第5話 マルス帝国に行くには

 応接室に行きますと、少女が真っ黒な子供用のドレスを着て、ソファーに座りお茶を飲んでいました。その向かい側にはクストも同じく真っ黒な服を着て外套を羽織って座っていました。そして、ルジオーネさんはいつもの軍服に戻っており、もう一人以前見た蛇人の方がいらっしゃいました。この方も黒い服に黒い外套を羽織っていました。


「お待たせしました。」


 そう言いながら、部屋に入っていきます。


「いえ、時間丁度です。」


 少女は懐中時計を見ながら答えます。少女は立ち上がり私の前に来ます。


「行きましょう。私をコートドラン商会の前に転移してください。」


「いいえ。先に入国管理局に行き、入国と出国の手続きをしてからです。」


「ちっ。」


 またしても、舌打ちをされてしまいました。しかし、これをきちんとしておかないと、後々めんどうなことになるのです。


「ですから、一旦コルバート領の入国管理局に行き、里帰り希望で本日入国し、本日出国するという手続きを行ってからです。」


「本当にマルス帝国は面倒ですね。それで、いいです。」


 納得してくれたようですね。クストが隣に来て手を繋いできました。


「その後はどうするんだ。」


「取り敢えず彼女をコートドラン商会に転移を「それは結構です。」」


 さ、遮られてしまいました。


「入国さえできれば、わたしはルーちゃんのところへ跳びます。」


「一人でですか?」


「自分が付いていきます。」


 そう言ってきたのは、蛇人の人でした。


「先程も言いましたが、邪魔なので付いて来ないで下さい。」


「自分は監視員ですので、邪魔はしません。」


 何を監視する必要があるのですか?


「ルーク君を運ぶ要員って思ってくれたらいいですよ。」


 ルジオーネさんが少女を説得しています。監視員は必要ですか。


「はぁ。取り敢えず転移してください。あと、事が終わったあとの集合場所は何処ですか。」


 そうですね。


「コートドラン商会と私が行く研究施設の中間点の中央広場の噴水前はどうでしょうか?」


「土地勘がないのですけど?」


 そうでした。


「直接ここに戻って来てはダメなのか?出国手続きは終わらせるのだろ?」


 クストが尋ねてきましたが、私が答える前に少女が答えてくれました。


「第6師団長さんマルス帝国を嘗めてますよね。出入国転移の魔質感知までされているって知らないのですか?」


「マジで!」


 マジです。私が作りましたので、間違いないです。


「では、聖堂教会はどうでしょう。遠くからでも高い鐘楼が見えるのでわかると思います。」


「目立つところですが、仕方がないですね。」


 納得はしてくれたようです。それでは


「まず、コルバート領に跳びます『転移』。」



 コルバート領の領都に転移をしました。9刻18時を過ぎた時刻となり、日が落ち辺りは夕暮れの闇に包まれそうになっています。そして、私たちは転移したところの近くにある入国管理局に向います。


 手続きは問題なく終わり、外に出た少女は


「わたしはルーちゃんを迎えに行きますので、失礼します。」


 そう言って、少女と蛇人の人は転移をしていった。

 私も行きましょう。帝都の研究施設の私が使用していた部屋へ転移をします。


「『転移』」


 転移した先は真っ暗でした。壁にある明かりをつけるためのスイッチを押し、部屋を明るくします。

 部屋は私がいなくなったままの状態でした。

 ここに残してあるものは全て日本語で書いてあるものなので、読んでも意味がわからず放置されたのでしょう。


「ユーフィア。ここからどうするんだ。」


 クストに問いかけられましたが、クストがいることで問題が発生してしまいました。施設使用者登録をしていない者が施設内を歩くと防御機能が働いて攻撃をしてくるのです。管理室に行き防御機能を一時停止をしなければなりません。それからでないと、製造者のいる部屋を探しに行くことができません。


「私だけで行くこと「ダメだ。」」


 やはり否定されてしまいました。


「使用者登録をしていない者が施設内を歩くと防御機能が反応して、攻撃を受けてしまうのです。先に管理室まで行って、防御機能の一時停止をしなければなりません。管理室まで私一人で「だから、ダメだ。」」


 はぁ。どうしましょう。


「管理室とやらの場所はどこだ。」


「ここから一番遠く、廊下を出て右側の一番端の突き当たりの部屋です。」


「攻撃対象は何に反応するんだ。」


「死角がないように設置された、監視カメラ・・・えーと、写真機のようなもので顔認証を行い登録してある人物か照合し、魔質も合っているか照合します。それに、外れた者が攻撃対象です。」


「それなら、写真機に写らない速さだったら?」


「写らないなら問題ないかと。」


 クストはそれならと言いながら、私を片腕で抱えあげます。え。もしかして、強行突破ですか?

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