Ver.2/エピローグ
「カンパーイ!」
スタンプの村に、大きな声が響き渡った。
「いやー。ハルマだけじゃなくて、モカさんも全勝とは、さすがですね」
全21回の〈魔王城への挑戦〉が終わり、魔王の役目を果たした2人の人物に対して労いの言葉がかけられる。
「今回は全勝、けっこういたわね」
スズコの言葉の通り、この2人だけでなく5人の魔王が全勝していた。
ただ、勝率1位が5組並んでいるとはいえ、勝利数1位はハルマでもモカでもない。ハルマもモカも、参加義務として課せられた最低回数しか参加していないので、その回数を越えて参加したテスタプラス達が形式上1位として扱われている。
「テスタプラスさん達、さすがだったなあ。正直、ハルマ君やモカさんの戦いは異次元過ぎて参考にならないけど、あの人達の戦い方なら自分でもやれそうな気がするのもありがたい」
ゴリは同年代のテスタプラスの戦いぶりを振り返り、感想を述べる。
これには多くの者が同意していた。
「ホント、ハル君のデタラメなパワープレーも悪夢だけど、モカさんの〈チャリオット〉も何ですか? あれ?」
すでに知れ渡っていた〈デュラハン〉でさえも厄介だったというのに、コナと共闘する〈チャリオット〉は今回、多くの挑戦者を弾き返した。
「んー? うちも、どうやって取得したのか、よくわかんない」
にゃはははと笑いながら、モカは答える。
「何だか、モカさんと同列に思われるの不本意なんだけど?」
ハルマも、参加できなかった時間帯に少しだけ観戦する機会があったため、モカのデタラメさも知っていた。加えて、〈ゴブリン軍の進撃〉の時から何度か共闘したこともあっただけに、彼女の強さは身に染みていたのだ。
「いやいや、ハルちゃん。それは、うちの台詞よ? 気づいてないかもしれないけど、被ダメージゼロでの全勝だけじゃなくて、ハルちゃん自身は与ダメージもゼロなんだからね? さすがのうちでも、意味がわかんないわよ」
ハルマの言葉に、モカはジト目を向ける。
そうなのだ。
今回もハルマ自身がダメージを受けることはなかった。それだけでなく、ハルマ自身が攻撃することもなく終わっていたのだ。おかげで、元々謎だらけだったハルマの強さは、更に謎を呼んでいた。
「あ、いや、それは……」
そうやってしどろもどろになる様を一頻り眺めていたが、誰かが「プッ」と吹き出したのをキッカケに、その場は笑いに包まれた。
妬ましさや焦燥感は持っている。それでも、ハルマもモカも、このゲームを純粋に楽しんでいることを、この村の住人はよく知っているのだ。
この世界で強くなるヒントなら、このふたりからもらっている。もちろん、すでに実践している自負はあるのだが、なかなか突き抜けて実行することは難しいものである……。
そう。ただ自分らしく楽しむだけ、ということは。
こうして大盛況のうちに幕を下ろした魔王イベント、第2回〈魔王城への挑戦〉だったが、翌日、すぐに話題は次のビッグイベントへと移ることになる。
――運営からのお知らせ――
【大魔王イベント開催決定!!】
ゴールデンウィーク期間に、魔王経験者の中から事前にプレイヤー投票によって選出された8名によって、トーナメント方式で大魔王を決定したいと思います。
このイベントで大魔王として勝ち残ったプレイヤーには、特典として、新たに作製するオープニングムービーのメインキャラとして登場できる権利が与えられます。惜しくも大魔王に勝ち残れなかったプレイヤーも、成績に応じて、このオープニングムービーに登場できます。
イベントの詳細は、続報をお待ちください。
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