【第6章 兄妹】

兄妹の事情

「でお兄ちゃんこれはどういうことかな?」

「そうです。悠馬さんこれはどういうことですか?」

 アルカディアに戻った俺は苺とリタに問い詰められていた。

 それもそうだろう。帰ってきたと思ったらケイビスが増えていて、アンとケイビスと婚約の話まで出たんだから当然だ。俺は内心この修羅場のような状況にかなり焦っていた。

「いやぁ、うんまあそうだね。2人がそういう反応になるのは仕方ないと思う。だからちゃんと説明を...ってなんで苺は炎構えてるの!?リタもその物騒は物下ろして!」

 こんなに身近に命を危機をこの世界に来てから感じたのは今日が初めてだ。

 俺はきちんと2人に誠心誠意説明をして納得してもらえた。

「ところで苺その話の延長で1つ大事な話というか調べてみないといけないことがあるんだ」

「お兄ちゃんの言いたいことはわかるよ。私も昔から気になってた。本物の兄妹かどうか」



 この世界の魔法には継承性という性質がある。例えばアンの場合、代々継承している風の魔法だ。

 だけどこれは大体1属性に限られる場合が殆どだ。それは兄弟姉妹であっても。だからこそ俺と苺はかなりというか世間一般ではありえないとされる兄妹で複数属性を使える歪な状態になっている。

 こういう問題はリスタに聞くのが一番早いのだが、その肝心のリスタは行方知れずで連絡も取れないと来てる。

「とりあえず色々調べてみよう。俺も気になるしな」

「私達も手伝いましょうか?」

 そうアンが言ってくれるが俺と苺はそれを断った。

「アン気持ちはありがたいがこれは俺達の問題だ。ごめんな...」

「いえ私も気が利きませんでした。すいません...」

 何かとても申し訳ない気持ちになる。人の善意を断るのは正直俺も苺もとても嫌だ。だけど同時にここまで踏み込んで欲しくはないという気持ちも俺と苺にはあったんだと思う。



「お兄ちゃん、何から調べるの?」

 外に出た俺は苺からそう言われる。

「そうだなぁ...。調べるといっても手掛かりがないのも事実だしどうしたもんか」

「私達お父さんもお母さんも居ないもんね。私達意図的に人と関わらないようにしてたから昔からの知り合いなんていないし」

 そうこれは事実だ。俺達は親がいないし、この性質のせいで人との関わりも避けて生きてきた。つまりどこにも手掛かりがないということになる。



「おや、お困りのようですね?」

 そう後ろから声をかけられる。元生徒会長とゴエティアがそこには立っていた。

「オーガスタにいた時も絡んできたよな。何の用だ?」

「まあそうですね。困ってる悠馬君を助けてあげようかなって」

「こういう現状になったのも誰のせいだと...」

「じゃあオーガスタのお姫様の妹を無傷で救えたのは誰のおかげですか?」

 俺は黙り込んでしまう。正直こいつらがいなかったらケイビスを少し傷つけないと救えなかったのは自明の理だ。

「とりあえず貴方達の過去を知りたければいい魔法があるんですよね。どうします?使ってみますか?」

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