激情

薄暗い中で二つの焔が燃え盛る

余りにも叫び過ぎて嗄れている筈なのに

まだ微かに開いた口から声が漏れて来る

目から枯れ果てた筈の涙もまだ流れてくる

身体が…燃える様に熱い…

脳裏に微かに過る疑いを必死に拭い去ろうとしてか、動きも止めない

耳から注ぎ込まれた声が頭の中で残響となる

これ以上続けたら壊れそうになる位

散々一つになってるというのに

この不安は一向に消えそうにない

どんなに願っても

永遠に一緒には生きて行けない

いつかは生死によって引き裂かれる

どちらかが…遺されてしまう

それが嫌でも分かっているから

今を必死に生きている

頭の中には未来はない “今”しか存在しない

頬を紅潮させた二匹の獣

光る汗を迸らせて

互いの匂いに包まれながら

体温を伝え合い

皮膚の感触を確かめ合う

固く手指を絡ませ合ったまま “存在”という名の符号を互いの身体に刻み付ける

嗚呼…今はまだ生きている

明日はどうなるか分からないけど

今は生きている

好きで好きで仕方が無い

離したくない 離さない

燃えて燃えて 離れ離れにならない様に

このまま蝋燭みたいに溶けてしまえば良いのに…

愛しい細胞の一つ一つ迄

我がものにしたいと言わん許りに

真摯に求め合う

少しでも 少しでも長く傍に居られる時間が欲しくて

言葉にならない想いを燃え滾らせて

裸の心同士にぶつけ合って

墜ちるところ迄共に墜ちてゆく

出来るなら…二人一緒に滅びたいものだ…

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