君が星こそかなしけれ

リリー

第1話 ターミナル、僕と彼女。

 ふと車窓に目をやると、そこには数多の星が広がっている。目の前には、僕をずっと苦しめてきた女の子がいて、笑顔でこちらを見つめてくる。彼女は七年前に命を絶っていた。自らの手で。この国では、年にたくさんの人が自らの手で人生を終わらせてしまうのだと聞く。そのほとんどは世の中には知らされない。彼女の場合はというと、若くて顔が可愛いという理由だけで多くの同情を得た。それだけだった。すぐさま彼女の死は消費された。生き残った、沢山の無関心な人の正義感によって。

 彼女が死ぬところを僕はこの目でしっかりと見てしまっていた。画面越しに彼女の弱々しい涙が映っていた。彼女を殺したのは僕だと、そう思ったままこの七年間を生きてきた。そんな彼女がいま、七年前、あの死んだときの服、髪型、化粧、年齢、で僕の目の前にいる。彼女が目の前にいるというそんな不思議な状況を飲み込めているのは、なぜなのだろうか。僕は問う。

「この鉄道は一体何なんだ?」

彼女は笑って、さも当たり前かのように答えた。

「銀河鉄道だよ。綺麗だよね、星空って」

そういうと彼女は、どこかで聞いたことのあるメロディを口ずさんだ。生憎、日本のロックバンドはほとんど知らない。その代わりに、僕は宮沢賢治の物語を思い出していた。

『銀河鉄道の夜』は、中学生の頃に読んだ。

序盤の陰鬱な空気感が嫌いだったからこそ、鉄道にのる二人の独自の世界観がたまらなかった。いつか乗ってみたいとは思っていた。宮沢賢治の中では、僕は『よだかの星』が好きだった。高校生の頃のある退屈な授業中に、電子辞書の中に入っていたものを読んだ。引き込まれた。当時はあんな美しい死を、神様に願っていた。もしいま僕たちが乗っている電車が本当にサザンクロスを目指す銀河鉄道なら、そうか、僕は、彼女と同じ道を辿ってこの列車に乗り込んだのだろうな。

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