第88話 回復魔法

雨露をしのぐ為だけにしか意味がなさそうな藁葺き屋根の家が燃える。


辺りには一瞬の閃光と、巨大な光により消し炭となった何かが、土に影を刻んでいた。


他にも黒い塊が、いくつも地面に散らばっている。


「ククク…ハーハッハ!我が糧となる事に、至福の喜びを噛み締めて、消え去るがよい」


目の前には、神の福音が大量に聞こえるのじゃと喜ぶ銀髪の美少女。


……

………


数日前


「くーちゃんが魔物の集落を見つけたって言ってるの」


フィーナが、俺の手を引いて知らせる。

変なのが中にいなければ、最高の美少女なのにな。


そんな事を考えながら、サーチ魔法で確認するが反応がない。


「あっちにいるって言ってる」


フィーナが指差す方角を、ルルに覚えてもらい歩く。

足場の悪い樹海の中で、街道を歩くのとは速度が違い3日かかった。


そして、俺のサーチ魔法にも反応する。


またしばらく歩くと、オークの集落であった。

やはり、あの変なのは規格外らしい。


……

………


そして、これである。


「…ルルもレベルアップしたかったのです」


残念そうに呟くルルに、


「獣人の娘よ。お主の贄は、ここに用意されておる」


手のひらで何かを起き上がらせるくーちゃん。

黒い塊から、闇に縛られ貼り付けにされたオークが浮かび上がった。


悪趣味なやつですね…。


「くーちゃん、ありがとうなのです」

「よいのである、よいのである」


剣を抜き、オークの心臓に突き立てるルル。

銀髪の美少女は、笑顔でそれを見送っていた。


そして、笑顔の主と目が合う。


「心配せずとも、お主の分も用意してあるぞ」


何かを手招きすると、私の目前にそれを浮かび上がらせた。


「殺さぬように、腕を切り落とすのじゃ。儂が回復魔法の手本をまず見せるから、次にやってみよ」


そう告げ、まな板に乗った魚を調理する。

その調理の手本を見て、魔素を集めては真似してみるが、私には上手くできない…。


何度も繰り返す。


「ふむ。教え方が違うのか…いや、フィーナこれはじゃな」


ぶつぶつと呟いていたら、くーちゃんが突然焦り出した。


「フィーナが残酷だと、泣いてしまったのじゃ…儂は帰る…」


六芒星の光が弱々しく消えた。

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