死を授ける者の憂鬱
Scene.064
死を授ける者の憂鬱
二十一世紀にもなって。
殺した相手の幽霊に苛まれる殺人者の話を聞いた時、そう思った。しかし、獄中のアル・カポネが、血のバレンタインで殺したジェームズ・クラークの亡霊に悩まされていたという逸話を思い出した。他にも“この手”の怪談話は良く耳にする。
所謂、戒めだ。
警察や司法などの国家権力、或いは“同業者”の報復から逃れても優雅に暮らすことは叶わない。必ず償いの時は来る、と謂う……。
報い、と言えるほどのものではないが、僕もたまに夢を見る。
誰かを殺している自分を、もう一人の自分が上から眺めている、という内容だ。その時は、何の感情も無い。つまらない映画を眺めているときのような、妙な感じだ。しかし、目が覚めると自分が抜け殻のような感じがして、味気なくて、それで怖くなって、何とか自分を取り戻そうとして、また人を殺す。
そのときに見る血は、臓物は、或いは悲鳴は、いつもよりずっと綺麗だ。
これにて、了。
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