虐殺者の宝石
Scene.048
虐殺者の宝石
限りなくピュアな只の石ころに、どうして我々は価値を与えるのだろうか。
夕日が射し込む窓辺を見つめながら彼は呟いた。その席には一組の若いカップルが座って談笑していた。
世界中で取引されるダイヤモンドの中には、紛争地域で採掘されたものが存在する。その地域を支配する武装勢力の暴力によって、人々は劣悪な条件下での採掘作業を強いられる。そうして、採掘されたダイヤは“西側”に買われ、その利益で武装勢力は武器を買うのだ。
僅か数グラムの炭素の結晶が、何十丁の自動小銃、何百個の地雷、何千発もの銃弾へと代わる。そして、その武器で何万人もの民衆が殺される。
「そんなものが、永遠の愛の証だって言うんだ」
――愛とは、こんなにも尊いものであるべきだろうか。
ゆっくりと、彼は銀色のスプーンで浅紅色の水鏡に映る自らを掻き消す。
これにて、了。
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