が鼻を鳴らして返した。

「匂いは落ち着く挽き方だが、味はどうしてこうなると言うくらいの出来なんだからなっ」

「飲んでほしければ、フィルターを使って下さい。挽きガラまで入っていては、誰も口をつけようとは思いませんよ」

 律の指摘に目を剝く鏡月に構わず、大男は鼻を鳴らした。

「フィルターを切らしてるんだ、仕方ないだろう、今日は」

「……お前、それで金を取ろうとは、思ってないだろうな?」

「と言うか、本当だったんだな、目が見えんと言うのは。昔と変わらない動きで現れたから、冗談だと思っていた」

 昔の馴染みと会って、少し童心に戻って見える若者と、元同業者の娘に目じりを下げて話しかける女を見ながら、律がぽつりと言った。

「……似たような話、聞いたことがあります」

「ん? 何の話だ?」

 マスターの顔を上げ、律は答えた。

「先程の、まだ生まれていないのに外の世界の会話を理解して、その望み通りに産まれ落ちた子供の話、です」

 しかもそれは、やはりカスミの子供の話だ。

「まさか、ランかユウか?」

「ええ」

 あの二人も、二卵性の双子だった。

「生まれる時期を変えるより、ある意味あり得る話ですが……」

 カスミの初めての妻は鏡月の母で、嫁ぎ先から子供を抱えて命からがら逃げて故郷へ戻った。

 ある国主への嫁入りで、その国主が不慮の事故で死に、その後継者争いに巻き込まれて、鏡月と共に逃げたのだ。

 そんな嫌な思いがあったのか、たまにぼんやりと漏らすことがあったと言う。

「男の子を産んで、不安を抱えて養うのはもう疲れた、お腹の子が女の子ならいいのにと」

 その結果なのかどうかは分からないが、後日二人の女の子を産み落とした。

 だが、今は記憶の底に沈みそうになっている今は亡きランは、女の身で剣を教わり男勝りを通り越して男その者の逞しさを、時々垣間見せていた。

「ああ、その話、聞いたことがあります」

 そう言いだしたのは、飲むことが困難なコーヒーを、どうやって啜るか悩んでいた葵だった。

「無理に飲まなくてもいいですよ。お腹を壊したら大変です」

「ああ、大丈夫ですよ。いつもよりまだ飲めそうです」

「ミルがな、気まぐれなんだ。フィルターも、すぐ破れちまうし」

 買い替えろ、と毒づく鏡月に、客は来ないのにか、と返す大男に構わず、葵は律に説明する。

「聞いたと言っても、ある奴の状況をランの状況に例えて、あの人が蓮に説明しているのを、聞くともなく聞いただけですけど」

 と言う事は、他にも似たような例があると言う事だ。

「ただ、ランは心まで女として生まれた訳じゃないでしょ? そこがそいつと違うから、その気持ちを変えてやれと。別れる直前に告げても、遅いですよね」

 笑いながら言う男を、律は思わずまじまじと見つめてしまった。

 それに気づいた葵が、きょとんとして見返す。

「何ですか?」

「……それは、まさか、あの、台本の?」

「やっぱり蓮は、そのランって方と恋仲だったんですか?」

 惚れやすいわけではない若者だから、血縁者と知ってもその思いを通すと言う事は、よっぽどの好意だったのだろうと納得しかけるユズに、葵は苦笑して否定した。

「嵌められただけですよ。メルおばさんに引き合わされて、居心地悪くなったところを突かれて、気づいたらランと同衾してたらしいんです」

 その数十日後に身ごもったかも、と言えば男は捕まえたも同然、となる時代だった。

「その後、ランが死んじまって、それは嘘だと明かされたんで、あの台本とは全く関係ないです」

 言い切った男を見ながら、女は悩まし気に溜息を吐く。

「そうですか。あの人は、昔からそういう方にばかり好かれてしまいますね。もう少し等身大の良い方が現れればいいんですけど」

「難しいわね」

 難しい顔で客と店員が考え込む。

 そんな中、葵がこそっと律に話しかける。

「律さん、これ、お返しします」

 言われて差し出されたものを見ると、そちらで処分すると言っていた、例の現場の台本が握られていた。

「読んだのでしたら、捨てて下さっても……」

「いえ、これは、普通に捨てたらダメな奴です。少しでも外に漏れたら……エンも同じ意見です。お願いします。オレらじゃあ、どこかしらで何かの証拠を隠滅したとバレちまいます」

 そこまで大袈裟なものかと呆れていると、その話を漏れ聞いた鏡月が、剣のこもった目を向けた。

「おい、役者共のも赤毛共のも、すべて処分済みなんだぞ。なぜ、それがここにある?」

 突然だが、書かれている内容からすると当然の勢いに、大男の部類の男が身を竦め、代わりに律が謝る。

「すみません、渡されたオキの資料の処分、これだけしていなかったんです」

「お前っ、それは……」

「分かっていますよ、ちゃんと処分します」

 久し振りに取り乱す鏡月を見た気がして、律は微笑みながら切り出した。

「それに、この人たちに回し読みさせる状況にしたことも謝ります。お詫びに一つ提案してもいいですか?」

 今思い至った事だが、丁度いい。

「凌の旦那の件の、保険となるかもしれないんですが」

「何のこと……」

 意味不明になった言葉に眉を寄せたのは、鏡月とカウンター内の大男だ。

 その問いに答えるまでもなく、その保険がやって来た。

 勢いよく、店の扉が来客を告げる。

 振り返ったライラは、一瞬戸惑って視線を泳がせた。

 軽い足音がカウンターの方へ駆け寄り、明るく言った。

「この匂い、鏡月かっ?」

 幼い声が、大人びた口調で勢いよく言い、若者を一瞥して律を見上げた。

「一人で、ここまで来てしまったんですか?」

「お前な、しばらく見ないうちに、意地が悪くなったな。オレは確かに、残して来た子供全員の、今を知りたいとは言ったが、子守して欲しいとは言ってないぞっ」

「年齢的に仕方ないでしょう、それは」

 律の答えを、最後まで聞いている様子はない。

 五、六歳の少年は、目を見張ったまま見下ろす鏡月を見上げ、両手でその顔を挟んだ。

 そのまま、ペタペタとその輪郭を触り、にかっと笑った。

「うん、やはり鏡月だ。そうか、こういう顔をしていたか。これならお前が似たと言う叔母上に、カスミの旦那が惚れた理由も分かる。シノギの旦那とは、あれからも仲良くしてるのか?」

 一方的に話していた少年が、若者の目を見上げ目を細めた。

「お前、まさか、見えてないのか? どうした? ただでさえうかつでよくすっ転ぶのに、何てことだ」

 一同が固まっている中、唯一変わらない律が、静かに呼びかけた。

「あなたが亡くなってから、随分時がたったと、説明済みですよね」

「一度の説明で充分だ。どんな負け方したかなど、聞きたくもない」

「負けてはいなかったと、言ってるでしょうに」

「向こうは生きて、オレは死んだなら、オレの負けだろうが」

 頑固に言う少年を見下ろしていたウルが、気の抜けた声で訂正した。

「相打ちだった、ぞ」

 見上げて目を丸くする少年に、大男はゆっくりと言った。

「鏡月が助けなければ、恐らくはあいつも、完全に死んでたはずだ」

「お前、まだ生きてたのか。どれどれ……」

 カウンターをよじ登ろうとする少年を、この数か月そんな行動に辟易していた律が抑える。

「いくら幼くても、許されることと許されないことがある事も、教えたでしょうがっ」

「ここは無礼講でいいだろうっ? ここまで異常者が集まってるのに、オレだけ抑えろとは理不尽過ぎる」

「……あんたほど、異常者じゃねえよ」

 童心を取り戻していた鏡月が、完全に取り繕いを捨てた。

 小柄な幼い少年の胸倉を攫み、強引に引き寄せる。

 宙に浮いた状態になったのに、少年はきょとんとした顔をしただけだ。

「あんたは死んだあと、全員に形見分けされた。オレの分は、灰も残さねえほどに荼毘に付したんだぞっ? 何で、ここにいるっ?」

 その勢いのまま、律を睨む。

「お前、自分が貰った分で、何かやらかしたのかっ?」

「私の分は、全部使いましたよ、この人の娘さんの為に」

 言いがかりに心外と律は答えてから、まだ戸惑っているマスターと、その隣の成り行きについていけず立ち尽くすライラを見た。

「事情は、そこの二人と同じでは?」

「……かもな。あの人なら、体のほんの一部で、充分らしいからな」

「それなら、もっと別な奴の物を使えばよかったものを。よりによって、呪いが濃く染み付いてた部位を、使わんでもなあ」

 大男が頷き、他人事のように言った少年は、宙づり状態すら楽しいと感じているらしく、自分でプラプラと体を揺らして遊んでいる。

 そんな様子に更に顔を顰め、鏡月は吐き捨てた。

「あのくそ親父かっ」

「正確には、あのくそ旦那の、くそ親父さんです」

 その言葉を拾って律が言い直す。

「呼び出されて、ご本人が引き渡してきました」

「限定物の呪いだから、大丈夫と思ってのことだったのだろうが、まさか、律の所に、シノギの旦那の直系がいるとは」

 笑いながら言っているが、内容は鏡月が硬直するものだった。

 つい、そのまま胸倉を放し、少年を床に落としてしまう。

 が、綺麗に着地した少年は文句を言わず、若者の顔を伺った。

「顔色が悪いぞ、どうした?」

「あんた、まさか、旦那と間違って、そいつを攻撃したとか、ねえよな?」

 そうなったら、肩どころの騒ぎではない、と言い聞かせている鏡月に、少年ミヅキはあっさりと言った。

「ああ、やってしまった」

 カウンターテーブルの上のカップが音を立てて揺れるのに構わず、ウルが無言で身を乗り出した。

 殴る拳を流し、少年はそのままその腕を小脇に抱え、軽く体重をかけて逆に大男をカウンター内から引きづり出すように、床に這いつくばらせてしまう。

「子供を、そんな勢いで殴っちゃ駄目だろうが。子供だったら、命がないぞ」

 あくまでも、明るく窘めるミヅキを見下ろしながら、律が説明した。

「あの時はまだ、この人は生前の記憶が、戻り切っていなかったんです。ですが、それが不幸中の幸いだったのかは、分かりません」

 ある戦いの敵に、死ぬ前に呪いをかけられたミヅキは、それに抗うためにカスミの傍を離れた。

 ライバルである凌を引き金にする、解除の難しい呪いだった。

「シノギの旦那と仕合って勝てばいいと言う呪いなら、いいんだが……」

 幼い頃から全盲で姿を見ることは出来ないが、その男の気配を感じた途端に襲い掛かりそうになる衝動を、持ち前の気力で抑え込みながら、当時のミヅキはカスミに言った。

「その後、無差別に襲われても、対処が面倒だな」

 その意を受けて、カスミは真面目に答えた。

「愛想を振りまきすぎて、とんでもないものに好かれたものだな」

「全くだ。……あの旦那を襲っている間に解いてくれる気は、あんたにはないんだろう?」

 ダメもとで訊く男に、カスミは真面目に答えた。

「集中していないと、お前も叔父上も、消滅させてしまいそうだ。二人に巻き込まれんように避けながらそれを出来る程、私は器用ではない」

「だよなあ」

 その相手は、あの時代では最強の部類の術師だったようだ。

 掛かった呪いは、死してもなお濃く残っていた。

「残念だが、足を洗わせてもらうしかないな」

「そうだな、仕方あるまい。そうだ、何なら、所帯でも持ってはどうだ?」

 突然、カスミが寝言のようなことを言い出した。

「まっとうに生きろとでも言うのか? 今更だな」

 笑うミヅキに、カスミは大真面目に言ったのだ。

「子供を作れば力が減ると、よく言うだろう? 事実かどうか、お前、やって見ろ」

「……その上で、凌の旦那に殺されろと言う気か?」

「事実ならば、そうなるだろうと言うだけだ。私は信じてはいないが」

 笑いを治め、真顔で男の様子を伺うが、何を企んでいるのかは分からなかった。

 かなりの時を過ぎ、再び姿を見せたミヅキは、シノギに仕合を申し込んだ。

 その結果は、相打ち。

 静かにそれに立ち会ったカスミは、誰ともなしに呟いた。

「……言い伝えは、言い伝えでしかなかったな」

 現在、少年の姿で大男を抑え込むミヅキは、視覚に問題がない今、何でもかんでも触感を確かめることに重点を置いている。

 その体制のまま、鏡月を見上げると目を細めて問う。

「まさかとは思うが、その視力と引き換えに、旦那を助けたのか?」

 そのミヅキの従兄弟に当たる若者は、無言で顔を逸らす。

 少年は呆れ顔だ。

「お前が負い目を感じる事はないだろう。それに、このオオカミはああ言ったが、あの人は多少時間がかかっても、瀕死状態から蘇ったはずだ。お前が手を貸すことはなかった」

「分かってる。仕方ないだろう、あんたは、助けられなかった。せめて、あの人だけはと、ついつい思ってしまったのは」

 不安が募って、思わずしてしまった行為だった。

 お蔭で、顔を合わせるのも気恥ずかしくなって、姿を消すことになったのだ。

「ははん、つまり、あの旦那から、長く逃げ回っているのか。お前らしいな」

 楽しそうに今の状況を正確に理解したミヅキを見ながら、蚊帳の外にいた朱里が律に問いかけた。

「そのお兄様のお父様から、父を守る保険になるのは……無条件に、その人に襲い掛かるから、ですか?」

「巻き添えは、御免だぞっ」

 さほど力を入れているようには見えない少年から逃れようと、全力で抵抗している大男が喚くが、そのミヅキの唯一の弟子は微笑んで答えた。

「その心配はありませんよ。その呪いは、もう解けました」

 今では笑って話せるが、あの場に飛びこんだ時は、肝が冷えた。

 ちょうど、シュウレイも保護された時期で、家内はバタバタと忙しく、少年が異常に大人しかったせいで、ある可能性は考えなかった。

 凌と同じように殆んど匂いのない若者が、間違われるかもしれないなどと言う不安は、全く考えなかったのだ。

 律が尋常でない気配に気づいてその部屋に飛び込んだ時、セイはすでに刺された状態だった。

 長く使用されていない、今では飾りとして壁にかかっていた、本物の日本刀で壁に縫い付けられていた。

 ミヅキはその柄を攫んで、そのまま体を斬り払おうと力を加えようとしているところだった。

 このままでは心臓を裂かれるか、首を斬り払われるか。

そんな切羽詰まった状態だと言うのに、若者は少年の刀を握った手首を掴みながら、立ち尽くしてしまっていた律に、いつもの口調で問いかけた。

「律さん、この人の名は?」

 なぜか、どんな心配も一蹴する、いつもの声音だ。

 律がその後やったことは、問われるままにその名を教え、後は結果を待つ間に応急処置の準備をしておくことだけだった。

「あの家でゆっくり休むのは無理と言われまして、結局契約期間満了まで持つ程度の処置しかできませんでした」

 幸い、シュウレイがその時ぎこちないながらも手伝ってくれた。

 なのに、休む間もなく、あんな仕事を引き受けたのだ。

「あの子、まだ帰国していないんですね?」

「ああ」

 謝られはしたが、直接文句は言ってやりたいと、用事がてらにここに来たのだが、空振りである。

「用事?」

「ほら、この人の息子二人は、うちで働いていますが、娘さんは、こちらでしょう?」

 ミヅキは、身近にいた狐の女を娶り、四人の子供を儲けた。

 うち一人はこの世にいないが、後は健在なのだ。

 律の下で働く二人の息子は、その雇い主蘇芳の「妹」として籍を入れて世に馴染み、残りの娘は……。

「追い付いて来たか」

 ミヅキが呟き、大男を開放した。

 律の隣の席によじ登って座った時、新たな来客を呼び鈴が告げた。

「今日は……って、どうしたんですか、すごい盛況ぶりじゃないですか」

 遠慮気味に扉を開けた女が、店内の客の多さに目を丸くした。

 長身の、まだ娘の年齢の美女だ。

「雅さん。珍しいですね、こんな時間に」

 朱里が目を見張る前で、店内を見回していた女が少年を見つけた。

「良かった、やっぱりあなたを探して抜け出したんですね。急にいなくなるから、焦りました」

「すまないな、良く叱っておくから。許してやってくれ」

「目を離した私も悪いんですから、程々にお願いしますね」

 雅は優しく言いながら、まだ床に這いつくばったままのこの店のマスターを見下ろした。

「お掃除中ですか?」

「い、いや、転んだだけだ」

 妙な空気を察しつつも、女は店内を再び見まわして鏡月を見つける。

「ちょうどここが分からなくて立ち往生してた人も、連れてきましたよ」

 後ろを振り返り、招き入れたのは、若者の待ち人の一人だった。

「ああ、迷ったのか。分かりにくい場所を待ち合わせに使って、悪かった」

 鏡月に気楽に声を掛けられ、サラは一瞬驚いた顔になったが、すぐに首を振った。

「迷うのも、楽しいです。度を過ぎたら大変ですけど」

 答えてから、躊躇いがちに確認する。

「あの、ヒビキさん?」

「ああ。……あ、そうか。この姿じゃ不味かったか」

「いえ。何だかその方がしっくりきます」

 微笑んだ女と鏡月は場所をテーブル席に移し、本題に入る。

 封筒を差し出され、その厚みに目を見張ったサラに、若者は問いかけた。

「今後は、どうするんだ?」

「……死ぬまで、役者は続けようとは思っています。これだけ頂ければ、息子の将来の負担を、母に負わせることもないですから」

 死んだ夫の方は天涯孤独の身で、サラの方も片親だったため、頼れる親族は母親だけだ。

 まだまだ永く費用がいる息子の将来を、何よりも心配していたサラの答えに、鏡月は首を振った。

「そうじゃなく、病の方だ。治療はしない気か?」

「……」

 その質問に、何故か沈黙した。

 どうしたのかを眉を寄せる若者を見つめ、女は暫く考えて答えた。

「そうですよね、そこまで調べ上げる必要は、もうないですもの。実は、こちらに戻ってから検査を受けたら、小さくなっていて今は様子見の状態なんです」

「……何だと? お前さんの病状は確か……」

 言いかけて若者も気づいた。

 子宮癌を摘出した後転移が見つかり、余命も宣告されていると、調べがついていた。

 だが、病特有の匂いが、余りしなくなっていた。

「驚きますよね、私もびっくりです。あの土地の環境は、予想以上に療養に向いた場所だったんですね」

 何もない辺境の国の、辺境の村と言う認識しかなかった鏡月は、そういうものか? と納得しかかっていたが、カウンター席の方で黙ってそのやり取りを聞いていたユズとライラが、無言で目を交わした後ユズが話しかけた。

「本当に、そんな精神的な理由で、治療しなくても済むレベルにまで、腫瘍が小さくなるんでしょうか?」

「オレは、病にかかった記憶がないんでな、よく分からん」

 聞く相手を間違えたと、女たちに顔を向けると、雅は困った顔になり朱里は少し考えて答えた。

「人によるのではないでしょうか」

 有力な答えをくれる人材がいないと諦めたユズに、意外な人物が答えた。

「病気持ちで拘置所と病院を行ったり来たりしている被疑者を担当したことありますが、お医者の話では、稀にあるようですよ。大体が逆の場合ですが、小さくなることもないことはない。ただ、急速には珍しいのでは?」

 乱暴な口調が多い葵だが、ここは年上が多いせいかずっと敬語だ。

 そうしていると、強面ながら行儀よく見えるから不思議だった。

「そうなのか」

 と興味のない鏡月が気のない相槌を打つが、ユズは納得してサラを見つめた。

「何か、この数日で変わったことがあったのかしら?」

「……」

 見返した女は、少し考えて全く別な話を切り出す。

「アンは、どうしてあの現場に来たの? 健康そうでまだ将来の希望がありそうなのに、あんな場所に来てまで、名を上げたかった?」

「……言ったでしょう? 私は、その名の娘を、探したくてあの現場に入り込んだ。最悪な事実が判明してしまったけれど、それは今言う話ではないわ」

 やんわりと笑いながら、ユズは問いかける。

「誰かが、あなたに個人的に接触してこなかった?」

「……いいえ」

 首を振った女に更なる問いを投げようとするのを遮り、サラは答えた。

「個人的にではありません、ティナにも、接触していましたよ」

 口を閉じて代わりに目を見張ったユズに、女は笑いながら続けた。

「一人ずつ接触するのも怪しいので、呼び出して申し訳ないと、暫くお世話になったホテルのロビーで」

「……どういう目的で?」

「いわば、法外の人体実験の一つ、です。だから、内密にと言われたんです。あなた方はご存知の事だと思っていたんですけど……」

 言われて、鏡月は思い当たった。

「まさか、あの、通訳か?」

 医者の卵でありながら、その将来を兄の放浪癖の為に潰されそうになっていた、レイジと言う通訳だ。

「人体実験って、一体どんな?」

 少し厳しい口調のユズに、サラは困った顔でバックの口を開け、プラスチックの容器を取り出した。

 薬入れにも見えるが、そこに入っていたのは昔ながらの包み方で紙に包まれた、飴玉のようなものだった。

「何だ、それは?」

「抹茶味の、飴玉かなって、渡された時は思ったんですけど……」

 口の中で溶かすようにと渡されたそれは、ティナの物よりは少し小粒だった。

「分量は人それぞれで変わるそうで。しかも、これ、一日に一個と念を押されました」

 それ以上は、効きすぎて腹に強い打撃を与えると言う。

「お腹が緩くなったり便秘になって、逆に体の耐久力が落ちるそうです」

 抹茶味の飴玉に似たそれは、レイジが研究中の薬の錠剤、だった。

「万能薬になればと、レイジさんも笑っていました。命を粗末に考えるのなら、協力して欲しいと」

 あの地で死ぬことも出来ず、この後どういう希望ももてないと思っていた二人は、失敗しても死が早まるだけと、気軽に引き受けた。

「これは、帰国後に送られてきた分です。それ以前は、あの国にいた数日しか口にしていなかったんですよ。検査の結果次第で、また送ると言われていたんです。いい結果を知らせてくれたって言う御礼の言葉も添えられていました」

 嬉しそうなサラの話に、鏡月は僅かに口元を緩ませている。

「でも、得体のしれないものが入った薬なのでしょう?」

「得体は知れてるだろ。恐らくは、あの地に生えてた、道端の雑草だ」

 ユズが心配そうに言うのに、若者はあっさりと答えた。

「お前らな、蓮の奴が、サラだけに大技かましたと疑ったんだな? それだけは、天地がひっくり返っても、あり得んと思うぞ」

「どうして? 吊り橋効果でそういう事もあるんじゃあ?」

 ライラが勢い込んで尋ねるのにも、鏡月はにんまりと笑いながら答える。

「あの程度で、蓮が命の危険を感じるものか」

 感じるとすれば、他の奴だろう。

 楽しくなって大笑いしそうになる若者を、律の隣に座っていたミヅキが呆れ顔で見る。

「そうですよね、蓮は、意外に一途ですから、一人の女性を思い続けるんでしょうね」

「望みは、薄いんだがなあ」

 その場に残っていた雅の言葉に、鏡月は笑いながら大きく頷いた。

 顔を見合わせる元女優二人が、何やら複雑な顔をしているのに首を傾げながら、雅は別な事を口にした。

「ご存知かもしれないですけど、一応言っておきますね。戒の仕事仲間の男ですけど」

 カインのことだ。

 本名は長ったらしいので、便宜上そのままの名で認識することにした若者は頷いた。

「この地にいるが、来れる状況ではないんだな?」

「ええ。自棄になって、私に襲い掛かったんです。さすがに腹が立ったので、ぼこぼこにして、術師の張った結界内で、監禁してます」

 さらっと、とんでもない事を、優し気な笑顔で報告する。

 葵が思わず声を上げてしまう程、空気が怖い。

「戒の質問ですけど、報酬は代理人が受け取るのでもいいかと」

「後でその術師の元へ、平気な奴を出向かせる。持ち逃げされる心配はないだろうが、信用問題だからな」

「伝えておきます」

 頷いて、娘は店を出て行こうとしたが、やんわりとした声に止められた。

「雅さん、お暇なら、少し座っていきませんか?」

 ユズの誘いに、雅は笑って答える。

「暇ではありますけど、話についていけないです」

「じゃあ、付いていける話をします。いえ、恐らくは、あなたのお知り合い方の色恋沙汰も、係り合っていると思う話なんですけど……」

 首を傾げた娘も、サラも話が見えずにいたが、その場にいた面々には分かった。

 葵が、我に返って律を見る。

 その意を察して律は手元に戻った台本を、さりげない仕草で手提げバックに滑り込ませようとして、横合いから奪い取られた。

 神業か、と思う程に素早く、ミヅキはカウンター内に戻っていたウルへそれを滑らせ、大男はそれを女房の方へと差しだした。

「そ、それは……」

 いつの間に、と呟く鏡月の前で、ライラは微笑んでサラにも声をかける。

「三人で役を決めて、読み合わせしない? 私も、昔女優だったの。久し振りに演じさせて」

「本当っ? やった。日本語でやってくれるの?」

 誰よりも早く反応したのは、嬉しくて喜ぶ雅だ。

「勿論。心を込めて、演じさせてもらいます。楽しんでいって下さい」

 勢いに飲まれてサラも頷き、女優三人が、一つの台本を前に話し合い始める。

「……朱里、そろそろ、お暇しよう」

「え、これから楽しいのに」

「いや、駄目だ。触らぬ神に、祟りなしって言うだろ」

 頑なに首を振り、朱里を促す葵に、ウルが低く声をかける。

「逃げる気か? 逃げたくても逃げられん義父を置いて?」

 詰まってしまう大男を尻目に、鏡月はそっと扉の方へ向かうが、これもミヅキに止められた。

「やましい話なのか?」

 明るい声音だが、有無を言わせぬ口調だ。

「ものすごくやましい話、だっ」

 睨むように、それでも正直に答える。

 それがこの従兄弟への答えとしては最良だが、最良だからと逃げられるわけではない。

「やましい所を教えてくれ。より詳しくな。セリフだけでは分からん話もあるだろう?」

 とんでもないことを言い出す少年に、鏡月はカウンター席まで引っ張り戻されて椅子に座らされると、その膝の上にミヅキはちょこんと座った。

 無邪気に見える笑顔を浮かべ、話を聞く姿勢だ。

「……」

 つまり、自分も逃げられないわけだ。

 律は、大きく溜息を吐いて立ち上がった。

「コーヒーを作らせてください。この子に飲ませられるものも。長くなりそうですし、飲み物くらいはいるでしょう?」

「あ、お手伝いします」

 朱里も立ち上がり、店の従業員を置き去りに読み合わせの準備を始める。

 数分後、腕よりの俳優陣による、本気の読み合わせが始まった。

 ある者はワクワクしながら三人を見つめ、ある者は頭を抱えながら話を聞き、そしてある者は話を聞き終わる頃には質問の数々で燃え尽きて、カウンターテーブルに体ごと突っ伏してしまっていた。


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