第24話 魔剣退治と不気味な一軒家 8


 寝起きダッシュとか、結構しんどい。

日の高さを見る限り、まだ昼くらいだ。完全に遅刻じゃないよね?


「すいません! 遅くなりました!」


 ノックスさんのお店の扉を勢いよく開け、走って中に入る。

昨夜とは違って店の中がよく見え、昨日は見えなかった武器や防具などが目に入ってきた。


「おう、遅かったな。ほれ、できとるぞい」


 カウンターの上には布にくるまれた包丁が乗っている。


「見てみてもよいですか?」

「もちろん」


 俺はドキドキしながらゆっくりと布を取り外す。

次第に見えてくる包丁。そして、その姿が俺の目の前に現れた。


 手に持つ部分は白く、握りやすいようになっており、錆びだらけだった刀身も美しい銀色になっている。

しかも、見えなかった彫刻や刻印もしっかりと見えていた。


「これは?」


 手に持つ部分に一つ、白い宝石なようなものが埋め込まれていた。


「あぁ、もともとそいつに使っていた魔石だ。グリップ部分を直すとき、ついでに表に出して見えるようにしておいたのさ」

「魔石?」

「そうじゃ、魔石といってもそこまで高価なものではない」


 包丁を握りしめ、少しだけ天に向けて掲げてみる。

刀身の根元から切っ先まで美しい彫刻が彫られていた。


「きれいですね」

「当たり前だろ。こいつは以前オーダーされて作った一級品。その辺の包丁とは全く違う」


 俺は包丁をカウンターに置かれた布の上に置き、ノックスさんの方を見る。

満足げな表情のノックスさん。


「ありがとうございました」

「なに、例はいらない。こいつに、これからどうするか聞くんだろ? 早く持って帰ってやんな」

「はい。お世話になりました!」


 包丁を布でくるみ、バッグにしまう。

そして、ノックスさんに礼をして、店を出ていこうとした。


「アクト、もしセーラのしたいことがわかったら、わしにも教えてくれ」

「はい、その時は必ず伝えに来ます」

「ありがとう。また、何かあったら寄ってくれ」

「はい、その時は……」

「おっと、昼間は控えてくれよ? わしは寝ているからの」


 互いに笑い、その場を後にする。

元の姿に戻ったセーラをバッグに入れ、宿に向かって歩き出した。

さて、これからどうしようか。

一度リリアと合流して、これからの事を相談するか……。


『アクトさん』

「ん? セーラさん?」

『もし、よろしければ街を、少し歩きませんか?』


 ま、急いで宿に帰ってもしょうがないかな。


「いいよ、どこか行きたいところでもある?」

『そうですね……。では市場に、一番近いところでいいので、市場に行きたいです』

「よしきた、最寄りの市場に行ってみますか」


 バッグにしまったセーラと市場を目指す。


 朝から夕方、店によっては夜まで市場に店を出している。

野菜や肉、果物に香辛料、それに衣服や雑貨。

中古のアクセサリーや武具なども、所せましといろいろな物が売られている。


『わぁぁぁ、しばらく来ない間ににぎやかになってますね!』

「そうか、いつもこんな感じだぞ?」


 セーラの話がいつのころを差しているのはわからない。

でも、聞こえてくるセーラの声は、とても楽しそうだ。


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