研究所への侵入

 研究所は意外と駅前のエリアから近いところにあった。

 研究所やその関連企業が集まっている場所より遥かに繁華街に寄っている。

「こんなところに研究所があったのか」

「まあ普段は人畜無害な一般企業の皮を被っておるからな」

 なるほど、つまり研究者を隠しているという訳だ。ここアルカディアでは割とそういうことがある。

 一般企業を装い裏で非人道的な実験を敢行していたり、精霊を捕らえていたりと。化学が発展している場所だからこそそういうやってはいけないことをする企業も多い。

 しかもたちが悪いことに大体こういう企業の後ろ盾はアルカディア以外の国であることが多い。

 そういった背景からアルカディアではこういった企業や国に対しての制裁を厳しくしているが中々追いついていないという現状もある。



「で、これ真正面からいくのか?」

「いやそれは無茶じゃろうて」

「じゃあどうするんだ?」

「まあ任せておけ。わしにいい考えがある」

 リスタが自信満々にそう告げる。

 そこまで自信満々に言うならいい方法があるのだろうと俺はリスタに侵入経路は任せることにした。



「で俺達はなんで屋上にいるんだ?」

「ほら上から入れば偉い人の部屋も近いかもしれんじゃろ?」

 さも名案であるかのようにこちらに言ってくるリスタ。

「いやどうするんだよ、地下とかに偉い人の部屋があったら」

「その時はその時じゃ。じゃあ行くぞ」

 リスタが屋上のすぐ下に魔法で穴を空ける。

 俺にはその魔法の原理がイマイチ分かっていないが、どうやら警報なんかにも引っかからないらしい。

 俺はリスタの風属性魔法で衝撃を和らげ下に降り、建物に侵入する。



 実はさっきああは言ったが建物の地図自体は雄から受け取っていた。

 俺はまずこの企業の代表がいるであろう部屋へと向かう。

 俺は少し自分の声を高くして部屋を訪ねる。

《コンコン》

「あら?アポイントメントは取ってないはずだけどどなたかしら?」

 中から女性の声がした。

「あのーすいません。どうしても代表の方に許可を頂いてこいと上司の方から言われまして」

「あらあれのことかしらね。どうぞお入りなさい」

 俺は扉から中に入る。

「あら貴方...」

 まずい、気づかれたか?そう思ったが続く言葉違うものだった。

「貴方結構イケメンね。こんな社員いたのね」

 代表さんはわりとルンルンで資料の内容もろくに見ずに判を押した。

 これは俺と雄で偽装した地下の研究施設に入る為の許可資料だったのだが。

 そんなこんなで俺は隠れていたリスタと合流し地下の研究施設へと向かった。


——————————————

このパート長くてごめんなさい。そろそろ完結予定です。

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