Ver.3/第44話
「え!? ヤバい! ホントに!?」
ハルマの告白に、その場は軽いパニックになると、立て続けに質問攻めとなっていた。
「よーし! モカさんだけじゃなくて、ハルマさんまでいるなら、何とかなるかもしれない!」
一通り興奮が収まったところで、サエラだけでなくグダも希望が見えてきたらしく、やる気に溢れていた。
「あー、ははは。でも、こんな状況になったのも、たぶん、ハル君の特異体質のせいだけどね。ぶっちゃけ、ぼく達、ハル君に巻き込まれただけだよ?」
「こらこら、ユキチちゃんや。人のせいにするでないぞ?」
「えー? でも、たぶん、そうだよねえ?」
「そうなんですか?」
ハルマとユキチのやり取りに、サエラが混ざる。
「そうですよー。見たらわかると思いますけど、この人、変なものを見つける特異体質持ちなんです。この前だって、初期エリアで誰も見つけたことがないだろうクエストを見つけただけじゃなくて、同じクエスト受けたはずなのに、別の報酬見つけるどころか、仲間増やしてるんですから。そこの不落魔王コスしてる、ハンゾウって人もNPCですからね」
「え!? そうなんですか!?」
「お、おい……。まったく……。ハンゾウ、変化解いて見せてあげて」
「承知」
やれやれと項垂れながらハンゾウに命じると、ポンとスケルトン忍者の姿に戻って見せる。
「もしかして、モカさんとユキチさん以外、全員NPC?」
ハンゾウの姿を確認すると、サエラはぽかんと尋ねてきた。思考停止の表情になっているのはサエラだけでなく、偶然居合わせることになった全員だった。
「その気持ち、わかるよお。よーく、わかる」
モカはそんな面々を楽しそうに眺めている。
「も、もう、いいじゃないですか! そろそろ行きましょう!」
ここまでバレてしまったら、ラフやトワネを隠しておく必要も感じなかったため、インベントリから取り出し、移動を開始していた。
「ね、ねえ……。まだ増えたんですけど?」
不落魔王のことをよく知らない初心者プレイヤーの数人は、何が起こっているのか未だに理解できていない様子である。
それでも、モカとハルマが、この絶望的な状況を打破してくれる可能性を秘めたプレイヤーであることは理解してくれたみたいである。
「さて、どんな相手だろうねえ?」
ハルマに急かされ、レイドボスの待つ古老樹の元まで移動すると、クエスト開始とばかりに周囲の雰囲気が変わり始めた。
「何か、聞こえてきた」
サエラがつぶやくのと同時に、全員がその音を認識する。
カサカサと何かが蠢く音と、羽音が混ざっている。
ハルマは一瞬、アウィスリッドの長老樹で退治したジャアクビーを思い出したが、同じ虫系のモンスターでも今回は蜂ではなかった。
「蟻?」
「蟻、だねえ。でも、めちゃめちゃデカいねえ」
古老樹の根元からうじゃうじゃと這い出てきたのは、トワネにも劣らないサイズのジャイアントアントの群れだった。
そして、本命のフルレイドボスは、頭上から飛んできた白い体のジャイアントアントに、蝶の羽が付いたジャイアントフェアリーアントという、ジャイアントアントの女王蟻モンスターであった。
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