第40話
「どーすんだ?」
見えない行き止まりを前にして、全員が考え込む。
途中、枝分かれしたルートがあるにはあったのだが、すでに間違えてルート変更してきた結果の現在地なのである。
落とし穴の場合、軽微なダメージで済む場合もあれば、即死になる場合もある。おおむね穴の大きさで判断できるのだが、これだけ大きな落とし穴であれば、かなりの高確率で死に戻りということになるだろう。
「さっきの行き止まりに、隠しルートがあったとか?」
「そういうのこそ〈発見〉スキルが発動しそうじゃね?」
シュンの仮説は、チップによってあっさり否定された。
「じゃあ、どっかに罠を解除できる方法があるんじゃない?」
「「「ありえる」」」
アヤネの意見に全員が周囲の観察を始めた。ハルマもスキルに頼りっ放しで、ちゃんと観察していなかったと思い直し視線を走らせる。
が……。
「わかんねーな。ハルマ、どうだ?」
早々にチップは諦め、ハルマに一任する。
「いや。罠がある場所以外、わかんないな」
「えー。ここまで来たのに何の成果もなしに引き上げるしかないの?」
「もしくは、落とし穴に落ちないと先に進めない、とかだな」
「あー、あるある。RPGの落とし穴の定番だね」
「でも、それで死に戻りしたら、目も当てられないわよ?」
「そうなんだよな……」
全員に諦めムードが漂い始めたが、ハルマがふと思いつく。
「いや、待てよ。この距離だったら」
今まで回避して避けてきたせいで、罠を解除するという発想がなかっただけで、罠を無効化できるのであれば話が変わってくる。
「どうした?」
急にメニューを操作し始めたハルマに、チップが声をかける。
「床が抜けなければ、落ちる心配はないんだよな?」
「そうだな」
「だったら、抜けない床にしちゃえばいいんじゃないかと思って」
「ん?」
チップが疑問符を頭上に浮かべたのも気にせず、インベントリから建材を取り出し、大工道具を装備する。
「なに、それ?」
アヤネもハルマが何を始めようとしているのか、怪訝な顔である。
「この手袋、〈マジックハンド〉ってアイテムで、手の届かない場所に建材を設置する時に使うんだ。最初のうちはわざわざ足場を組んで屋根を作ってたんだけど、これのおかげで作業が捗る捗る」
そう言うと見る見るうちに足元に床板を設置していく。
1メートル四方の板は設置されると自然とつながり、つなぎ目もわからなくなっていく。
そうやって10枚の床板が敷かれた道が出来上がっていた。
「よし! これでどうだ?」
満足気に呟いたのと同時だった。視界にアナウンスが表示された。
『スキル〈トラップ解除Ⅰ〉を取得しました』
『レベル1までの罠の解除ができるようになる(DEXによって成功率が変化)』
『DEXが常時30増える』
【取得条件/規定値以上のDEXの時、罠の無効化に成功する】
「何か、〈トラップ解除〉のスキル覚えた。とりあえず、無効化には成功してるみたいだから進もうぜ」
「あ、ああ……。そうするか」
鼻歌混じりに歩き出したハルマの後を、苦笑いもできずに追いかけるチップたちだった。
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