Ver.3/第47話
思わぬフルレイド戦が終わり、一息ついていると、どこからかウサギが駆けつけてきた。
見たところ、ここまで追いかけてきたイースター・バニーのようである。
「これは、これは。あの邪魔者を退治していただけたのですね。これで、ゆっくりお茶会が開けます。何もないところですが、どうぞゆっくりしていってください。あー、そうそう。大したお礼もできませんので、ここにあるものは自由にお使いくださいな」
それだけ告げると、今まで戦っていた古老樹の前の広場にテーブルやイスなどをセッティングし始めた。
「自由にお使いくださいって言われてもな……」
グダやサエラといったメンバーと一緒になって周囲を再度見回す。
「なんか、あっちに集落っぽい場所があるよ」
「集落というより、出店って雰囲気ですねえ」
ユキチが指さす方向に目を向けると、大小様々な屋台が並んでいるのがわかった。サエラの話す通り、花見客を狙った出店といった様相である。
ハルマ達と違い、イースターエッグの収集が目的だったグダとサエラのパーティだが、せっかくなので一緒に向かうことになった。
「射的、くじ引き、釣り堀、お面屋、綿菓子屋、か。ホントに、ただの出店だな」
「一応、プレイヤーバザーや預り所、職人ギルドの出張所なんかもあるんだね。あ! あっちにイベント専用装備もあるよ! 告知されてた新しい使い魔も、ここで手に入るんだったのか」
出店の屋台とはいえ、近寄ってみると、ひとつひとつはけっこうな大きさがあった。特に、釣り堀は、その性質上、25メートルのプールを思わせるほどの大きさだった。
射的、くじ引き、釣り堀の出店に関しては、初回無料で全て利用でき、景品も持ち帰ることができるようである。
「くじ引きの1等、さっきのレイドボスのドロップと同じアクセサリーだ」
ユキチが気づくと、感心したように頷く。
「なるほど。欲しければ、こっちで金払ってでも当てろってことか」
「ハルちゃん、やっていく?」
「確か、封印耐性か暗闇耐性の付いたアクセサリーでしたよね? 俺、暗闇耐性はあるし、封印されても困ることあんまりないのでパスですかね。どっちかっていったら、2等の素材アイテムの方が欲しい感じですけど、ここじゃないと取れない素材でもないですからね。サービス分だけでいいかな」
こうやって思い思いに出店を見て回った後は、それぞれが時間を過ごすことになっていく。ユキチを含む初心者プレイヤー達は、当初の目的通り、多めに配置されているイースターエッグを見つけては回収していく。
ハルマは桜吹雪の舞う中、のんびりと散歩していた。
「キレイだねー」
「きれいねえ」
マリーとエルシアは、綿菓子を口にしながら、幻想的な景色を堪能している。
「あっちの大きい木にも、咲いてたらいいのにね」
「んー? そういえば、そうだな」
マリーが指さしたのは、先ほどまでジャイアントフェアリーアントに占拠されていた古老樹である。
……と。
そこで、かぽーん、と頭の中で鹿威しが鳴り響いた。
「咲いてないなら、咲かせればいいんじゃね?」
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