第24話
こんにちは!
私の名前はリーファです。
今日は、私の国から少し離れた、ディストピアという所に来ています。
これも、私たちのお姫さまであるアルシェ様の許可が出たからです。
小さい頃から、国の外へ行って旅してみたり、色んな人の役に立ってみたりしたかったので、かなりワクワクしています。
そして、今回お世話になるディストピアという所は、どうやら地下にあるようです。
このようなシステムは、私の国ではまず有り得ないものでした。
だって、地下に何かを作るとなると、自然が感じにくいじゃないですか。
一応エルフなので、太陽の光は浴びていたいです。
でも、今回ばかりはそんなことを言ってられません。
逆に慣れないことを体験することで、私自身も成長できると思います。
「リーファさん。ディストピアの中は広いですから、しっかり付いてきてくださいね」
「は、はい!」
リヒトさんは、素人の私をサポートしてくれる御方です。
なんと、新入りでありながら、このディストピアでかなり重要な役割を任されているそうです。
私なんかのサポートをさせて良いのかという疑問もありますが、これほど心強い御方はなかなかいません。
まだディストピアの入口ですが、ワクワクと緊張でおかしくなってしまいそうでした。
「この領域はヴァンパイアの人が守ってるので、コウモリがたまにいるかもしれませんけど、気にしないでください」
「はい! 分かりました!」
リヒトさんに言われて周りを見てみると、確かにぶら下がっているコウモリが何匹かいました。
ヴァンパイア――少し怖いですけど、これも経験です。
もしかすると、悪い噂が先行しているだけで、本当は温厚な種族なのかもしれません。
そんなことも、今回の派遣で学べたらいいなぁと思っています。
「あ、リヒトさん。あの御方は……?」
「あの人はロゼって名前です。とても仕事熱心なんですよ」
バタバタという足音の方向を見ると、私と同じくらいの女の子が走っていました。
重そうな荷物を抱えていて、何かを運んでいる最中だと見受けられます。
私の心にあったのは、ただただ尊敬の気持ちでした。
お母さんやお父さんのお手伝いはしていましたが、仕事と言われるとまだまだ家事の領域です。
同年代の女の子が、仕事としてこんなに頑張っているのですから、私も見習わないといけませんね。
まさか一つの領域で、ここまで刺激的なものが見られると思っていませんでした。
普通に歩いているだけで、やる気がどんどん倍増していきます。
あ。
でも、ヴァンパイアさんを見ることができなかったのは、ちょっとだけ残念です。
ロゼさんがヴァンパイア――というのは恐らく違うでしょうし、やはり忙しくてどこかに出てしまっているのでしょうか。
いつか、お話を聞かせてもらいたいものです。
***************
「ここは、イリスとティセが守っている領域です。同じエルフですから、この領域は気に入ると思いますよ」
「は、はい! 私、この空間が好きです!」
次に来たのは、地下であるにも関わらずかなり自然に溢れている領域でした。
私の国にも負けないくらいの自然です。
まさか、ここで花の匂いを感じられるとは思ってもいませんでした。
やはり、イリスさんもティセさんもエルフということで、私と好みが合いそうです。
「お姉さま、お客さんがいる。きっと助っ人の人」
「あら、ようこそいらっしゃいました。これからよろしくお願いしますね」
「こ、こちらこそ! よろしくお願いします!」
なんと、イリスさんやティセさんに話しかけてもらいました。
それどころか、挨拶までしてもらっちゃって。
普通なら会釈程度で済ませようとするものですが、かなり丁寧な御方のようです。
まさに、言葉では表すことができないほどの感動でした。
「……名前は?」
「はい! リーファっていいます!」
「うん。真面目な子。頑張って」
「――あっ」
イリスさんに頭を撫でられてしまいました。
何歳か年下の女の子ですけど、私よりも数倍貫禄があります。
これは、一生の思い出となる出来事でしょう。
頑張ってという一言は、お金なんかとは比べ物にならないほどの効果でした。
「ハーブティーもありますから、ぜひゆっくりしていってください。この道のりは大変でしたでしょうし」
「そ、そんな! 私なんかに、そこまでしていただかなくても!」
「リーファ。お姉さまの優しさだから」
「わ、分かりました。ありがとうございます!」
イリスさんに促されるまま、私はティセさんからカップを受け取りました。
名前を呼ばれたことで、少々ドキッとしてしまいましたが、一々高ぶっていてはキリがありません。
心を落ち着けるためにも、ゴクリとハーブティーを飲み込みます。
「――はぁぁ……」
「フフ、気に入って貰えたようで嬉しいです」
それは、ついついため息をこぼしてしまうほどの美味しさでした。
イリスさんがオススメしてくれる理由も分かります。
「ありがとうございました! このことは絶対に忘れません!」
「あ、あらあら……」
イリスさんとティセさんに見送られながら、私はさらに奥へ進むことになりました。
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