病的モルヒネ嗜好

Scene.057

 病的モルヒネ嗜好


 立待の月に紅葉が浮かび、漆黒の中に紅が散る。一枚、落ちては、ひらりと舞い、二枚、舞いては 、ふわりと落ちた。辺りは白河夜船の真っ最中。月に煌めくは幾本の太刀。

「おやおや、お侍さん方。今宵の月は誠に美しゅうございますね」

 紅色紅葉を口元に咲かせ、女は白晢の顔に冷笑を浮かべる。常闇の単衣に咲く八重桜。

 右手に携えた番傘から覗く白刃が、玲瓏と瞬いた。

「はて、今宵はどうのような用件で?」

「盗賊が出た? そりゃ物騒なことですねェ」

 その女、面に艶色を点し、ニヤリ、と笑う。たん、と刀を抜き、斬り荒ぶ。丁々発止と切り結び、飛び散る血は深紅。骸を背にして浮かべる嘲笑。

「昔から謂うでございましょう?」

 羅生門には鬼が出る、と。


 これにて、了。

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