ノースフェイス

 古屋に足を踏み入れた俺は地下に続く階段を見つけ、リスタを呼ぶことにした。アンやリタには危険な目にあって欲しくないので一緒に来たアンは外で待っていてもらって、リタは呼ばずにいた。

「なんじゃ、悠馬」

「千代さんからここに生徒会長がいるって聞いて案内してもらったんだけど、あの学院長が何も仕掛けをしてないはずがないから手伝って欲しくて」

「やれやれ、悠馬も精霊使いが荒くなったの」

 確かに最近はリスタに頼りっぱなしだ。これが終わったら何かお礼をしないとな。

 そんなことを考えながら俺とリスタは地下へと足を踏み入れた。



「悠馬、本当に過去におるのか?」

 リスタが愚痴を言う。無理もない、地下は迷宮のように入り組んでおりどこに何があるのか把握するのすら難しい状態だった。

「そうは言っても一度全部探してみるしかないだろ」

 俺も正直内心この時は疑っていたが、全部探してみないことには断言は出来ない。



幾つ部屋を見ただろうか?俺達はあからさまに怪しい部屋に辿り着いた。

「ここみるからな怪しいがリスタ何か感じるか?」

「感じるかと言われてもなぁ、魔力の流れがわずかに他の部屋と違うことぐらいかの?」

「それがわかればかなり十分じゃないか?」

「そんなもんなのかの?まあとりあえずこの部屋を調べてみるのが良さげじゃの」

俺達はその部屋を調べることにした。



「悠馬、これじゃないか?」

リスタが部屋の壁に隠されていたスイッチを見つけた。

「ヒントらしいヒントはこれしかないし、とりあえず押してみるしかなさそうだな...」

俺はリスタの見つけたボタンを押してみる。

ゴゴゴと音がして、下に階段が見える。

「なぁ悠馬、もしかしてもう一回これをするのか?」

俺も一瞬同じことが頭をよぎったが階段を降りるとそこは神殿のような作りになっていた。

「悠馬ここはまずいぞ...。今すぐ引き返すべきかもしれん」

リスタが足を踏み入れた直後にそんなことを言い出す。

「具体的に何がまずいんだ?俺には魔力の流れとかが見えないから何もわからないんだけど」

そんなことを話していると突然人の声がした。

「よくここまで辿り着けましたね」

完全に見た目は学院長だ。

「学院長こそこんなところで何をしているのですか?」

「さあ...?貴方達と同じかもしれませんし真逆かも知れません」

リスタがこの会話の間に頭に直接話しかけてくる。

《いいか?合図をしたらすぐに逃げるんじゃ。あれはまずい、わしが気がつかなかったのが悪いんじゃが》

《あれって学院長じゃないのか?》

《あれは違う。多分そろそろ人の形を維持できなくなるはずじゃ》

そう言った直後に学院長の姿形が別のものへと変化した。

顔は真っ黒で何も見えず、身体はこの診断を覆い尽くすほどの大きさにまで膨れていた。

「悠馬、あれが学院長だったものの正体、ノースフェイスじゃ」

どうやら俺達はまた化け物と闘わなければならないらしい。


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