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和からキスのプレゼントがもらえたら、もう死んでもいい。
俺は唇を近づけて瞼を閉じた。
ジッと……和のキスを待つ。
ひたすらジッ……として……動かない。
ていうか、もうかなり待ってるんだけど。
しばらく待っても、唇に柔らかな感触はない。俺は待ち切れなくて、瞼を開ける。
和は机に座って、カリカリとシャーペンを走らせていた。
俺は一人でバカみたいに突っ立っている。
「はっ……な……に?」
「塾の宿題もあるし、勉強しないと。受験生にはクリスマスイブもお正月もないのよ」
「……わかったよ。和、俺もう帰るから。プレゼントは帰ってから開けて」
目の前でプレゼントを開けられたら、ちょっと照れ臭いし、どちらかと言えば和には全く興味がない品物。「いらない」と言われたらショックだから。
「うん。おやすみなさい」
一心不乱に勉強している和に背後から近付き、和の頬にチュッとキスをする。
シャーペンを持つ手が止まり、ポッと頬を赤らめた和。まるで静止画みたいに、固まっている。
すごく……可愛い。
この可愛いリアクションが見れただけで十分だ。それ以上望んではいけない。
なぜなら、俺達はまだ『友達』だから。
「なあ、和。明日のクリスマスに逢えないかな? 少しでいいんだ」
「……あ、あ、明日は……」
頬にキスをしたせいか、和はしどろもどろだ。
「わかってる。明日も学校の模擬テストと塾だよな」
「……ごめんなさい」
「和、そろそろお友達も帰らないと、ご両親が心配されるだろ」
階下から、和の父親の声がした。
若干、声のトーンは低い。
ヤ、ヤバい。
信用を失ってしまっては、二度と遊びに来れなくなる。
「……い、今帰ります。今日はご馳走様でした。お邪魔しました」
和の家族に玄関まで見送ってもらい、俺は退散する。
確かにこの厳格な家庭で、和と甘いクリスマスイブを過ごそうと思った俺がバカだった。
リベンジ出来るわけがない。
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