第15話 夜明けの遭遇戦
急発進した車は全てのライトを点灯し迫り来る騎馬に向かって突進した。
強烈な閃光に目が眩んだ馬は暴れ出し、騎乗の盗賊を振り落とした。
振り落とされた盗賊を無視して馬車を追いかける。
「アイリス、今のうちに助手席に」
膝の上に居る為、ハンドルが上手く操作出来ないので助手席に促し、馬車を追う騎馬に接近した。
後ろを振り返った盗賊は閃光に目が眩み馬車を追う足並みが乱れる。
つかさず、クラクションを鳴らしながら肉薄した。
闇を切り裂く様なヤンキーホーンに馬は暴れ出し盗賊達は次々と振り落とされて脱落する。
2人ほどタイヤに巻込まれて、腹下で「ゴンゴン」と音がする。
馬車を追う盗賊は残り一人、激しく暴れる馬を懸命に押さえ込もうとしている。
馬車も馬が暴れて横倒しになっていた。
暴れる馬を何とかしようとする盗賊に小次郎は容赦なく突撃し、車体側面で撫でるように馬ごと撥ね飛ばす。
跳ね飛ばされた盗賊は骨折したのか、苦しみもがいていた。
「アイリス、盗賊は殺しても罪には問われないよな?」
瞬時に殺害を決意した小次郎に目を大きく見開き、驚きを隠せない様子では有ったが『はい、逆に賞金が出ます』と答える。
さらに『ただ、生け捕りにした方が貰えるお金は多くなります』と続けた。
倒れた馬車の近くに車を止め、リモコンで盗賊たちにスポットライトを照射して見やすくしてから荷室から刀を取り出した。
荷造り用の紐玉を持って車外に下りた小次郎は
「もし、盗賊達が起き上がったり逃げ出そうとしたらこのボタンを押して知らせてくれ、さっきの大きな音が鳴る」
そう言い、返事も聞かずに鞘を抜き捨てて駆けた。
もがく盗賊に声も掛けず、顎を蹴り上げ動かなくなったのを確認し、手早く捕縄を打ち次の捕縛先を探す。
すると、後ろからクラクションが鳴った。
辺りを見渡すと最初に振り落とされた盗賊の内1人が起き上がって居るのが見えた。
少し遠いが構わず駆け寄ろうとすると横合いから唸り声を上げて別の男が斬り掛って来た。
大声を上げて斬り掛かる盗賊の剣は大振りで動きが丸見えだった。
刀を盾にして受け止める様に立て、剣と刀が当たったと思った瞬間、盗賊の目の前から小次郎の姿は消えていた。
「□□□□ー」
盗賊の絶叫が夜明けの空に響き渡った。
小次郎に腕を斬り落とされたのだ。
腕を斬り落とされた盗賊は訳が解らなかった。
確かに渾身の一撃を叩き込んだ筈だった。
妙な形の剣で防ごうとしたが、それごと叩き斬るつもりの一撃だったのだ。
それが当たったと思った瞬間、目の前に居た妙な男が消え去り右腕に凄まじい熱さを感じた。
腕を見ると・・・右腕が無くなっていた。
腕から血を噴出しながら転がる男を小次郎は無情にも蹴り上げる。
2回、3回・・・反応が無くなった事を確認して捕縛する。
無くなった腕の切り口も血止めの為に縛り上げる。
縛りながら離れた場所で起き上がっていた男を確認すると仲間を抱えて逃げようとしているのが見えた。
気絶した仲間を背負いながら逃げる賊に駆け寄り追い抜き様に後ろから足を切り払った。
絶叫を上げるのを無視してまた蹴り上げる。
結局、捕縛した盗賊は4名に上った。
車で轢き殺した者を合わせて6名。
辺りを見回して動くものが居ない事を確認した後、車へ戻った。
運転席のドアを開けるとアイリスが飛び出して抱き付いて来た。
体は小刻みに震えていた。
「ごめん、アイリス・・・怖い思いをさせてしまったな」
アイリスは答えず、ただぎゅっと背中に回した腕に力を入れるのみだった
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