訓練その3
次の日も壮絶な訓練だった。朝起き、アリシアと美味い朝食を食べ、ジョセフと昼まで訓練場で訓練。そして軽く摘めるものを食べると夜まで訓練。はっきり言って地獄であろう。それが毎日だ。
まだ、避けるだけの内容だがそこに一般常識を語られ覚える必要もあった。学の頭はパンクしそうになるが何とか覚える。と言うものの地球で暮らしていたであろう時の常識と大差ないのだ。
教えられた内容は、お金の数、時間、種族、そして今いる国だ。
お金と時間に関しては問題無かった。お金に関しては全ての国共通でルピと言う単位で1円=1ルピでだそうだ。
時間も1日24時間。そして、365日で問題ない。しかし、夏みたいに暑い時と雪が降る程寒い時があるそうだが、四季と言う概念がないそうだ。
そして、国。今いる国は魔族が主に住む土地の『アルトキリング』。と言っても魔族が主に住んでいるだけで他の種族もいると言う。他の国もあるそうだが、それはアリシアとの旅で見なさいとのこと。
種族に関しては特に長けてる特徴がない学みたいなヒューマン。アリシアやジョセフみたいな特異な力を持っている事が多い魔族。魔法が得意なエルフ。そして、身体能力が高い獣人がいるらしい。
そんな事を教えられて10日目。ついに攻撃する訓練も追加される。この段階で学は避けるだけならジョセフの軽い攻撃を良けれるようになっていた。あくまで本気を出してない軽い攻撃だが。
「今日からは私の攻撃を掻い潜りながら私に攻撃を仕掛けなさい。スキルを使っても構いません」
訓練内容が追加されて驚く学だが、経験上立っているだけだと直ぐに影に串刺しにされるので、学にとっての現段階での最小限の動きで近づき影を伸ばす。だが、影を伸ばした時どうしても意識が影を操作する事にいってしまい足が止まってしまった。案の定慣れない事に動きが遅くなり影に貫かれてしまう。
「痛った」
「何を止まってるのですか。敵は待ってくれませんよ」
本来なら、この時点で学は死んでいるだろう。だが、訓練と言うこともあり死ぬ程痛い程度ですんでいる。
俺って恵まれてるよなと心の中で噛み締め痛みを堪え一度距離を取り再び向かって行く学。そして、刺される。そんな事が永遠に繰り返される。止まって刺され、足下の影を操ると刺され、使わず突っ込んでも刺され、しまいには「影は足下にしかないのですか? 頭を使いなさい、頭を」と少し小馬鹿にされる始末。それからまた毎日刺されまくる日々が始まる。
だが、確実に学の動きが良くなっていく。最小限の動きで躱し、向かってくる影を手の指と指の間で出来る影を伸ばして腕に纏い、払う様にして捌く。
そして、手を何かを持つ様に筒状にし出来た影を剣のように伸ばしジョセフに斬り掛かる。それをジョセフは影を盾の様にして防ぐ。
15日目にしてジョセフに学は初めて至近距離でガードさせた瞬間だった。
「ラーニングのお陰が強いでしょうがここまで成長するのは驚きです。ここからは魔法も取り入れてみましょうか?」
「はあ、はあ、はあ、魔法!」
ジョセフの魔法と言うワードに今までの疲労が吹っ飛ぶかの様に元気になる学。やはり異世界から来たものにとって魔法は憧れだろう。
「では、何が出来るか色々試して見ましょうか」
ジョセフはそう言うと足下影から何やら道具を出し説明を始める。実はこの時影から物を出すという凄いことをしているのだが、興奮からか学は気付いていない。何とも勿体ないことである。
出した道具を順番に使い実演し説明が始まる。
触れると色が変わる玉で魔法の出力が分かる物。触れると透明な箱の中にある玉を自由に動かせ魔法制御や操作の練習ができる物。
そして、触れると容器に水が溜まって行き魔力量が分かる物。
「まず、これから」
学は触れると色が変わる玉に触れる。すると薄ら輝き直ぐに消える。色すら分からなかった。
それを見ていたジョセフは苦笑している。
「なら、これは」
次に触れたのは触れると容器に水が溜まる物。悲しい事に底に気持ち程度の水が溜まっただけでそれ以上は何も起こらない。恐る恐るジョセフを見る学だが、ジョセフは首を振っている。
「じゃ、じゃあ、これは」
次に触れたのは玉が入っている透明な箱。触れると学は玉を高速で動かし始める。これにはジョセフは目を見開き驚いている。そして、結果は......
「魔法制御に関しては天才と言うべき才能と技量も既にあるようですが、それ以外は」
言葉を待つ学。既に嫌な予感がしているがもしかしたらと期待して。
「ハッキリ言ってダメです。使い物になりません。才能が無いのでしょう」
それを聞き白目を向いて気絶する学。疲労が溜まっていたのとあまりにものショックで倒れてしまったのだ。
その日の晩、目が覚め三角座りでシクシクしていたのをアリシアが発見。とある助言があるまで落ち込んで居たという。だが、この助言が学の戦闘スタイルを確立させていく事になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます