第12話 食料問題
森に来てから一週間は私たちの生活水準の向上に努めました。
家を建てたのはいいのですが、食料や水の確保も重要な事でした。
なので私たちはお散歩がてら家の周囲の動植物の把握をすることにしました。
「水は聖樹の周囲に池があるので大丈夫です。水質に問題ないことも確認済みです。それに私が水の大精霊と契約しているので特に気にすることはないでしょう。しかし、食料に関しては違います。これはいくら精霊と契約をしても、なくなればそれまでです。なので家の裏に家庭菜園を作ります。それ以外のものについては森の中で収穫しましょう。周囲に何があるのか把握するのも冒険者の務めです。これが出来なければ聖魔の森の探索などできないと思ってください」
これはミシェルが私に言ったことです。
周囲の環境把握が出来なければ冒険もさせないなどと。
いいでしょう。完璧にこなして見せますとも。
こう見えて元は次期王妃。自分で言うのもなんですが優秀なのですよ、私。
そうして一週間、カイとティアを伴って周囲のお散歩をしたのです。
その成果もあり、周囲の薬草や果物は完璧です。これでハーブティーに困ることもないでしょう。
しかし、やはり問題はお肉ですね。
私の力で周辺の動物たちとは仲良くなりました。そのため、狩りをすることができなくなりました。
後悔はありませんが、お肉を食べたいときというのはあるのです。
現に今もお肉を欲しています。ハンバーグがいいです。
ハンバーグはミシェルの記憶にあった料理で、とても美味しいのです。
カイも肉食なのでお肉はとても重要なのです。
私とミシェルはその問題を解決すべく、現在会議を行っております。
「一番は動物を狩ることなのですが。そうなると少し離れた場所に行かないといけません。お嬢様が誰彼構わず篭絡しなければよかったのですが」
「ミシェル、私をそんな手の早い女とでも思っているのかしら? ちゃんとお話をしてお友達になっているのですよ」
「しかし、そのせいで今肉不足となっているのですが」
「ぐぬぬ」
「ぐぬぬとか言う人初めて見ました」
「そんなことはどうでもいいのよ。とにかく、お肉を確保しなければならないわ。狩り以外で手っ取り早いのは?」
「お嬢様が自分で言ったのに。――そうですね。狩り以外ですと、街に行くとかですかね。正直買った方が早いです。解体しなくて済みますし」
「やはりそうですか。人との関りを減らそうとしていたのに、ここでその問題が浮上してくるのですね」
「別にいいのではないですか? ここはクィンサス王国からは遠いですし、あのクソ王太子に見つかることはないと思うのですけど」
「……ミシェル。あなたは大事な事を忘れているわ。街に行くということは、ティアもつれていくのですよ。それにカイも同行するでしょう。この意味が分かりますね?」
「……厄介事のオンパレードですね。確かにそれは面倒です」
そう。
カイは神獣。ティアは精霊王です。
見つかったら大変な事になるとかそういう次元ではないのです。
そうでなくてもティアは天使のように可愛くて女神のように美しいのです。
変な男が寄ってきたらどうするというのですか!
『主よ、我は体の大きさを変化できる。故に街の中ではぬいぐるみに徹することで誤魔化せるのではないか?』
「そんなことができたのですね。しかし、神獣の力を抑えることはできますか?」
『ムムッ。……それはもう少し大きくなったらできるはず。でも今の僕じゃできない……』
「そのように俯く必要はありません。あなたはまだ子供なのです。これからできるようになればいいのですから。ほら、元気出して」
カイがしょんぼりしてしまったので、撫でます。
決して私が毛並みを堪能しようとしているわけではございませんから、悪しからず。
『それなら、あたしが力を抑えてあげるわ。そうすれば問題ないでしょ』
「ティア、あなたは存在自体問題なのです」
『そ……存在自体……問……題……』
「お嬢様、ひどいですね。直球にもほどがありますよ」
「ち、ちがっ。そうじゃなくて。存在が問題って言うのは、ティアがきれいな女性だからで、決してあなたが悪いとかそういうことではないですよ!」
『……ぐすっ……ほんと……?』
な、何でしょうかこれは。なんだか動悸が激しく……。
ミシェルはなぜか鼻血を吹き出して、倒れています。
血で何か書いて……えーと、何でしょうか? と、う、と、い?
……放っておきましょう。
「もちろん本当ですよ。ティアが可愛くて美しい女性ですから、変な男たちが大量に寄ってきてしまうのではないかと心配しているのです」
『そ、そうなのね! べ、別にそんなに褒めたってなにもないわよっ。それに、泣いてないんだからねっ』
しかし、いい案が出ませんね。行き詰まってきましたし一旦休憩しましょう。
「ほら、ミシェル。起きなさい。私、紅茶が飲みたいわ」
「かしこまりました! 最高の紅茶をお淹れ致します!」
鼻血を出していたのに、ミシェルの顔をどこかつやつやしていました。
さて、一息入れて、もう一度考えましょうか。
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