茶色くて丸いおみやげ
「このまるいのなぁに?」
ブチもようのちびネコ・リンが、ぼくの持って帰ってきたお土産を前に茶色い目を丸くする。
すんすんと土の匂いを
「どんぐりだよ」
「どんぐりってなぁに?」
木の実だと教えてあげても、リンは「ふぅん?」と言って首を傾げてしまった。
まだ散歩に出して貰えないから、家の外の世界のことを良く知らないのだ。出会った時も段ボールの中だったしね。
そんなリンは順調にすくすくと育っていて、こうしておしゃべりも出来るようになってきた。体のサイズもそのうち追い抜かれてしまうだろうな。
ただ、元気過ぎてスリッパとかソファとかカーテンとか、とにかく家じゅうのものをボロボロにするし、ぼくにも「これなぁに?」、「なんで?」攻撃が凄くて相手するのが大変だ。
これ以上大きくなる前に、少しは大人しくなってくれると良いんだけど……無理かな?
「リン、ナオ。少し借りるわよ」
「あ、りんのー!」
そうこうしている間にママさんがやってきて、転がっていたどんぐりを拾い上げる。
リンはオモチャを取られると思って慌てたけど、ママさんは優しくその頭をなでながら理由を教えてくれた。
「あらあら、取ったりしないわよ。サッと
どんぐりの中には虫が入っていることも多いからだ。
言葉だけでは良く分からないだろうと、きちんと茹でるところも見せてくれる。もちろん、離れたところからね。
ショータが何年か前にたくさん拾って帰ってきた時も、こんな風に茹でてからコマにしたりして遊んでいたっけ。あれ、また作ってもらおうかな。
くつくつと泡が鳴る銀色の鍋の中で、リンの目にそっくりなどんぐりが浮いたり沈んだりするところは面白い。リンもじーっと見つめていた。
「おそとにはどんぐりもっとある?」
「あるよ。いっぱいね」
どんぐりの他にも、秋の町には落ち葉やまつぼっくりもあって楽しい。
また持って帰ってきてあげるよと言うと、リンは「おそといきたい」と不満そうに鳴く。
「もっと大きくなったらね」
「もっとって、なおくらい? じゃあもうすぐだ」
リンはちょっと失礼なことを言ってから、背比べをするみたいにすりすりと体をすり寄せてきた。
……そうだね、早く一緒にお散歩できるようになると良いよね。ぼくも待ってるよ。
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