わたしが調伏師さま?
「ええ? どどど、どういうこと?」
びっくりして大声出しちゃった。なになに? わたしに
「一時的に、仮でいい。今の俺の宿主はお前だからな」
「ヤドヌシ?」
「お前の、その札が今の俺のねぐらだからな」
札って、スマホのことでしょ? お札じゃないんだけどなあ~。
「お、俺からも頼む。そうしないと、父さんのケガ、治らないんだろ?」
「ああ」
「ミント、わたしからもお願い!」
うう。大切な友達に頼まれたら、断れるわけないよね。
「う……ぅう……わかった! やる! どうすればいいの?」
決心してヨジロウを見ると、ずっごい
「よし。よく言った。ついてこい!」
「ええっちょっと!」
ヨジロウは思い切りわたしの手をつかむと、ずんずん鳥居をくぐってお社に向かって歩き出した。
「待って待って心の
そんなこと言っても、もうお
ヨジロウが突然わたしの手を離した。
「うわわっ」
ちょっとよろけて
「あっ待ってヨジロウ!」
そのお社の扉、開かないようにカギが閉まってると思うんだけど……
「ってええええっ?」
ヨジロウの手が、手が! 扉を突き
いや待って、よく見えてないだけかも……こ、こわいけど、ちょっと近づいてみよ。
お社の扉の上には、桜の花に似た形が
顔を近づけてみても、やっぱりヨジロウの肘から先が扉を通り抜けてるようにしか見えない。全然こわれてないのに、どうやって?
――ントさん――
え? 今女の人の声がしなかった?
――――をたのみま――
また聞こえた? でもこの声、わたし、前にも聞いたような気が……
「あった!」
「うわあっ!」
急に大声出さないでよ! ヨジロウのバカ! びっくりして
扉はピクリとも動かないし、もちろんこわれたり、開いたりすることもなく、まるでそこに扉なんてないかのように、ヨジロウの腕がするりと引き抜かれた。
その手には、小さくてきれいな、
細い木の、下の方がとがった
このお花って、あのお社の戸の上に彫られてるのと、同じかな?
「受け取れ」
ヨジロウはわたしにそのかんざしをさしだしてきた。
「え……えっと……いいのかな」
どろぼうになりません?
なんて考えながら、おそるおそる指先をふれる。
すると――
――ミントさん。
女の人の声がはっきり聞こえて、かんざしがまっ白に光りだした。
「わあっ!」
おどろいて手をひきそうになったんだけど、う、動かない! 手が……というか体が全部動かないんですけど!
――ヨジロウを、白花のさとを……たのみます。
誰?
声が出ない。あなたは誰なの?
まっ白だった視界の中に、ぼんやりと女の人……ううん、わたしとそんなに変わらないくらいの年に見える、女の子の姿が浮かび上がった。
お正月に神社にいる巫女さんみたいな格好をしてて、真っ黒な長い髪……顔はよく見えないけど、なんだろう、この気持ち。何だか、懐かしいような……。
そこで、光が急に収まって、女の子の姿も消えてしまった。もう、声も聞こえない。
「今の……? あれ?」
気付いたら、
「お前の
ヨジロウに言われて、あわててポケットからスマホを取り出して画面を見ると、
白い、桜に似たお花のアイコン。
まさかこれ……。
「よし、成功だな! これでこの札を持っているお前が、俺を従えることができるってわけだ」
「ええええ! こここ……え? どういうこと?」
「俺たちシキガミは、少しくらいなら自分の
「え? でもわたしに調伏師の力とか、そういう
「だから、その、俺の本来の調伏師である杏姫が、そのかんざしに
「よくわかんない」
「まあいいだろ、とにかくこれで、俺はお前と一緒にアヤカシと戦えるって言ってるんだよ」
一緒に……?
「ええええええっ! やだよこわいよ!」
「じゃあナツメの親のケガが、直らないままで良いのかよ?」
ううぅ! それは困ります!
「お前、そんな
何その
「ちがうよ! わかったよ! やるよ! やりますー!」
「よし! じゃあ戻ろうな」
言われて振り向くと、もえちゃんとナツメさんが、鳥居の向こうから心配そうにこっちを見ていた。
今でも十分こわいけど、これからが本番ってことだよね。……ああ、心臓止まりそう。
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