第弐章
第1話 勘十郎、褒美をもらう
ある朗らかな昼間。遠く鷹の鳴き声がする。
ここは
急に当主様からお声がかかったので参上したのだが、実に不安であった。
勘十郎の家格的には、直接お目見えできるものではないのだ。
今回は例外で、勘十郎と篝と直接話したいと直々の指名であった。
「おじゃ。よくきたでおじゃ。案内するでおじゃる。」
先に来て案内役を買って出たマロのあとをついて歩く。
実際はそうでもないはずの廊下がものすごく長く感じた。
なにか勘十郎に落ち度があったのだろうか?家老を斬ったのは上杉だったし、もう勘十郎は無罪のはずだ。
「ここで待つでおじゃ」
通されたのは屋敷内の茶室であった。
二人はおびえながら入って待つ。
すると、ひとりの美しい立派な少年がマロとともに入ってきた。
名を
平服する二人にマロが顔を上げるように伝える。
「今回は大手柄だったね、勘十郎さん。家老の武田家の断絶を防いでくれてありがとう。家のじいやたちが敵討ちじゃとマロたちを派遣したときはどうしようと思ったよ。僕にはまだ力がないから、いいなりなんだ。ご迷惑をかけたと思う。誠にすまなかった」
少年は10歳くらいと聞いていたが、涼やかな声と誠心誠意な心が伝わってきた。
「勿体ないお言葉でございます。」
再度平服して礼を述べる勘十郎。
「また、篝についても迷惑をかけた。私に輿入れさせようとした家老ならびにじいやたちを許してやってほしい。」
「はい。滅相もございません。」
篝も平服する。
「頭をお互い下げあっても疲れるだけでおじゃる。茶を煎じるでおじゃ。飲んで落ち着くでおじゃ。」
こぽぽ。。。マロが茶をたて始める
「今回呼んだのは、二人に褒美を与えようと思っていたんだ。家老のことは残念だったけど、今はもうマロも元気だし、助けてくれてありがとう。私にとっても素晴らしい相談役であったから失いたくなかった。」
「望外のお言葉でおじゃ。
「というわけで二人への褒美なんだけどね。江戸で人気のリゾートホテルがあるから、そこで身体をゆっくり休めてきてほしいんだ。前回の江戸滞在は逃げるためだったろうから、苦しい思いをさせたお詫びだよ。いっぱい楽しんでくるといいよ。」
「ははっ。謹んでお受け取りいたします。この身、まだまだご当主さまのためにお使いください。」
「うん、まあ、そういうことだから、すぐに発ってほしい。」
「承知いたしました。」
マロの立てた茶は、苦みもまろやかでコクのあるとても美味しいお茶であった。
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「ほう。よかったのう。わしも一緒について行っていいかな?」
「え?なにか用事があるのですか?」
「用事がなきゃ行っちゃいかんのかい。ほら、儂の思い残したことも江戸にある気がしてな。」
「本当ですかぁ?」
怪しむ勘十郎。ただ遊びに行きたいだけなんじゃないかと思う。
しかし、思い残したことがホントに江戸にあったなら、行かなくてはいけない。しぶしぶ同行を承諾した。
二人と幽霊一人はまたしても江戸に向かうことになった。
つづく
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