主将候補へ下克上!?
全国の切符を得るための大切な試合がはじまった。中学生のリトルシニアとはいえ普通の高校生
俺の場合は幼いころからの自己抑制と魔法によるトレーニングの結果、試合中に魔法をさほど使わなくても十分に戦える。簡単に言うと大学生レベルの技術で中学生の試合に臨んでいるという感覚だ。
ただ、このレベルになるとなめてはかかれない。やはりセンスは凡人である俺よりは上なのだ。
相手投手は勝ちを意識しすぎていたのか制球がままならない。140km/h近い速球なのだがボールが先行しがちだった。先頭の伊波さんは四球で塁に出ると能登間さんの意表を突いたセーフティバントで2塁1塁。
いきなりチャンスで3番俺。今日は山鹿さんの調子が良さそうなので球をじっくり見ることにした。外角高めの釣り球は無視して2B0S。ほらほらネクストサークルに怖い4番が来たよ。
投手は四球で無死満塁での山鹿さんとの対決を恐れて、カウントを整えるためにストライクゾーンに置きにきた速球を俺は見逃さない。手にバットの芯がボールを食った手ごたえ。そのまま振りぬく。
あれ、あたりが良すぎて凡フライか?ただ高々とボールが上がり過ぎたのかなかなか落ちてこない。スコアボードに球が直撃した。
ボールを投げた瞬間の相手のあ、という後悔と焦燥が
さらに4番の山鹿さんは四球を選び、住居さんがヒットでチャンスを広げてをか結局こちらは初回で6得点。終わってみれば10対2の5回コールド勝ちであった。
完勝に気を良くしいてるだろうと思いきや先輩達に浮かれた様子はない。春の覇者としてはもはや全国との戦いに思いが行っているのだろうか。
山鹿さんは最近は試合で二年の捕手
俺は人生の通算がみんなより長いせいか一年一年があっという間に感じられてしまうのだ。全国選手権大会が終われば今度は俺たちが中心にならざるを得ない。
「ということでお前の担当は俺と能登間な。」
伊波さんが俺の隣に座る。
「何しろ次の
え?俺が?能登間さんが説明を継ぐ。
「なに言ってんだ?お前は俺たち三年と一年から評判がいいぞ。圧倒的にな。」
うんうんと伊波さんが頷く。
「グラウンド整備もマネージャーの手伝いも率先してやるし、三年の補欠にだって礼儀正しいし、一年坊にも優しいしな。」
あー、なるほど。下積み生活が長いせいか自然とそういう態度にはなるよなぁ。自然に雑事を引き受けるし、自分がレギュラーの後輩の態度に傷ついたことがあるからこそ、言い方は万全の注意を払ってしまう。ここはかつて居た「異世界の」亜美が俺を褒めてくれたところでもある。
「ただな、お前は同級生に遠慮し過ぎる節があるな。もう少し打撃の技術とかストレッチのアドバイスをした方が良いと思う。野球はチームプレーだ。とにかくコミュニケーションが大事な。」
はい、そこらへんのご教示よろしくお願いします。⋯⋯でも、俺の場合打撃も投球も全て「魔法制御」なんだよなぁ。教えようがないんだけど。
次の週末は土曜が準決勝、勝てば日曜日に決勝である。雨が降れば予定が少しずれるが。前日、胆沢が軽く投球練習をしていた。「軽く」とは言え正捕手の山鹿さんを座らせての本格的なものだ。リトルシニアは試合だけでなく練習にも投球数に制限があるので気軽なものではない。
やっぱりまだ身体が硬いな。上半身のバネに優れているのに本当に勿体ない。俺は伊波さんに胆沢に声をかけるよう指示される。これも
ちょ、調子良さそうだね。あと二つで優勝だね。頑張ろう。
俺のぎこちなさにイラッと来たのかまるで舌打ちでもしそうな雰囲気で胆沢がこちらを睨みつけた。
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