第80話 周囲の変化
翌日には叔母一家が私の家に引っ越してきた。
カンナおばさんはかなりクールな人だ。
あんまり感情を表に出さないから、ちょっと苦手。
でもでも、いい人なのは確かだよ。
私が魔法使えるようになったら、優しく頭を撫でて褒めてくれたの。
その時の笑った顔はとっても綺麗だったわ。
「ノアちゃん、何してるの?」
「カナモちゃん」
私に声をかけてきたのはカナモちゃん。
カンナおばさんの娘で私と同い年のいとこ。
カンナおばさんの子とは思えないほど感情豊かな女の子ってみんな言ってる。
ちゃんとそっくりなところもあるんだよ。
ときどき微笑んだ時の顔とかおばさんそっくりの美人さん。
すっごく大人っぽくてびっくりしちゃった。
「魔法の本だよ。ハヤト兄が私でもわかりやすい本を教えてくれたの」
「最近すっごくお勉強してるね。えらいえらい」
「もお~、同い年なのに子供扱いしないで!」
「だって、ノアちゃん小っちゃくてかわいんだもん!」
そう言ってカナモちゃんが顔をデレっとさせて抱き着いてくる。
確かに私は十歳にしては小さいけれど。
カナモちゃんだってそこまで大きいわけではないじゃない。
こんなもの誤差よ、誤差。
「五センチは誤差じゃないよ~」
「だから! 頭を撫でるんじゃない!」
カナモちゃんはこういうところを直してほしいといつも思う。
カンナおばさんを見習ってもう少し大人しくなってくれないかしら。
「カナモ、ノア。こちらへいらっしゃい」
私とカナモちゃんがじゃれているとカンナおばさんが来た。
私たちを呼んで何をするのだろう。
二人で顔を見合わせておばさんの後ろをついていく。
リビングでは家族が勢ぞろいしていた。
「みんな集まってどうしたの? それになんか暗いよ?」
「あなたたちにも関係する話だから呼んだのよ。とりあえず座りなさい」
ママにそう言われ二人並んで椅子に座る。
「ハヤト。この前の件から一週間経ったけど、何か変わったことはあるかい?」
「そうだね。街の人がよそよそしくなったかな。それに物を売ってくれなくなった。おそらく彼の父親から何らかの圧力がかかっているのだろうね。詳しい事情は教えてくれなかったけど、みんな申し訳なさそうにしてたよ」
「やっぱりかい……こりゃ困ったねぇ」
この前の件というと……アルトのことね。
やっぱり嫌いだわ、あいつ。
「それでもみんなこっそり食料とかくれるから、無理やり従わせられているんじゃないかな」
「それはわかるさ。街の人たちはみんな優しい方ばかりだからね」
「……そろそろ私たちも覚悟を決めるときね」
覚悟?
カンナおばさんが真剣な顔でそう言った。
一体何の覚悟を決めるのだろう。
「ついに国の上層部は本格的に森の攻略に踏み出したみたいだ。国中の冒険者や兵士、それに戦える全ての人間を集めると言っていた。おそらく東洋国家にいるすべての若い男は駆り出されるだろうね。その前にこの国を出るよ」
ママはいつになく真剣な表情でそう言った。
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