第327話Ⅱ-166 神殿突入1
■ネフロス国 鉱山
シンディと一緒に戻って来たのは11人の猿人だった。鬼に6人殺されて、数名はどこかに隠れているらしい。戻って来た猿人には出来る範囲で治療をしてやり、美味い肉を振る舞ってやった。猿人たちは生でも食べられるらしいが、焼いた肉の方がおいしいのは俺達とおなじだった。
ドリーミア出身の鉱夫とメイも交えて焼肉を全員で腹いっぱいになるまで食べて、早めに寝ることにした。とはいっても俺はストレージの中で準備を整えることは怠らなかった。明日使う可能性のある武器や装備を人数分用意しておく。最近は使い慣れた武器を無意識で取り出せるぐらいになっているが、弾薬の整理と補充はやはり欠かせない。それにシンディ達にはお礼の品を置いて行かないといけない。
-備えあれば憂いなし。
明朝は日の出とともに出発して、神殿の1.5km地点から迫撃砲を撃ちまくった。地上にある神殿の入り口へ50発撃ちこんだ後に火山の中腹にある“
鉱山に居た兵士から聞いた情報では、神殿の兵士は全て
という事で、“
-殺さない範囲でダメージを与えるしかない。
「じゃあ、迫撃砲は二人に任せるから、ゴーレムのあたりを適当によろしく」
「はーい♪」
サリナが取り出す砲弾を俺に変わってミーシャが発射管に落としていく、着弾地点を上空のドローンからモニターで観測してサリナが微修正を行う。二人にはこれを繰り返して神殿の入り口へ敵の意識を向けさせている。
俺はドローンのリモコンを10台並べて10機のドローンを順番に飛ばしていった。目標は迫撃砲の破壊で大岩が吹き飛んだ“
10機全部を入り口でホバリングさせて、最初の1機を中に突入させた。薄暗いが何とか中の様子がモニター越しに見えて来た。入ってすぐの両側に部屋があったが、どちらも瓦礫の山になっていて人は居なかった。さらに奥へ進んで行くと、突き当りの部屋で大勢の人が動いているのが見えた。鉱山や農場で倒した兵士とは違って長いローブのような服を着ている奴-神官? 魔法士?が大勢いる。ここを狙えば良さそうだった。時間も良い感じになって来たので、次のドローンのリモコンに持ち替えて中へ送り込んで行く。2機目が奥の部屋へたどり着いた時に1機目のC4が爆発した。3機目のカメラで見るとドローンも爆風に煽られて吹き飛んだ。少し火薬の量が多すぎたかも・・・、まあ過ぎたことは仕方ない。神官長が生きていることを祈るだけだ。
ショットガンの弾薬を積んだドローンを先に、続いて催涙弾ドローンを連続で奥まで突っ込ませる。土埃のために10番機のカメラでも確認できなかったが、しばらく待っていると崖の割れ目から煙が出てきたので、俺の想像通りなら生きている人間は中で涙を流して悶絶しているだろう。
「よし、準備完了だな。みんな車両に乗ってくれ。シンディ達はここまでで良いよ。今までありがとう。食べるものは置いて行くから、皆でケンカせずに食べてくれ」
-キイッ!? キェイゥッ! キァァウ!
メイと鉱夫を装甲戦闘車の兵員室に入れて、猿人たちとお別れしようとしたが、シンディはチタン棒を振り回して、何かを伝えようとしている。俺にも何となく判った。
「何だ?一緒について来るのか?神殿の中に入るから危ないぞ?」
-キィーゥチ! キャァアーィ!
「そうか、じゃあ、一緒に行こうか。俺達の後ろに居てくれよ。間違えて撃つと危ないからな」
-キィゥ!
シンディは嬉しそうにチタン棒を持ち上げて了解した旨を伝えてくれた。相手が言葉を理解してくれていると信じれば、何とかコミュニケーションはとれるものだと自分で感心した。
「さて、じゃあ、いよいよだ。二人とも油断しないようにね!」
「うん!大丈夫!」
「ああ、決して油断はしない」
何故かついて来る猿人たちを従えて装甲戦闘車を神殿に向かって発進させた。
■ネフロス神殿
“
外から響く轟音の所為で部屋に入って来たドローンのプロペラの音には誰も気が付かなかった。1機目のドローンが天井付近で爆発した時に部屋の中には30名近い人間が居たが、爆風と轟音で吹き飛ばされて、ほとんどの鼓膜が破れていた。サトルは爆弾を少なくしたつもりだったが、天井が高くない空間で使う爆薬の量としては多すぎたのだ。
それに対して地上の神殿は内部の被害は殆ど無かった。入り口の守備隊は迫撃砲を避けるために神殿の中に引き上げさせてゴーレム2体だけで警戒している。ゴーレムも迫撃砲で何度か破壊されたが、魔法士達の力でその都度修復してある。
「あいつらの緑の箱が近づいておるぞ! 引き付けてから次のゴーレムも立ちあげるぞ!」
土魔法士のリーダーが水晶球でサトル達の動きを見ながらゴーレムの
サトル達の装甲戦闘車はゴーレム迄500メートルの距離になったところで、対戦車誘導弾を発射した。サリナが正確に狙いを定めた右側のゴーレムへ吸い込まれるように成形炸薬弾が命中し、轟音を上げながらゴーレムの上半身を粉砕した。
「クソォ! 盾のゴーレムを立ち上げるのだ!」
土魔法士はゴーレムの追加が遅れた事に気づき、慌てて2体のゴーレムを立ち上げた。粉砕された剣のゴーレムよりもはるかに大きいゴーレムが右手に光る盾を持って現れた。ゴーレムは3体になったところでサトル達に向かって突撃を始めた。地響きを上げながら密林の樹々をかき分けて走って行く。
「
「しかし、兵士長からの指示がありません」
少し前からに“
「構わぬ!今しかないのだ!ゴーレムと一緒に戦えば落とされる可能性も低くなる」
「・・・わかりました」
兵士長不在の中で最古参となる兵士が頷いて、
「サトル、こっちに来るよ」
「そうだな、盾を持っている新しいゴーレムみたいだな」
「どうするの?」
「一応、距離を取りながら撃って行こう。サリナは撃てる時にいつでも撃ってくれ」
「はーい♪」
「ミーシャも新しいので構えておいてくれ」
「そ、そうか。まだ、撃ってはいかんのだな」
「うーん・・・、昨日の鬼が出てくるかもしれないからな」
「わかった・・・」
ミーシャは俺が使い方を説明した新し武器を撃ってみたくてうずうずしていたが、我慢してもらうことにした。新しいゴーレムも気になったが、走る速度は装甲戦闘車よりも遅いので、後退しながら撃つことが出来る。それよりも、昨日の鬼が気がかりだ。昨日の3匹で終わりなら良いが・・・。俺は後方を確認せずに装甲戦闘車を後退させながら周囲の警戒を続けた。
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