第12話 草もち
4月。春です。花ほころび、草芽吹く春。
我が家の庭や畑にも、そのへんの道端にも、美味しそうな草が生えています。こりゃ草もち作るしか!
市販の草もちも美味しいのですが、結構乾燥させた草を使っていることが多いんですよね。関東ですと3~5月の新緑の頃、生の草を使って作る草もちは味も香りも段違い! そして我が家流の草もちは着色料なしでも見事に鮮やかな若草色になります。持参した先で毎度ものすごく驚かれるんですよね。
あ、でもよもぎハンドブックによると、6~7月あたりのよもぎがいいらしいですね。産毛が落ちて舌触りがよくなるらしい。
というわけで、草を摘みます。草もちに使うのは、
とりあえず、蓬は18cmのボウルに一杯くらい摘んでおきましょうか。色鮮やかな草もちを作りたいなら葉を、香りを重視したいなら茎も一緒に摘んで集めます。茎も根元に近いほど香りが強いです。できるだけゴミや枯れ葉が入らないように気をつけながら摘みましょうね。あとが楽です。
摘んできた蓬は、まず水洗いします。泥や異物をここでも徹底的に取り除きます。
その間に、鍋にたっぷりめの水を入れて火にかけ、沸騰させておいてくださいね。
鍋のお湯が沸騰したら、蓬を投入。そのお湯が再度沸騰したら、今度は重曹を入れます。小さじ半分から一杯程度かな~。菜箸でかき混ぜて重曹を溶かしてから、一分くらい茹でます。ここでもまだ異物が見つかったりするので、がっつりしっかり取り除きます。
これで『茹で』兼『あく抜き』完了。茹で上がった蓬はザルにとって水にさらし、しっかり水気を絞ります。
水気を絞った蓬をまな板の上に乗せ、ひたすら刻みます。蓬って繊維がすごいんですよ。その繊維をできるだけ細かく刻むために、ネギトロでも作ってるんですか? ってな気分になるくらい延々と包丁を小刻みに叩きつけていきます。もちろん一方向だけではなく、縦横無尽に。刻んだものをひっくり返して、裏面もしっかり、執拗なくらいに。もちろん、ここでも異物が見つかったら取り除きますよぉ。
今度は蒸し器を準備。鍋にやはりたっぷりめのお湯を沸かしておきます。
さて、おもち本体の準備にもとりかかりましょうね。
もちと言っても、我が家ではもちそのものではなくて上新粉を使っています。うるち米を粉にしたもので、だんごの材料なんかに使う、ちょいと粗めの粉ですね。
今回は蓬を18cmボウルに一杯程度摘んできたので、上新粉は200gくらいが妥当かな。乾いたボウルに上新粉を入れて、お湯を少し入れて菜箸でかき混ぜます。そうねぇ、最終的には150~200ccくらいのお湯を使うことになるのですが、4~5回に分けて入れていきます。入れては混ぜて、やけどに注意しながら手でこねて……で、上新粉の生地が耳たぶくらいのかたさになったらOKです。柔らかくなりすぎたら、上新粉を足してくださいね。
それをピンポン玉くらいの大きさに分けます。握るなり平べったくするなりして、火が通りやすいように生地を薄くします。蒸し器の鍋のお湯が沸いたら、ふきんなり蒸し器用の網なりを敷いた蒸し器本体に上新粉の生地を入れて、中強火で30分ほど蒸します。
さてさて、その間に蓬をさらに細かくしますよぉ。
大きめのすり鉢とすりこぎを用意します。そこにひたすら刻んだ蓬を投入。繊維を細かくすべく、ただひたすらすり続けます。葉っぱだけなら楽なんですけどね。茎入りだと終わりが見えない。
目指せ蓬ペースト! 道は長いぞ~!
へとへとになった頃、上新粉が蒸しあがります。そのアツアツの生地をすり鉢に投入! 蓬と混ぜていきます。
最初はすりこぎで押したり
均等に混ざったら完成。
あんこを包むなら、あんこ玉をあらかじめ準備しておいて、出来上がった草もちがまだあたたかいうちに包みます。冷めるとどんどん固くなるので、早めにね。
きな粉でシンプルに楽しみたいなら、我が家ではこんなやり方を。
直径2~3cmくらいの棒状に伸ばしつつ、それを濡らしたお箸で適当な長さ(やっぱり2~3cmくらい)で挟んで切っていきます。そのとき、お箸の角度を90度回転させるんですね。最初、テーブルに対して垂直に立てたお箸で挟んで切ったとしたら、二度目はテーブルに平行に。そうすることで、ひし形っぽい仕上がりになって、きな粉をつけるのもちょいと効率がよくなる気がします。見た目もほんの少しお洒落。
きな粉には、お砂糖とほんの少しのお塩を加えて召し上がれ。
あー、書いていたら草もち作りたくなってきた! ということで今回はこれまで。ご質問やわかりづらいとことがあれば、ぜひコメントをください。
もし蓬が余ったら、茹でた蓬を冷凍保存しておけばシーズンオフでも楽しめます。お試しあれ。
ここからは余談ですが……。
平安時代からすでに薬草として使われていた蓬。クロロフィルや鉄分たっぷりの蓬には、血液サラサラ効果や造血作用の促進、コレステロール値の低下、デトックス効果も。
別名『血止め草』。ちょっとした出血だったら、蓬の葉を貼れば止血してくれますよ。
たっぷり繊維で便秘解消も見込めますし、血行が良くなることで冷え性対策にも。ビタミンB類やCの含有量も多く、沖縄では風邪をひいたら蓬のお粥『フーチバー』を食べて治すと聞きます。
食べなくても蓬は有用。乾燥させた蓬を袋に入れて肩や首、腰などの下に敷いて寝ると、ポカポカ温まってこりがほぐれる効果もあります。ほぐすといえば、5月に収穫した蓬を乾燥させて産毛を集めたものが、お灸などに使う『もぐさ』ですね。
それから天然の界面活性剤としても最強の部類に入る蓬。水中メガネをつける前に蓬を内側にこすりつけておくと曇り止め代わりになるし、キャンプなどでも食器洗いの洗剤代わりに使えたりします。実際、摘んだ蓬を何度か水洗いするだけで、手についていた油分が流されていくのを実感できますよ。
日本ではそこらじゅうに生えている蓬、地味にすごい植物なんです!
おっといかんいかん、熱く語りすぎました。これは日本のハーブの女王を宣伝する小説じゃないっつーの……。
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