成長期到来!身長でも下克上!

 秋季大会は北関東支部秋季大会、そして関東連盟秋季大会も優勝。春の選抜出場をあっさりと決めてしまう。


 たった一行で終わってしまうくらい簡単な話。だって、すごい才能を持った選手たちが恵まれた環境で理にかなったトレーニングをしているのだから。欧米のスポーツクラブを徹底研究して作られた施設だけはある。

 

 これもケントのおかげである。ケントは異世界での俺との約束を果たすために先に転生して準備をしてくれていたのだ。ケントは欧米や日本やアジアの政財界のセレブたちの病気を治していくことで財力と権力を裏世界で蓄えてきたのだ。だからスポーツの世界ではケントの名は有名で、故障した世界一流の選手たちがお忍びで日本に彼の治療を受けにやってくるのだ。だから各スポーツの競技団体とも太いパイプがあるのだ。


 11月初頭に関東大会が終わるとオフシーズンである。12月の第2週から3月の第2週まで対外試合は禁止になる。選抜大会は3月の末だ。体づくりの「基礎的」なトレーニングにシフトされていく。


 青学がある埼玉北部は1,2月は「からっ風」と呼ばれる乾燥した季節風にさらされることが多い。だから室内練習の方がありがたいのだ。


 そして、ついに俺の身体に変化の時が訪れる。爆発的な成長期にはいったのだ。これまでしっかりとした睡眠をとるために俺はテレビとゲームをあきらめてきた。前世の俺は中学生時代にファミコ〇が登場して、睡眠不足になったことがあり、それもセガ伸び悩んだ一因だったはずだ。

 

 これまで学校で友人と話があわない、というのはつらいものがあった。だがしかーし!これも背が伸びるためだったのだ。


 「健、そういえば最近背が伸びてるね。」

ジュニアに言われてもうれしくない。俺が伸びても彼も伸び続けているので身長差がなかなか縮まないのだ。

「テニス選手プレイヤーは身長が邪魔になることはないからね。6㌳7㌅くらいは欲しいかな。」

アメリカ人はヤードポンド法だから単位が解んない。⋯⋯2mか。2mと言えよ!


 「これなら来年から少し負荷を上げた筋トレもできそうだね。引き続き『自動回復魔法』を忘れないようにね。」

 今日は俺はケントの自宅に食事に招かれていた。そう言えばケントは自分が勇者ヒーローになりたいと思ったことはないの?


 ケントはフォークで行儀悪く肉をつつきながら考えると言った。

「私には向いてないからね。先導者チューター天職My Jobだったと思うよ。私は『勇者』を育てる達人になってみせるよ。それだけでも多くの人たちの笑顔を作り出せる。君やジュニアが私を勇者ヒーローにしてくれるんだよ。」


 そう、俺の夢は俺だけのものじゃない。


 クリスマスから正月三が日までは完全オフ。俺は2日に亜美とデートだった。うちは親戚が集まって正月の2,3日は家で箱根駅伝をテレビで朝から酒を飲みながら観るのが恒例なのだ。つきあってられん。


 デートと言っても金の無い中学生同士。自転車で近所の小さな神社で初もうでに行って、そのあとコンビニのイートインでだべるだけ。


 「駅伝ってさ、あんなの走ってるだけなのにどこが面白いのかなぁ。うちもパパがずっと観てんだよね。」

亜美、それは絶対口に出すなよ。それを言い出したら野球だって18人で一つのボールをこねくり回して何が面白いの?ってなるぞ。いろいろドラマがあるの。選手の側にも観ている側にもな。


 「でもさ、あんたにいつの間にか伸びてきたね。まだ負けてないけど。」

 亜美は女子だが170cm超えの恵体めぐたいなので俺的にはもうすぐ追いつけそうである。


 「現地おおさかまではいけないけど選抜頑張ってね。応援してるから。」

優勝したらなんかご褒美くれる?そういうと亜美は少し考える。

「うーん。あんたの先輩たちがガチで強いのは有名なんですけど。だから先輩たちにのっかるのはやめときなよ。」


ばれていたか……。

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