第18話 決戦前日譚、その8~最後の晩餐~

パチッパチッと薪の火が爆ぜた。


今パーティーは明日の戦いについて話していた。





ベータはその様子をこっそりとヴィジョンで撮っていた。


すぐにアルファは気付いたが、ベータは口に指を当てて首を横に振りながら睨んだ。


それだけでアルファは何も言わずに黙った。








「明日は激しい戦いになる。この中の一人は確実に死ぬ事になる。だから今の内に言っておきたい。みんなここまで本当にありがとう」





彼が珍しく神妙な顔で言った。


その事実でメンバーは本当に明日は危険なのだと分かった。








「その…誰かが死ぬ事は確実なんですか?」





アリシアが遠慮気味に聞いた。








「確実」





ベータが簡潔に答えた。








「ベータが言い切ったって事は…予知か?」





ホレスも厳しい顔で聞いてきた。








「詳しい事は言えないわ。でも、そうねこれだけはみんなも知る権利があると思うわ。明日、人類の運命が決まる戦いが起こる」





アルファは少し悲しそうな顔で言った。








「そんな、嘘でしょう?」





レーナは信じたくないと言いた気な表情で聞いた。だが答えは残酷な物だった。








「明日は勇者か我々の中の誰か、どちらかが必ず死ぬそういう運命なんだ。勇者を救うには我々の中の誰かが死ぬ必要がある。そうだろ?ベータ?」





彼は片目を瞑りながらベータに聞いた。








「…嘘は言ってない」





ベータはいつもにもまして不機嫌そうに答えた。








「で、だ。そもそも我々の目的は何だった?」





彼がおどけて聞いた。








「勇者を助ける事だ」





ホレスが答えた。








「そうね、私達は最後の希望となる勇者を助ける為のパーティー。ここまでの冒険も全て、勇者の為だったわ、時々忘れそうになるけど」





珍しくレーナが軽口を言った。








「あの、本当に勇者しか倒せないんですか?その魔王とやらは…正直このパーティーなら…」





アリシアの言葉を遮るようにアルファが言った。





「駄目ね、残念ながら勇者しか魔王に対して有効な攻撃手段を持ってないの」








パーティーはシーンと静かになった。その沈黙を破るように彼は明るい声で言った。





「だから、今日は誰かの最後の晩餐って訳だ、さぁ飲もう!」





ドンっとどこから出したのか、酒瓶がみんなの前に出された。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る