スーパーメトロイド

 パワードスーツを身にまとった主人公を操作し、多種多様な生物から成る宇宙海賊を倒しながら、迷宮のような惑星ゼーベスを探索していく2Dアクションゲーム。メトロイドシリーズの第三作。

 ちなみにメトロイドというのは主人公の名前ではなく、クラゲのような姿をしている人工生命体の名前。主人公の名前はサムス。ゼルダの伝説のゼルダは主人公ではなくお姫さまの名前。フランケンシュタインのフランケンシュタインは怪物ではなく科学者の名前。どうでもいいか。

 とにかく雰囲気が硬派なゲーム。オープニングでそれまでの経緯や状況を主人公のサムスが長々と語ってくれるが、その後はまったくセリフなんてない。無言で黙々と戦い続ける。無言で黙々と探索していく。静謐さと緊張感をただよわせる音楽だけが、寡黙な主人公に代わって情緒を語る。そこに痺れる。ハードSFみたいな無機質さがある。ブライアン・オールディスの『地球の長い午後』みたいな筆致で、だれかノベライズ本を書いてほしい。人間ドラマとかは極力排して、惑星の異様な風景や生態系を延々と描写していくような、そんなマニアックなノベライズ本を読みたい。だれか書いてくれ。

 言葉による説明はなくても、トラップや謎解きを含むマップ構成や、サイレント映画のように絵面だけで語るイベントで、ドラマ性は十分に豊かだ。マグマに落ちて死んだと思ったボスが、溶けて骨と化してもまだ襲ってくる! と思いきや、やっぱり崩れ落ちてしまう場面。主人公を母親と勘違いしてなついているメトロイドが、殺されかけた主人公を身を挺して庇ってくれる場面。などなど、忘れがたい演出が数多ある。マザーブレインというラスボスとサムスの戦いは、なんとなく『エイリアン2』のエイリアンクイーンとリプリーの戦いを連想させる。

 難易度も謎解きも歯ごたえがあり、手探りでおっかなびっくり試行錯誤しながら、やっと正しい道を発見できたときは、なにものにもかえがたい喜びがあった。いまとなっては、詰まると攻略サイトにすぐ頼るような、軟弱なゲームプレイヤーになったけど、やっぱり自分で発見した方が記憶には残る。ガラス張りの円筒のような通路を歩きながら、「このガラス割れないかなー」と考えてパワーボムを使ったら、見事にひび割れて砕けたときなど、声を出して驚いてしまった。

 ずいぶん昔にプレイしたゲームだけど、いまもまざまざと、その濃密な旅を思い出せる。善きゲームは、善き記憶になってくれる。それだけで、自分にとってゲームは意味がある。別に役には立たなくても。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゲームの離人感 koumoto @koumoto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画