第73話 惨事再び
皆さん、こんにちは。お久しぶりです。
ユミエラお嬢様専属万能メイド――ミシェルです。
最近はいろいろとありましたが、そんなことより相変わらずお嬢様がお可愛いので、毎日が幸せです。
お嬢様も、アリアさんやカナリアさんたちと仲良くできてとても嬉しそうです。
眼福です。ありがとうございます。
それはさておき、私はいつものように街に行ってきました。
今日もお馴染みのおじさんが東洋国家から珍しいものを持ってきてくれました。
なんと、もち米です。
お米があったのでもち米もあるだろうとは思っていましたが、私の予想は的中ですね。
これでまたお料理の幅が広がります。それにお菓子も。
大福やお団子、お汁粉にお雑煮など。
あぁ、懐かしきモチモチ。想像するだけでよだれが。じゅるり。
早速帰ってお菓子作りです!
…………そう思っていたのですが。
「……一体、何をなさっているのですか?」
家の前でアリアさんとカナリアさんが魂の抜けた表情で体育座りをしていました。
よく見ると聖樹の周辺には動物たちが怯えたように固まっています。
それとシュウさんら騎士の方々が見当たりませんね。
一体どこに行ったというのでしょうか。
「……あ、ミシェルさん。おかえりなさい………」
「……おかえり…………よく帰ってきてくれたわ……少し遅いけど……」
「え……ちょっと、やめてください。そんな目で見ないでください」
なんだか少し怖いです。
声からは覇気を感じられず、恐怖と期待が入り混じった瞳で私を見つめる二人。
ほんと……どうしたというのですか。
「さあ……中へどうぞ……あなたなら、大丈夫、です……」
「……そうそう……あんたなら、大丈夫。……頑張って……お嬢様を……」
「……なんだか嫌な予感がしてきました」
いつの日だったか、私が街に出かけたときにも酷い事件が起こったことを思い出します。
あの時はお嬢様お一人でしたから、自由にしていましたが。
今は大丈夫ですよね。そんなことしませんよね。
アリアさんたちもいるし、何よりあれだけお説教したのに反省してないなんてことは。
信じましょう。
可愛くて愛らしい我が主を信じることにします。
いざ!!
「こ、これはっ!?」
死屍累々。
そうとしか表現できませんでした。
よく見たらシュウさんたちでした。
ダイイングメッセージのようなものまで書かれているとは、迫真の演技ですね。
素晴らしい出来です。拍手。
…………いえ、現実逃避はやめましょう。
だって…………テーブルの惨状を見ればわかります。
無色透明。
色という概念を何かに奪われた巨大なスライムがいました。
皿の上に。
「――ふんふふ~ん♪」
キッチンから上機嫌な鼻歌が聞こえてきました。
この惨状を生み出しておいてどうして鼻歌なんてできるのでしょうか。
それに本当に教えてほしいのですが、どうやったら色がなくなるのですか!?
一体何をしたらそうなるのですか!?
むしろ私がご教授願いたいくらいです!
そんなことより、そろそろ止めましょう。
覚悟はできました。
――――お説教の時間です!!!
「…………お嬢様」
「? あら、ミシェル。おかえりなさい」
花が開いたような満面の笑み。
思わず心が揺らいでしまいます。
ですが、今日は! 今日だけは、心を鬼にするのです、ミシェル!
「み、ミシェル? ど、どうしたの、そんな怖い顔して。ほ、ほほら。笑って~…………にこっ?」
「――――お説教です!! そこに直れ!!!!!!」
「ひぃっ! い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
お嬢様も絶叫が森の中に響き渡りました。
皆さん。食材は大事にしましょう。
無色透明な料理なんて作ってはいけませんからね。
怒られて憔悴したお嬢様を膝枕した私は、怒り疲れた心を癒すことができました。
幸せです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます