第112話 アルラギア帝国のミス
「……さて、落ち着いたところで本題に入ろうか、ジン殿。我々に協力して欲しいこととは一体なんだろうか?」
数分間に及ぶ、
先程までとは打って変わって、オリヴェイラ様はかなり真剣な表情をしている。
俺も麗蒼との再会に喜んでいる場合じゃ無さそうだな。
「……セトロベイーナ王国はご存知ですよね?」
「ああ、もちろんだ。……フッ、おかしなことを言うんじゃない。王が勇者パーティーを投入してまで侵略しようとしていた国を知らないわけが無いだろう? しかも、侵略に失敗したとなれば、嫌でも覚えるに決まっている。逆に忘れたいぐらいだ」
オリヴェイラ様は笑いながら答える。
目は全くと言っていいほど、笑っていなかったが。
……意外と悔しかったんだな。
まあ、帝国と名乗る大国がお世辞にも大国とは言えない国の侵略に失敗すれば、悔しいに決まっているか。
……早めに伝えよう。
「ああ……だとしたらすいません。アルラギア帝国の侵略失敗の原因は俺にあるのかもしれないので」
「……何だと?」
「アルラギア帝国の勇者パーティー
「……何故それを知っている? ……まさか」
オリヴェイラ様は、俺の言葉で全てを察したようだ。
それなら、事実を伝えても問題なさそうだな。
「岸田達が、負けたのは俺ですよ。ちなみに勇者パーティーだった二人の人間が死んでしまったのは、岸田、
……
世の中には知らないほうが良い事実だってある。
だが、オリヴェイラ様は俺の話に怪訝な顔をする。
「……本国から聞いていた話と違うな。勇者キシダ曰く、タカギ殿はボルチオール王国の勇者に殺され、退却のために殿を頼んだ剣士アガタとテラハラ殿は行方不明という話だったが……剣士アガタは既に死んでいて、テラハラ殿は捕虜となっていたとは……。……もちろん、一番驚きなのはジン殿が勇者キシダ達を破ったボルチオール王国の勇者だったということだが」
「…………」
さっきからずっと、オリヴェイラ様の言葉で、気になっているというか、引っかかっていることがあった。
……いつ俺が、ボルチオール王国の勇者になったんだよ。
さっきの派遣軍のおっさんもそうだったが、アルラギア帝国の連中は一体何を勘違いしているんだ?
確かに、まるでボルチオール王国の勇者と捉えられてしまうかもしれない言動はしていたが。
訂正しておくか。
「あの……俺はボルチオール王国の勇者ではありません。ボルチオール王国には別にワタナベ・ケントという勇者がいます。あ、ワタナベが名字で名前がケントです」
「……なっ!? 何いいいいぃ!?」
オリヴェイラ様は信じられないといった様子でめちゃくちゃ驚いている。
……あれ? もしかして、ボルチオール王国がアルラギア帝国の次のターゲットになったのって、セトロベイーナ王国侵略をボルチオール王国の勇者に邪魔された! と思ったから報復だ! って理由だったりする?
「
「え!? ちょっ、何それ!? お姉ちゃん、仁と二人でデートしてたの!?」
「……麗蒼さん。今はそんな話をしている場合では無さそうだわ」
麗翠が俺とカムデンメリーへ二人で買い物に行った時のことをオリヴェイラ様へ説明し、現地の人間の対応からして、自分も俺がボルチオール王国の勇者ではないという考えを話す。
麗蒼は何故か、そもそも麗翠と二人でデート紛いの買い物になんか行ってんだ? という反応を何故かしているが……お前もオリヴェイラ様の様子からして、そんなことを喋っている暇じゃないのを察してくれよ……。
「ちょっと待て……我々は重大な勘違いをしていたのか……? 勇者キシダのボルチオール王国の勇者にやられたという報告を鵜呑みにして、勇者パーティーとアルラギア帝国軍のほとんどの勢力をボルチオール王国侵略に注ぎ込んでいるんだぞ……」
オリヴェイラ様は、俺と麗翠の話を聞いて頭を抱えていた。
俺からすれば敵や敵になるかもしれない連中が潰し合ってくれるからラッキーだが。
しかも、この様子だと
……だ、黙っとこ……。
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