第54話 まーくんとゆーたんの………(アルバムと8ミリビデオは見ていた。)
「あぁ、これこれ。これよ~。こういう機会でもないと本人でさえ見ないものねぇ。」
友紀さんのお母さんが持ってきたのは表紙に「ゆーたんせいちょうきろく」と書かれている何冊ものアルバムだった。
ん?ゆーたん??数時間前からどうしても気になるそのワード。
しかし今現在思い当たる節が……
「はいこれ~生まれて間もない時~」
といって俗にいうお猿さん状態の赤ん坊の写真がこれでもかと羅列していた。
「流石に自分でも覚えてませんし、2重の意味で恥ずかしいです。」
だっておむつ替えてる写真もありますしね。不意打ちだったので目を逸らせませんでした。
「み、みないでくださいぃぃ。」
「大変申し訳ありませんでした。」
即・土・下・座
でもこれ悪いのそこの母親だと思うんだ。
ページ捲ってるのも母親だし、捲る手を止めてるのも母親だし…
そしてなぜか0歳児で1冊が終わる。
2冊目に入ると漸く1歳の写真が…これは1年で1冊ということですかね。
ぱらぱらと捲られていく写真…なんとなくこの頃はもう可愛い幼女という感じになってきた。
そしてこの頃から違和感を覚えてくる…そう、左目したのほくろ…
「で、これが1歳の時のおねしょの写真…」
母親はまたしてもやばい写真でストップし説明に入る。
「ほら~布団のシミが埼玉県の地図みたいでしょ~思わず撮影しちゃうよねぇ。」
だ、そうです。
「だ、だからみないでくださいぃ。」
再・即・土・下・座(最速土下座ともいう。催促土下座ともいう。)
「重ね重ね申し訳ありませんでした。」
その様子を見て父と霙さんと少し離れて写真は見てはいないが大笑いする結城がいた。
1歳のアルバムの途中から見覚えのある同い年くらいの子供とその母親らしき人物の一部が写真に登場する。
さらにはうっすらと記憶に残ってる公園の景色。
その様子を見ていた母親は何かを悟ったようにも感じる。
「3冊目は2歳編ね。」
今度は母娘の入浴シーンが。撮影者父となってる。
お母さんは映ってはいけない箇所はしっかりガードしている。
「友紀さんの家族って変態なんですか?」
ぽろっと漏れてしまった。
「あらバレましたか。」
「そ、そんな事は…」
母と友紀さんの声が重なる。
「でも、子供は成長が早いし出来るだけ記録を撮っておきたいものなのよ。」
言いたいことは理解出来るけど、場面の選び方というか…マニアックでないかと。
というか、被写体が友紀さん一人の時にたまに光の魅せ方が上手いけど…
「もしかしたら、お義父さんがレフ版担当で、お義母さんがカメラ担当ですか?」
「「正解!!」」
父母の声が綺麗にハモった。流石夫婦ですね。
「娘がこうなったのは…正確にはヲタクの道を行ったのはまさしく血の成せる技なのよ。ある意味サラブレッドね。」
「当時はイベントもなかったし、披露する場所も僅かだったからね。」
確かにコスプレ文化が浸透したのは最近だ。90年代にはどうにか一般に知られてはいたけどまだメジャーではなかったと聞く。
ただ、元はお義父さんは景色や風景を撮るのが好きだったそうだ。
脱線してしまったが、両親の英才教育があったのですね。
そういえば霙さんもそうでした、一家揃ってヲタ家族…ある意味素敵だ。
これなら衣装部屋で一部屋多く借りられる理由もわかった気がする。
「それでこれが2歳のアルバムの続きね。」
何枚か捲るとやはり男の子が登場してくる。
何となく見覚えのある服装に何となく見覚えのある公園。
間に友紀さんのお義父さんがMAXコーヒーを飲んでる写真が挟まり。
何となく見覚えのある母親……ヲイ
ウチの母親が映っておりますが……?
若く見えるけど自分の親の顔くらいわかりますがな。
「なぜ、真人さんのお母さんが映ってるのでしょう。」
あ、友紀さんも知らないんだ。
「はぁ。子供だから覚えてないのかもしれないけど、私達大人は昨日の事のように覚えてるわよ。」
と言いながらも写真を捲っていく。
段々男の子と女の子は二人で遊んでる写真が増えていく。
それは3歳になっても変わらなかった。
3歳になると手を繋いだりちゅーしたりしている写真も出てきた。
「「ななな…」」
俺と友紀さんのセリフが見事にハモった。
「あらあら、ついにタイトル名初キッスはMAXコーヒー味に辿りついたわねぇ。
この時の様子をお義母様は語られた。いや、心の中でもこう呼ばないと爆弾を投下されそうで。
ここまで見ていて、もう流石に気付いてるよ、この写真の男の子は自分だという事に。
それは友紀さんも同じで顔なんかもう真っ赤だよ。
「この時、ゆーたんが間違ってお父さん愛用のMAXコーヒーを飲んじゃってねぇ、甘くて甘くてとろけちゃぅなんて言うから…」
「まーくんが、じゃーぼくがちゅーでちゅーわしたげるーと言って、ぶちゅーっていったのよねぇ。」
「3歳児恐るべしって思ったら、お父さんが8ミリ(8ミリビデオの事)を回してたのよねぇ。というわけで証拠のVTRがここにありまーす。」
「当然現代に合わせてDVDに焼いてありまーす。」
お父さんが円盤をプレーヤーにセットし再生ボタンを押すと…
「うぅ…あみゃい~あみゃいにょ~ とろけひゃうにょぉ~」
あまりの甘さに顔をしかめてふらふらするゆーたん。あぁ可愛いなぁその表情。
「じゃーぼくがちゅーしてちゅーわするよー、ほんとうはちゅーはすきなひととするものってきいてるけど、ぼくたちすきあってるからいいよねー」
そしてぶちゅーといったまーくん。
デリカシーも大正デモクラシーもないセリフだな、3歳の時の自分。
「は、恥ずかしぬ…なんだこの拷問……あれ?というかこれがファーストインパクト…じゃない、ファーストキス?」
お義母さんは「そうね、私が知ってる限りではこれが最初よ」と言っていた。
さらに羞恥プレイは続き、画面からは…
「えへへーまーくんありあとー、あまいのどっかいってまーくんのあじかするー。」
おいおい、ゆーたんもませてますよ。でもこれ、多分どこかでお義母さんが仕込んだよね?仕込んだよね?
満面の笑顔の2人の裏で、「ほらもういっかいぶっちゅっちゅー」と言ってる女性の声と、「まだ嫁に出すなんて言ってないんだからねっ」ていう魂の叫びの男性の声をマイクが拾っていた。
結城は後ろの方で大笑いしている。そしてそれを見て「ダメよ笑っちゃ。」とひじ打ちする霙さんがいた。
当のまーくんとゆーたんこと、真人と友紀は猿のお尻よりも真っ赤になっていた。
「当然結婚式に流すであろう映像は編集済みだからねっ」
お義母さんは強かだった、そして積極的だった、行動派だった。
そして鬼畜だった……
しかし、鬼畜は両家の母だったという事はもっと後に知る事になる…
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後書きです。
ついにファーストインパクトが明らかになりました。
こんなに小さい頃から出会ってたら、知らずに再会した時に無意識に惹かれてもしかたないよな~とは思います。
アルバムも全部やると容量の無駄使いになってしまうので別れのシーンの4歳までと、あとはダイジェストで。
忘れてはいけない2大激萌え写真がありますのでそのくらいはひょっこり表記します。
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