【優秀賞】武田信玄Reローデッド~転生したら戦国武将武田信玄でした。チートスキル『ネット通販風林火山』で、現代の物をお取り寄せ無双して、滅亡する武田家の運命をチェンジ!
第36話 アイスクリームを頬張る事、夢の如し
第36話 アイスクリームを頬張る事、夢の如し
――干ばつの視察から五日後。
板垣さんからの強い希望で幹部会議を開いた。
出席メンバーは以下の通り。
俺と香が上座に座り、車座になって幹部達と意見交換をしている。
今日の議題は『流れ者への対応について』だ。
俺の命令で武田家領内にマウテンバイク隊が伝令に走り『流れ者は躑躅ヶ崎館で保護する』と俺の意向を伝えて回った。
躑躅ヶ崎館には流れ者が集まり、今朝の時点でその数は500名を超えている。
五日間で500名……まだ数は増えそうだ。
とりあえずネット通販『風林火山』で買ったブルーシートを壁や木にひっかけて日除けを作り、炊き出しをして対応をしている。
武田家の蔵にある古い米から消費しているが、けっこうな量の米が毎日消費されている。
そこで今日は幹部を招集して対策会議を開いているのだが、飯富虎昌から反対意見が出た。
「流れ者など……放っておけば良いじゃないですか……」
飯富虎昌は流れ者救済に反対か……。
続いて普段は無言の甘利虎泰も低い声でボソボソと反対意見を述べる。
「……御屋形様は武田家の当主であり、甲斐国の国主であらせられる。……武田家の領民と甲斐国の事だけをお考えになればよろしい。……他領、他国から来た流れ者など知らぬ存ぜぬでよろしい」
うーむ……厳しい意見だな……。
二人の発言をきっかけに、幹部たちから次々と反対意見が出た。
「よそ者であろう……放っておけばよい!」
「メシを食わせるだけ武田家が損をする!」
「役立たずだから、追い出された者達だからなあ……」
「間者が紛れ込む事もあろう。好ましくない」
「食料の在庫が……」
「とにかく目障りだ! まとめて斬って捨てては?」
みんな酷いな……こんなに反対されるとは思わなかった……。
俺の隣で黙って聞いていた香が立ち上がって大声を出した。
「みんな冷たいよ! 子供もいるし可哀そうじゃない! ちょっと! 虎ちゃんも反対なのね?」
香が飯富虎昌を指さした。
飯富虎昌は香に弱い。娘に責め立てられた父親のように居心地悪そうに返事をした。
「か……香様! いや、可哀そうと言われてもですね……よそ者ですよ? 我らが面倒を見る筋のモノではないでしょう?」
「冷たい! 虎ちゃんは、冷たい! 嫌い!」
「えっ!? いや!? あああ……」
香はプイッと飯富虎昌から顔を背けた。
飯富虎昌は、ハードブレイク顔だ。
うーん。
感覚が違うな。
俺や香は現代日本人感覚で物を考える。
だから俺の領内に飢えた子供や母親がいれば領主の俺が保護をするのは当然だし、何よりも可哀そうだと考える。
けれども幹部たちはこの時代、この異世界の人間だ。
俺達とは考え方が違うのだろう。
流れ者、イコール、よそ者。
だから領主の俺がよそ者に何かする必要はない。
……って事か?
俺は腕を組んでじっと幹部たちの話を聞いていた。
香以外の全員が反対意見を述べているし、話しぶりからは流れ者に対する忌避感を強く感じる。
閉鎖的なんだな……よそ者に対する警戒感が強い。
どうやったら説得出来るかな……。
議論では、香が孤軍奮闘している。
「ちょっと! 何でみんな反対なの! 可哀そうでしょう!」
「よそ者ですから可哀そうではありません。無駄飯ぐらいです」
「酷い言い方ね! だったら働かせれば良いでしょう!」
「耕す田畑がございません。何より干ばつで、田に引く水が不足しております。それに我らが大事にしなくてはならないのは、武田家の領民です。他所から来たものではありません」
「ぐぬぬぬぬ……」
次々と香が論破されている。
俺はそっと議論の場から抜け、隣の部屋で一人になった。
まず落ち着いて整理しよう。
反対意見としては……。
・食料の消費、食料の在庫が不安。
・与える仕事がない。無駄飯ぐらいである。
・よそ者よりも領民を大事にしろ。
大まかにこの三つかな……。
一つ一つ潰していくか……。
俺は説得プランを頭の中でパパッとまとめる。
サラリーマン時代もこういう事はあった。
何とかなる!
そしてネット通販『風林火山』の画面を立ち上げて、ちょい高級なアイスクリームを購入する。
バニラ、チョコ、抹茶、ストロベリー、キャラメル……。
画面を操作してポンポンとカートに入れて購入ボタンを押す。
シャリーン!
決済完了!
料金を引き落とした音がすると、目の前にアイスクリームが九個現れた。
プラスチックのスプーンも付いている。
アイスクリームを抱えて、幹部会議が続く隣の部屋に戻る。
幹部会議では、香対幹部たちで激論が交わされている。
部屋に入ると俺は大声で呼びかけた。
「ちょっと! 休憩しよう! アイスクリームですよ!」
「キャー! やった!」
香が嬉しそうに飛び跳ねた。
香は抹茶味を選んで、飯富虎昌にチョコ味を放った。
俺はキャラメル味、板垣さんにはバニラ、甘利虎泰にはストロベリー……。
全員にアイスを配ったが、みんなどうして良いかわからないでいる。
俺と香がさっさと食べ始めた。
「あー! 冷たくてウマい!」
「夏はアイス美味しいね!」
「ほら、みんなも食べて! 食べて! 早く食べないと溶けちゃうよ!」
俺が幹部たちをせかすと恐る恐る手に取り出した。
アイスの冷たさにびっくりし、甘さに驚いている。
「おお!」
「これは何と美味な!」
「なぜこんなに冷やっこいのだ!?」
アイスクリームは好評だ!
強面の戦国武将たちが笑顔でアイスクリームを突いている光景は何ともシュールだ。
ひげ面、強面の甘利虎泰が、ピンク色のストロベリーアイスを口に運び、一口ごとに『ムフッ!』と低い声で呟いている。
ああ、気に入ったんだね。
また今度食べさせてあげよう。
みんなが食べ終わり空気がまったりした所で俺は話し出した。
「流れ者を保護する件だが、みんなの心配もわかる」
幹部たちの視線が俺に注がれる。
「まず食料だが……心配無用だ。何とかする」
内政担当の駒井高白斎がすかさず反論して来た。
「何とかすると申されましても、蔵に蓄えた食料にも限りがございます」
俺は落ち着いて感情的にならないように気を付けて言葉を返す。
「うむ。もっともだ。ある程度武田家の備蓄した食料を消費したら、俺の方で食料を用意する。みんな知っての通り、俺は一芸で食料を調達できる。今、俺が調達して来たアイスクリームを食べただろう?」
俺は自分の食べたキャラメル味のアイスを掲げて見せ話しを続ける。
「俺の一芸は秘密なので細かい説明はしないが、とにかく金があれば食料の調達はなんとかなる。だから安心して欲しい」
「それでしたら……私から申し上げる事はございません」
駒井高白斎は引き下がってくれた。
駒井高白斎の心配も無理ない。
最近になって富田郷左衛門配下の『三ツ者』の家族が躑躅ヶ崎館の近くに引っ越してきた。
彼らには、武田家が給金と食料を与えている。
武田家の財政と食料を管理している駒井高白斎としては、干ばつで食料事情が厳しいご時世なのに城下に人が増えるのは、頭の痛い問題だと思う。
駒井高白斎の負担は減らしてあげなきゃね。
さて次の問題は……。
「それから流れ者たちは、金山と道路工事を手伝わせようと思う。馬場信春、甘利虎泰、どうだ?」
馬場信春は金山を、甘利虎泰は躑躅ヶ崎館から本栖城への道路工事を担当している。
先に馬場信春が口を開いた。
「手伝わせるとおっしゃいますが……具体的には何をさせますか?」
「金の精錬段階をやらせようと思う。灰吹は香が考えただろう? だったら流れ者の女でも出来るだろ? 香どう?」
香に話を振ると直ぐに返事が返って来た。
「出来るよ。力仕事じゃないから、女の人でもまったく問題ないよ」
「なら金の精錬……灰吹は流れ者の女を使うという事で、どうだ?」
馬場信春はしばらく腕を組んで考えてから、前向きな答えを出してくれた。
「でしたら灰吹は女に作業をさせ、浮いた男手で石臼を回させましょう。そして石を選別するのは子供にやらせればよろしいかと」
「ああ、それは良いな!」
金山で取れた鉱石はリヤカーを使って、甲府盆地に運び込まれる。
水車で石臼を動かして鉱石を細かく砕き金の精錬を行うのだが、川が干上がった為水車が動いてないのだ。
その為に金の生産がストップしている。
この作業に流れ者を投入して、金の精錬ラインを再稼働させるのだ。
「それで頼む。俺が一芸で食料を調達するには、金が必要だ。金の生産を再開してくれ」
「はっ! 承りました」
馬場信春と金山はこれで良い。
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