第72話 その頃、帝国の勇者パーティー(クズ達)は
メリサとサンドラが国王に親書を渡していた頃、アルラギア帝国では、勇者パーティーである
◇
「勇者キシダ、もう一度聞くぞ? 失敗したのか? セトロベイーナ王国侵略に?」
「……申し訳ございません」
「この無能がぁ! 安請け合いしおって! アルラギアがセトロベイーナなどという凡国に手を焼いているなど他国に知られてみろ! アルラギア王家末代までの恥だ!」
「すいませんでしたぁ……」
「反省してます……」
はあ……やっぱりこうなったか。
三人とも帝王に土下座してはいるが、心の中では全員、早くこの説教が終わらねえかなと当然思っている。
オレ様達は、セトロベイーナ王国侵略失敗の報告……そして弁明に来ている訳だが、やっぱり怒鳴られたよ。
……ったく、こっちの世界にはパワハラという概念が無いのか?
異世界なんだからある訳ねえか。
「ウヌ等の好き勝手な行動に目を瞑っていたのは、ウヌ等が必ず結果を残す勇者パーティーだったからだ! それがなんだ! セトロベイーナ程度の国も侵略出来んとは! しかも通常のセトロベイーナではない! フィスフェレムに無様に負け、もはや虫の息となったセトロベイーナを侵略し損なったのだウヌ等は! これを無能と言わずして何と言う!?」
「…………」
オレ様達が無能……ね。
じゃあ、その無能に頼ってるアルラギア帝国は無能以下の集まりだってことだな。
……だが、いくら事実とはいえ、相手を一番怒らせる言葉を口に出すほどオレ様はバカじゃねえ。
「……帝王様、お怒りになるのは分かりますが、落ち着いて下さい。我々のサポートメンバーだったタカギが殺され、更に退却のために殿を頼んだ剣士アガタ、タカギと同じサポートメンバーのテラハラが未だにセトロベイーナ王国から帰って来ていません。……これがどういうことを意味するか、帝王様ならお分かりになるはずです」
「……何だと?」
怒鳴り散らしていた帝王が、
アルラギア帝国の帝王、カイケル・アルラギアは、プライドが高くてとても沸点の低い男だが、決してバカではない。
女神の加護を持っていたはずの高木が殺され、
それで、全てを把握したのだ。
「テラハラはともかく、まさか剣士アガタも殺されたというのか……? 裏切り者……回復術士のスズキからの情報だと、勇者は瀕死状態、更に残り二人も魔王軍の手に堕ちたため、セトロベイーナ勇者パーティーは壊滅状態にあるとの話だったのではないか?」
「その情報が間違いだったんですよ。セトロベイーナ王国は西側の隣国、ボルチオール王国から
最後のだけは……嘘だ。
リカとアヤノの攻撃が跳ね返されるなんて思っていなかった。
オレ様はリカとアヤノを守るためにタカギを盾にした。
後悔はしてねえ。
オレ様にとっては、タカギよりもリカとアヤノの方が大事だ。
そしてこれからオレ様やアルラギア帝国の役に立つのも、タカギよりリカとアヤノなんだ。
「ふむ……なるほど。……しかし、ボルチオールが一枚噛んでいたとはな。しかも、キシダと同じ勇者が……。小癪な……ボルチオールめ……」
「……いかがいたしましょうか?」
「……予定変更だ。セトロベイーナは後回しでよい。今度は、万全の準備をしてボルチオールを侵略する。ウヌ等だけではない、アルラギア帝国軍も投入する」
「かしこまりました、帝王様の仰せのままに」
……はあ、何とか乗り切れたか。
リカとアヤノは、帝王の前ではビビって全く役に立たないからな。
いっつもべらべらと無駄にくっちゃべっているのに、この時は何にも喋らない。
オレ様がどれだけ苦労してるか分かって欲しい。
「……しかし、それはそれだ。ウヌ等の失敗には相応の罰がいる」
「…………」
……乗り切れて無かったか。
帝王が失敗を許してくれるとは思っていなかったけどよ。
しかし、予想外の言葉を聞かされた。
「罰はウヌ等には与えん。間違った情報を与えた、スズキに罰を与えるとしよう。さて、今までの話の中で帝王の決定に文句があるという者は挙手をしろ」
「…………」
帝王の意見に逆らえる人間など、このアルラギア帝国にはいない。
帝王が白を黒と言えば黒。
それがアルラギア帝国なのだから。
「安心しろ。あの女にはまだ利用価値がある。殺しはせん。だが、同じような失敗は許されんぞ。アルラギアに敗北の二文字はない。しっかり作戦を練って、必ずボルチオールを侵略しろ」
「肝に命じておきます」
「よし、では……スズキのところにでも行くとしよう。少々キツイ罰を……与えんとな」
……どんまい、
テメーが適当な情報を教えたせいで、オレ様達はケントなんかに負けたんだ。
ちゃんと準備していれば負けるはずねえ。
ケント……ボルチオール王国……必ず潰す。
……自分達が負けた相手が、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます