第47話 換金所
今回は全額俺が払って店を出て、冒険者ギルドへと再び足を運び、換金所を紹介してくれるように頼む。
「換金所ですか。実はギルドの二階にもありまして、冒険者のみなさんにとって安心できると思いますがいかがでしょうか?」
と受付嬢の答えに意表を突かれた。
ギルドにも換金所ってあったのか。
「たしかにギルド直営なら信頼はしていいだろうな」
と納得する。
俺たち冒険者がギルドを利用し、決定に従うのはギルドが冒険者の利益を守る立場だからだ。
冒険者の利益を守らなくなったギルドは崩壊すると言ってもいい。
「二階に行こうか」
「はい」
「任せる」
ルーはうなずき、スーはわりとどうでもよさそうに俺たちの後をついてくる。
階段の踊り場で人がいないのを見計らって俺はスーに言った。
「黄金を少量出してくれ」
見る人が見ればスーが使っているのは、時空系の能力だとわかってしまうだろう。
彼女がアイオーンドラゴンだということは、国や冒険者ギルドには伝えないとまずいものの、一般人に知られるのはあまりよくない。
そんな状況だと思うからだ。
「少量でいいのか?」
スーは不思議そうに聞き返してくる。
「ああ。どれくらいの通貨が換金所にあるのかわからないからな」
大量に持ち込んでも向こうにお金がないという展開はありえた。
何しろギルドの換金所は冒険者へのサービスのようなもので、本業的な店とは一緒にできないだろうから。
「
階段で二階をあがったすぐ横が換金所で、小柄なメガネをかけた老人が一人ぽつんと座っていた。
「お客さんかな?」
俺たちに気づいた老人は藍色の瞳をこっちに向ける。
「ええ。換金をお願いしたいんですが」
俺が申し出ると小さくうなずいた。
「品物を見せてもらおうか」
「ええ」
まずはルーが袋から持っていた黄金を取り出す。
「ほう……少量ながら質がいいね。金貨100枚でどうだろうか?」
「よろしくお願いします」
ルーは満足そうな顔をしているので、おそらく適性の価格だろう。
彼女については心配しておらず、問題は交代で品物を取り出したスーだった。
ちゃんと指示を出したんだから大丈夫だと思いたいけど……。
「うん?」
スーが出した黄金を見た老人は怪訝そうな声を出す。
「黄金についている鎖、これはまさか三色銀じゃないか? いやまさかな」
「あ」
スーが声をあげてこっちを見る。
失敗したと表情に書いてあったので、黄金の鎖部分をすばやく俺が回収した。
「あ……」
強引に鎖をとったことで老人から声が漏れる。
「たぶん偽物ですよ。入手した時からついていたんです」
ぎこちない笑顔になっていると自覚しながら、早口で説明した。
「そうなんだ。そりゃそうか」
老人が納得したのも当然だろう。
三色銀は光に当てることで緑色や青色の光を放つ特殊な銀のことで、黄金よりもずっと希少で価格も高い。
S級冒険者が持っていても不思議じゃないレベルではあるけど、出所は確実に探られてしまうだろう。
精巧な偽物だということにしておいたほうが面倒ごとを減らせるはずだった。
「本物の三色銀だとここじゃ引き取れんからな。それだけの金貨がない」
老人はからからと笑う。
本物の三色銀だとひと粒で金貨500枚なんて言われたりするらしいからな。
高級金属買い取り専門店を探すしかないだろう。
「でしょうね」
俺が笑うと老人は黄金の査定に戻った。
「質はいいが量は少ないからな、金貨200枚というところか」
「それでお願いします」
さっさとすませたいので俺が即答する。
「わかった」
老人は俺がパーティーリーダーで権限を握っていると思っているのか、すぐに金貨を出してくれた。
「また来てもいいですか?」
社交辞令のつもりで言うと苦笑されてしまう。
「定期的に金貨300枚も出していると対処が追いつかなくなってしまうよ」
提出した分をお金に変えているはずだから、ある程度までは資金的に問題はないはずだけど、量が多いと取引相手を探すのが大変なのかな。
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