悠馬の失踪

 俺は1週間ぐらいだっただろうか?レイとのご飯を続けた。だがその間に何か聖女の伝説に近づくような質問をしたかと言われると否だ。

 俺はただ困っている女の子を助けているという感覚だ。見返りとしての質問もまた今度何か聞きたいことがあったらと保留にしている。

 だが彼女に対して興味がないというわけではないのだがどうにもリスタから聞いた目の話のせいで気が引ける。



「悠馬お兄さん、質問がもう5個も貯まってるんだけどいい加減何かないのかな?」

「そうだなぁ...。今はまだ特にないんだよな」

 最近はレイとも結構打ち解けてきたように思う。

「なんかお兄さん私に遠慮してるよね?」

「いやそんなことは....」

 と言いかけて俺は遠慮を無意識にしてしまっていることに気がつく。人に言われないと気がつかないのはかなり重症だ。

「まあ私はいいんだけどね。めんどくさいことが増えないし、悠馬お兄さんのおかげで私はこの町で生活ができている。素晴らしいじゃないですか」

 そういう彼女の目の奥はかなり濁っているように見えた。



「悠馬、まだあの少女に構っているのか?」

「リスタか。あぁ、放っておけなくてな」

「そのうち悠馬まで飲まれなければいいんじゃがの」

 そう呟きリスタは部屋から出ていく。

 飲まれる?何の話なんだ?そういえば最近アンやリタや苺と話す余裕がなくなってきている気がする。

「痛っ!」

 不意に頭を鈍痛が駆け抜ける。なんだ?この頭痛は....。

『やっとこっちにきてくれたね!悠馬お兄さん』

 そう頭の中でレイの声が聞こえた気がした。




「起きろ、苺」

 私はリスタの声で夜中に目を覚ます。

「こんな夜中にどうしたの?リスタさん」

 私は目を擦りながらリスタに起こされた理由を聞く。

「悠馬が連れて行かれたかも知れん。早い方がいい、助けに行くぞ」

 お兄ちゃんが連れて行かれた?私は一瞬頭がパニックを起こしそうになる。

「苺落ち着くんじゃ。理由はだいたい想像はついておる」

 リスタさんは大体誰にどうして連れ去られたか分かっているらしい。だけどそのあと少し気になることを呟いていた。

 あいつなら抗えると思ったんじゃがのと。まるで全部知っていてそういう方向に仕組んだかのような物言いだった。

私はひとまずそのことを置いておき、お兄ちゃんを助けるべく家を飛び出した。

「お兄ちゃんすぐ行くから待っててね」

そう呟きながら。

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