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◇
帰宅した俺は、制服のポケットから携帯電話を取り出す。
和にメールしたい。
和の誤解を解きたい。
でもまだ和の受験は終わっていない。
「あーー!!」
頭からベッドにダイブして、枕に顔を埋めた。和への想いに心は波のように荒れ狂い、枕で溺死しそうだ。
和が北条に送ったメールは、本心なのか。
和がいながら、北条の家に行き両親に気にいられてしまうなんて、俺は何やってんだよ。
待てよ、この時期に和から率先して北条にメールを送るはずはない。あのメールは北条のメールに対する返信だ。
だとしたら、北条は和にどんな内容のメールを送ったんだろう。
ま、ま、まさか……。
俺が北条の家に、のこのこついて行ったことをバラしたのか?
北条のお父さんに『彼なら、麻夕を任せられる。ただし、結婚となるとそれなりの経済力をつけてからの話しだけどな』って言われたことを送ったのか?
ああ、万事休すだ。
『彼氏』から『友達』に格下げされてもしかたがないな。いや、すでに『圏外』かも。
言い訳や屁理屈を並べても、和には通用しないよ。
これは素直に謝って、また『友達』からリベンジするしかないかも。
俺は携帯電話を握り締め、和へのメールを打つ。
【和ごめん。俺、言い訳しない。また友達からやり直すよ。】
男なら潔さで勝負だ。
すごろくのコマが、振り出しに戻っただけ。何度でも、やり直せばいい。
送信ボタンに親指をのせるが、押すことができない。
「押せないよ……。友達に戻りたくなーーい!」
携帯電話を持ったまま、ベッドに大の字になった弾みに、ピッと送信ボタンを押してしまった……。
「ああーー? ああーー!!」
な、な、なんでこうなるんだよ。
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