連作短歌「20の東京幻想」

猫村まぬる

001~010


001 詠題:『先頭 』と『ピンク 』


 窓も屋根もシートも運転手の髪もピンクのメトロの先頭車両



002 詠題:『ある朝 』と『腕 』


 ちゃきちゃきのアサクサ・ニンジャが凄腕のカンフー・ガールと眠るある朝



003 詠題:『先頭 』と『私語 』


 先頭の列でわたしと私語してた君の呪文で開け赤門



004 詠題:『ぶらんこ 』と『素数 』


 タワーからツリーへ空中ブランコで跳び移る江戸っ子の七五三



005 詠題:『草 』と『きゃぴきゃぴ 』


 草不可避百万人のアイドルと踊るきゃぴきゃぴきゃぴたるシティー



006 詠題:『オレンジ 』


 オレンジを齧って歩こうガウディも牛も行き交うスペイン坂を



007 詠題:『界 』と『バイト 』


 魔界から留学してきた魔女っ子がバイトしている池袋ブクロのファミマ



008 詠題:『航路 』と『雷 』


 仲見世から門をくぐって大川へ大洋航路の汽船が出た日



009 詠題:『島 』と『論 』


 論語読み論語知らずの論議ヌスやりきれないね湯島聖堂



010 詠題『怖い 』と『太朗 』


 真夜中の九段の森で「サクラサクライザマイアガレ」って聴こえて怖い



(011へ続く)


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