第8話 最初の村

 緑はなくとも、木は存在している。


 ただ、どの木にも葉は付いておらず、生命力を感じない枯れ木と化していた。


 おそらく昔は、木が両端を囲み、一本道になっていたであろうこの道も、悲壮感を与える風景になっている。


 ただ、一本道のため、道に迷うことはなさそうだ。


「ここってどこまで続いているんだ?」


「さあ、私もわからないけど、道になっているんだから、どこかに繋がっているんじゃない」


 エアリスのノープランに琉海は不安を覚えた。


「大丈夫か?」


「大丈夫よ。別に人間がこの世界からいなくなったわけでもなさそうだし」


「どうしてそんなことがわかるんだ?」


「あれよ」


「……なッ!?」


 琉海の問いにエアリスは前方を指差す。


 そこには、出入り口を示すかのように門が存在した。


 その門は何年も前からそこにあるのか、不思議なものを感じさせる。


 石造りの門。


 殺風景な景色の中では、存在感を放っていた。


 そして、その門の前にはお供え物のようにわずかに食べものが置かれている。


 ただ、琉海はそんなことより、その門の形に驚きを覚えていた。


「これって……鳥居なのか……?」


 琉海の眼前にあるのは、日本にある神社や寺などにある石造りの鳥居。


「なに見惚れているの。行くわよ」


「あ、ああ……」


 二人は鳥居を通り、お供え物の横を横切る。


 横を通る瞬間、琉海はそのお供え物に視線を向けた。


(ここに食べ物を置くってことは、何かを祀っている?)


 エアリスは先に進んで行ってしまう。


 まるで、目指す場所を知っているかのように。


 琉海は、置いていかれないようにして早足で追った。


 鳥居を通り抜けてから五分ほど歩くと、一本道の終着点に辿り着いた。


 そこには、木造の家屋が数軒あり、人もいた。


「人間がいるわね。これで、ここがこんなになっている理由がわかるかもしれないわ。それじゃ、ルイ、よろしくね」


「え? なんで俺が? ここの世界のこと俺は何も知らないぞ」


「そうかもしれないわね。それでもいいわ。こんな世界になった理由がわかればいいから。それに、私がやりたくてもできないし」


「それはどういうことだ」


「私の姿が他の人間には見えないからよ」


「他の人間に見えない? 俺には見えているけど……」


「それは契約者だからよ。もっとここに自然があって、精霊が住みやすい環境だったら、ルイの魔力を使って他の人間にも見えるようにできたかもしれないけれど、こんな状態だと無理なのよ。だから、お願いね」


 エアリスはそう言って村のほうへ行ってしまう。


「はあ、情報収集なんてやったことないぞ」


 琉海はそう呟いても他の方法が思いつかず、見知らぬ村に向かった。

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