嗚咽
私達が高校生になってすぐ、莉音のお母さんには、好きな人が出来たらしい。仕事に行くのが毎日楽しそうで、化粧も服の趣味も変わった、と莉音は言っていた。
でもその人とは恋人までの関係で、結婚は考えていないみたい。その理由は、他人の私にも安易に想像出来てしまった。
――娘がいるから。
莉音のお母さんはいい人だ。二回程しか会った事はないけれど、莉音の話を聞いていても、優しい娘想いの母親だな、と思う。虐待なんて勿論ないし、莉音も「幸せ」だと言っていた。
でも、その優しさが、莉音にとっての重荷になっていたのだと思う。母親の話をする時、ふと辛そうな顔をするのだ。そして、いつもこう言う。
『私なんかいなければ、お母さんは楽できるのに』
莉音のお母さんからしたら、莉音は宝物のような存在なのだろうに。
□
病室の入り口で、莉音の泣き声を聞いた。
私は中には入らずに、その場から去った。
きっと莉音は自分が嫌いで、だから莉音を好きな私も嫌われてしまう。だったら私は、私でなくなりたい。
そうならまた、二人、笑い合えるのに――……
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