第37話 カップルってお土産屋で互いの名前が入ったもの探すよね。

 「~~~」

 声にならない声で友紀さんが慌てている。

 大丈夫、ほぼ同時に起きたから寝顔見られた云々はないと思う、残念だけど。

 それと涎云々も大丈夫。


 ただ、周囲のカップルや家族連れには、二人して寝ていたのは見られていただろう。

 その様子は微笑ましく見られていたに違いない。だが、同じようなカップルは他にも見かけるのでそんな珍しくもないのだろう。


 周囲は寒いけど、各々のカップル二人の空間は暖かいのだろうし。もう爆発しろっ

 今ならエクスプロージョン打てる人たくさんいるのではないだろうか。

 みんなで「ナイス爆裂」しようよ。


 ただ、二人は知らない。

 気持ちよさそうに転寝しているところを撮影されていたことを。

 しかもその写真をフォトコンテストショーに勝手に応募されていたことを。

 さらに言うなら結構な至近距離からの撮影であった事を。




 時刻も13時を過ぎ、お昼時間に昼食を取った人達が動き出していた。

 

 「さて、動物園側に行きましょうか。」


 再び園内電車に乗って動物園側へ。


 東武動物公園、結構広い。流石のちのジャパリパーク取材の地。

 残念ながら動物園側に着いて、最初に見れるのはライオンでもホワイトタイガーでもない。

 それに一番人気はホワイトタイガーではない。


 埼玉県民ならばみんなしってる「カバ園長!」だ。

 って仕事してるだろうから会えませんがね。


 なんてネタは良いとして、ぐるっと動物たちを見学。


 これ、○○の惑星やアウターゾーンみたいなのがあったとしたら、人間が見世物や食料になる時があるかもなー


 その時になって動物たちの気持ちを理解するんだよ。

 という夢も希望もない事は置いておいて。

 動物園は遊園地に比べると家族連れの方が多い。

 引っ張りだこだよお父さん、子供は元気だからあー○○だーと言いあっちへこっちへ。


 「子供がいたらあんな感じではしゃぎあってたのかなぁ」


 友紀さんの漏らした呟きが胸に刺さった。

 

 「あ、ついに東武公のアイドルホワイトタイガーさんですよ、ほら真人さん。可愛いですよ、かっこいいですよ。」


 子供のようにはしゃいでおります。元気になってなによりだよ。


 隣で見てる子供と同じくらいのはしゃぎように思わずたじろいでしまった。


 「お、おう。ふさふさしてるね。」

 ただ、今日はやる気がないのかただぐで~っと伏せているだけだった。

 ちょ、おま仕事しろよっ

 と思う人もいたに違いない。


 「餌やりショーとかは曜日や時間で決まってるのは残念でしたね。」


 「餌やりと言えば日曜ならペンギンさんにならあげられるみたいだよ。15時までの受付みたいだけど。」


 まだ1時間以上はあるので他の動物を見ながらペンギンを目指す事にした。


 他にもゾウさんのディナーやアルパカさんのディナーもあるみたい。


 その前にせっかくなので「たれホワイトタイガー」をバックに写真を撮影した。

 通り係りのスタッフに一緒に撮ってもらったけど、コスじゃない写真を撮られるのは何故か緊張する。


 「それじゃぁいきますねー、3、2、1」

 カシャッカシャッ

 あ、この人もレイヤーかカメコだな。

 普通の人はチーズとか1たす1はとか言う人が多い。

 321とカウントする人はレイヤーかカメコなのだ。偏見かもしれないけど。


 注:作者は少なくともそう実感してます。


 そういえばお弁当箱や水筒の入ったカバンは俺が持っている。そのせいか反対側の手は友紀さんに握られ引っ張られる事が多い。

 まるださっき見た子供のように、○○だ、○○だと引っ張ってくれるので。

 大胆にもなったけど接触的にもなった気がする。

 

 「あ、ライオンだー」

 指を指して俺を引っ張っていく。

 友紀さん、子供化してるよー


 「西武ライオンズがあるくらいだし前面に押し出してる感が…」

 多分関係ないけど、どんな動物園でも人気は上位にくる動物だ。

 しかし寒いのかあまり動いてないのが残念。


 「ヒグマ発見!おやつ発見!」

 なくなり次第終了であるが、まだ残っていたため200円でおやつを購入。

 モナカのなかに熊用のペレットが入ってるらしい。

 ベルトコンベアに乗せると、上手に焼けましたーの肉焼き器のようにぐるぐるハンドルを回していくと…

 それに気付いたくまさんがおやつを食べに来てくれます。


 生き物ですから、お腹いっぱいとかで食べない時もあるそうな。

 じらした時も食べない時があるそうな。

 くれるのかいくれないのかいどっちなんだい?とやられると気分を損ねるようだ。


 「食べた―」

 くまさんは魚を咥えてるイメージだけど全然違いましたね。

 「こうやってみると熊も可愛いもんだね。」


 その後も転々と動物達と戯れながら15時が近づいてきたので、ペンギンさんのいるペンギン舎へ。

 フンボルトペンギンとオウサマペンギンが羽を動かして立っている。

 その様子はまるで「なんでやねんっ」とツッコミを入れているよう。

 しかしペンギンの羽には骨が入ってるのでツッコミを喰らう方は肋骨命がけだね。


 どうやら30組限定には間に合ったようだ。

 小さな子供やカップル達が普通にエサをやる中……


 「ほーらエサですよ~。プライド捨ててフライングジャンピング土下座を決めたらあげますよ~」

 怖い。何闇を抱えてるの?

 などと言いつつも近くに来たペンギンにエサを放る。


 「ちっ飼いならされた政府の犬めっ」

 だから闇が深いんですけどー。


 「アテレコしながらやると楽しさ倍増するかなって?」

 いやいや飼育員のお姉さんも若干引いてましたよ?


 「くっ、俺の右手が…勝手に……」

 ぷるぷるしながらペンギンにエサを近づける。

 エサが左右に振れるものだからペンギンの嘴も右往左往していた。

 「この闇に魅入られし動物のエサ共が…深淵を恐れないなら喰らうが良いっ」


 ぱくっ

 迷わず喰らいました。

 やはり飼育員のお姉さんが引いてました。


 「あー楽しかったー」


 満面の笑顔で達成感を表してくれたのでこちらとしても満足だ。

 中二的な餌やりもまぁ想い出にはなるし?


 「歩き回ったらちょこっとお腹すきましたね。」

 お昼は軽食だったしね。そうはいってもがっつりしたものは入らないだろうけど。

 ということで、少し歩いてコルネさんのパンケーキハウスにきました。

 スペシャルパンケーキ・ホワイトタイガー

 3枚のパンケーキの一つにホワイトチョコで白くホワイトタイガーが描かれているのです。

 

 残り2枚のパンケーキにはフルーツやクリームやアイスのコーンなんかが乗ってます。

 


 「可愛くて崩せない。」


 と言ってたのに、いざ食べ始めるとホワイトタイガーは見るも無残な姿となっていた。

 「美味しかった。私の糧となったのだから光栄に思いなさい。」

 まだ中二というより闇を抱えてますよ。誰かお酒混ぜました?


 「真っ暗ですね。」

 17時も過ぎれば辺りは暗くなる。ちょうどイルミネーションも数日前に終わってしまったので灯りは少ない。


 遊園地側はともかく動物園側は暗く、動物達の休まる時間帯となり始めていた。

 「カバ園長には会えませんでしたね。」


 「まぁそれは半分ネタだからね。埼玉あるあるというか。」

 実は今もまだ手を繋いでいたりする。

 午後はほとんど触れていた気がするよ。

 そのせいかドキドキは止まらない。

 

 「お土産見に行きましょうか。」


 そういやホワイトタイガーぬいぐるみ所望されていたっけ。

 ショップに着くとそれはまっさきに見つかった。


 「なにこれ、手触り最高。」

 ぬいぐるみの良さはその手触りにあると思うんだ。

 そこに見た目が加わる事で芸術になるんだよ。

 

 「確かに気持ち良いですね~。ふかふかふわふわ。」

 

 「ではそれ三つ買ってきますか。氷雨ちゃんの分と、チケットくれた真理恵さんと、友紀さんへのプレゼントに。」

 そこでようやく以前のような友紀さんが還ってきた。

 ホワイトタイガーを両手に持って、真っ赤になってフリーズしている。


 その隙にホワイトタイガーのゆらゆらキーホルダー、青とピンクの2種を籠に入れた。

 あ、ほら。色違いのお揃いとか持っていたいじゃん?って誰に説明しているんだか。


 復活した友紀さんを連れてネームドハンドタオルを物色。

 2人の名前があると良いねということで探している。

 「「あった!」」


 俺は「ゆき」と書かれたタオルを、友紀さんは「まこと」と書かれたタオルをそれぞれ見つけた。


 ちなみにこのタオル、名前の周囲は薄いピンクのハートで縁どられております。

 

 注:もう爆発しろよ。


 お土産を片っ端から見ていたら19時の閉園の時間になってしまった。


 「車にもどりますか。」


 今度は俺から友紀さんの手を握り友紀さんをリードしていった。


 駐車場の傍には自動販売機がある。


 少し冷えた事もあるし、そこでホットを買って車で飲んでから行こうと考えた。


 がこんっ×2


 「やっぱり俺達にはこれでしょ?」


 俺はMAXコーヒーを2個取り出した。



――――――――――――――――――――――――


ちょっとデートなのに駆け足にしちゃいました。

次話で、なぜデート中大胆だったのかを友紀さんサイドで語るので長くなってもなってところです。

土曜日天草家に送られてからのお話となります。

まぁわかってましたよね?真理恵さん…三依ちゃんの差し金というか入れ知恵だって。

もちろん妹も絡んでます。

母親はどうでしょうね。

思惑はどうあれ、友紀さんを後押ししたい周囲のおせっかいということで。

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