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そんなわけで、俺はあの日以来、和にキスをするどころか、手も繋がせてもらえない。
ていうか、あのキスも和にとってはノーカウントなんだから。
和と付き合っていると思っているのは、どうやら俺だけのようだ。かといって、他の女子と付き合う気にはならない。
高校二年のギラギラした夏休みも、和はずっと塾の夏季講習と学校の強化ゼミに明け暮れた。勉強嫌いの俺が、もっとも苦手とする聖域だ。
俺って、このまま和の『彼氏』には一生なれないのかな。
◇
―カラオケ、うさぴょん―
渋谷のカラオケ店に行くと、何故かC組の女子が三人いて、正和と恭介はデレデレと鼻の下を伸ばしている。
「はっ? なんで?」
女子がいることを聞かされていなかった俺は腑に落ちない。
「へへ、わりいわりい。一人足りなくてな」
「一人足りないからって、和にバレたら俺は『友達』解消だ」
「お前は林の唯一の友達なんだろ。林はお前のことを彼氏と認めてないし。女子とカラオケしたからって、林の許可なんていらねぇよ。林の顔色を覗う必要なんてなくね?」
確かに俺はまだ『友達』だ。
でも、これは和に対する裏切り行為。
「こんにちは、光月君」
C組の女子が俺に声をかけた。
その女子は学校で『高嶺の花』と呼ばれている美少女だった。
肩までのふわふわの髪、小動物みたいなくりくりした大きな目。お人形みたいに色白で形のいい唇。
超可愛い。
「こんにちは」
北条は俺の目をジッと見つめて、ニコッて笑った。その可愛い仕草に不覚にもドキッとした。
「なんだよ、なんだよ。お二人さん、熱い視線を交わして、いいムードだな」
正和がすかさず、俺をからかった。
「ば、ばか。変なこというな」
内心、俺は焦っている。
北条の誘うような眼差しに、ドギマギしていたからだ。
「じゃあ席決めな。俺は山本さんの隣に決めた!」
恭介が叫んだ。
山本はニッコリ笑って、「どーぞ」って恭介を受け入れた。
「俺は川口さんの隣。だから聖也は北条さんの隣な」
「はっ? 何それ? 」
ていうか、正和も恭介もカップル成立だし。もしかして最初から、この構図は出来上がっていたのか?
カップル同士でカラオケを熱唱し、みんなはイチャイチャしている。
俺は初対面の北条と、どーすればいいんだよ。
「ねぇ、光月君って、学年一位の林さんと付き合ってるって噂は本当?」
北条が上目使いで俺を見つめた。
かなり可愛いいんですけど。
何をテンパッてるんだ。
俺は学園のアイドルだぞ。
平常心、平常心、こんな誘惑には乗らない。俺には和がいるんだから。
「林は友達だよ」
付き合ってるなんて勝手に言ったら、和に怒られるに決まってるからな。
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